Mobile:NEWS 2002年12月25日 09:25 PM 更新

世界標準“GSM”とはいったい何か?(2/2)


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GSM方式のキーポイント「SIMカード」とは

 GSM方式では、「SIMカード」を使った携帯電話端末と事業者の分離が特徴として挙げられる。日本では、携帯電話端末そのものに加入権情報(電話番号)を登録し、サービスを利用している。この場合、機種変更となれば、端末から端末へ、電話番号の書き換え作業が必要となる。

 GSM方式では、加入権情報(電話番号)は「SIMカード」と呼ばれるICカードに書き込まれ、ユーザーに渡される。ユーザーは好みの携帯電話を購入し、このICカードを挿入することで、はじめて携帯電話サービスを利用できるようになる。違う端末を利用したければ、SIMカードを自分で差し替えるだけで、同じ電話番号のまま別の端末を利用できる。あるいは、別の通信事業者のSIMカードを持っていれば、1台の端末で複数の通信事業者を使い分けることも可能である。

 NTTドコモが昨年からサービスを開始している、3Gサービス「FOMA」や、12月20日からスタートしたJ-フォンの3Gサービス「Vodafone Global Standard」では、GSMで採用されている「SIM」の上位互換ICカードである「USIM」(用語)の使用が義務付けられているため、ようやく日本でもSIMカードの概念が導入されたことになる。


Nokia端末とSIMカード。電池を外したところに差し込んで使う


ドコモのFOMAカード(USIM)。利用方法は同じ。SIMカード同様、内部に電話帳データを入れることもできる

 これによって、ユーザーは自由に携帯電話端末を使い分けることが可能になる。また将来的に「USIM」にクレジット機能などが加われば携帯電話が電子マネー代わりになったり、個人情報などを記録してID代わりに活用する、といった携帯電話を核とした、さまざまなビジネスに応用、展開が可能となる。

 SIMカードの元となったサービスは、1980年代後半よりドイツにてスタートした、ドイツ郵電省のサービスである「C-netz」(ちなみにGSMはD-netzと呼ぶ)に遡る。C-netzは磁気カードによる加入権を発行し、当時の自動車電話やショルダーホンなどのサービスを、1枚のカードで利用できた。さらに公衆電話でも使えるという特徴もあった。加入権と端末を分離したことにより、電話サービスの民営化への起爆剤ともなった。

 さらに、この磁気カードをICカード化するアイデアは、フランスから生まれてきた。フランスはICカード分野におけるイノベーターであり、ほとんどのICカードに関する特許はフランスにて取得されている。GSM端末用のSIMカードは、スマートカードと呼ばれるISO781x規格のICカードをベースに、GSM用およびテレコム用のディレクトリを設けて作成されている。

 また、「SIMカードはメモリカード」という認識も多いが、実際にはOS内蔵のCPUカードである。初期のSIMカードでは4ビット程度のCPUであったが、現行のGSM向けのものは、8ビットや16ビットマイコンが搭載されており、さらに3G向けのUSIMでは32ビットマイコンが主流になってきた。内蔵メモリは、現在は64Kバイトまで拡張されている。

SIMロックとは?

 携帯電話を販売する場合、日本では回線契約と携帯電話端末がセットとなっているため、通信事業者主導のいわゆるインセンティブ販売(ユーザーの利用を見越して販売報奨金分を最初から値引いた販売、3月18日の記事参照)が主流となっている。それが多機能な新製品でも2万〜3万円程度の低価格で購入することができる理由だ。

 ところが、回線契約と携帯電話端末が分離されたGSM方式では、日本のような通信事業者主導の販売方法を取ることは難しい。実際には、NOKIAなどの端末メーカーが、ショップチェーンを展開し携帯電話端末の販売から保守までを手がける。

 端末を購入したユーザーは、好みの事業者と加入契約を結び、SIMカードを入手する。これを端末に挿入することで携帯電話として機能する。SIMカードには加入契約手続き不要のプリペイドタイプも存在し、ユーザーは端末と通信事業者を自由にセレクトできる。しかし、この販売方法では、携帯電話端末が非常に高価になってしまう(これが本来の価格と理解すればよいのだが)。GSM方式の最新モデルは、日本円でおよそ5万−6万円はする。

 このため、SIMカードの本来の利用方法から逸脱してしまうが、他事業者のSIMカードを挿入しても動作しない「SIMロック」をかけた携帯電話端末と、専用のSIMカードをセットにした販売も行われるようになってきた。

 これならば、ユーザーは市価の半額以下、場合によっては無料に近い端末価格で携帯電話サービスを利用することが可能である。ただし、他事業者のSIMカードを挿入しても、SIMロックのかかった端末では利用することができない。逆にSIMカードをほかのSIMロックのかかっていない端末に差し替えて利用することは可能だ。

 ちなみに、日本でサービスされているNTTドコモの「FOMA」や、J-フォンの「Vodafone Global Standard」は、共にSIMロックがかけられている。低価格で端末を購入できるのは大変ありがたいのだが、ユーザーには、自由に端末と加入事業者を選ぶ権利がある。

 日本でスタートした3Gサービスは、事業者の独自サービス機能を付加する必要があることから、ロックをかけないオープンな形でのサービス展開が難しいといえるが、1ユーザーとしては自由に端末と通信事業者を選択できるサービスを望みたいところである。



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[木暮祐一, ITmedia]

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