Mobile:NEWS 2003年4月17日 09:45 PM 更新

話題のモバイルビジネスのその後
携帯電話でロマンスカーチケット購入

携帯電話で特急ロマンスカーチケットの予約・購入サービスを行っている小田急電鉄。ユーザーにとっての利便性や顧客の拡大は見込めるのか。約2年経つ今、次に小田急電鉄が狙うサービスは何かを探ってみた

 携帯電話で乗車券を購入できるサービスを約2年前から始めた小田急電鉄。携帯電話で乗車券を購入できる利便性はどこにあるのか、このサービスを土台として小田急電鉄が次に狙うサービスは何か──。旅客サービス部の内田克美氏に聞いた


小田急電鉄 旅客サービス部の内田克美氏

「駅に行かなければ購入できない」を改善

 小田急電鉄は、「携帯電話を乗車券代りにしていく」などのさまざまな新サービスを検討し始めている。約2年前に携帯電話を使って、特急乗車券をチケットレスで予約・購入できるサービスを立ち上げたのが小田急電鉄だ。      新宿と箱根湯本、片瀬江ノ島間を結ぶ特急列車「ロマンスカー」は全席指定のため、乗車するには発車60分前に電話や駅窓口で予約しなければならない。チケット購入は発車30分前までに購入する必要があるなど、乗客から入手の手間や時間の考慮などの改善を求める声が挙がっていた。

 そこで小田急電鉄では、ロマンスカーに乗車するユーザーが、携帯電話のインターネット機能を使って特急チケットを購入できる仕組みを導入。携帯電話に送信された座席情報をそのまま特急券として利用でき、乗車の利用額に合わせたポイントも還元される「ロマンスカー@club」を2001年7月に開始した。

 「ロマンスカー@club」を利用するには、まず入会金・年会費無料の会員登録を行う。その際、事前に積み立てた金額から引き落としになるプリペイド方式を導入し、キャッシュレスでの特急券購入を可能にした。積み立て額は10円単位で、積立限度額は2万円。会員登録時には「ロマンスカー@club」にアクセスするのに必要な会員番号と暗証番号が付与され、会員証(カード)が発行される。会員は乗車の利用額に応じて、3%のポインが還元される。

「ロマンスカー@club」、新規会員は月間約900人

 購入までの流れは次の通りだ。(1)会員番号と暗証番号を入力してログイン (2)トップページで新規予約/購入を選択 (3)希望区間、日時、人数を入力すると、3列車の空席情報が禁煙席・喫煙席別に表示 (4)列車決定後、窓側席の希望の有無を入力して予約/購入を選択 (5)選択した画面内容を保存──。これで購入は完了だ。


「ロマンスカー@club」の予約・購入手続きの流れ

 システム面では、従来の駅窓口や券売機での特急券販売は既存のホストコンピューターと座席予約端末機、特急券発売機とをオンライン接続している。ここにロマンスカー@clubの会員情報や積み立てポイントなどを管理するデータベースサーバらを連携させ、各キャリアのブラウザフォンとの接続窓口になるフロントシステムは、東芝のコンテンツ変換用システムをASPとして利用している。

 「公的サービスを提供する上で携帯電話の機種が多く、新旧のブラウザフォンに同等のサービスを提供するのは想像以上に大変でした。でも、サービス開始から約2年。お客様の声を反映して、サービスの拡大をしてきた甲斐があり、着実に会員は増えています」と、旅客サービス部の内田克美氏は話す。

 「ロマンスカー@club」は2001年7月、まずiモード端末のサービスを開始。順次au、J-フォンへと対抗機種を拡大させ、2003年3月末現在の会員数は約3万5000人を数える。

 会員の大半は30−40代のビジネスマンで、ホームウエイ号は、約30%が利用している。携帯電話からのロマンスカーチケット予約や購入は、乗客全体の4分に1に達している。

 新規会員は月間約900人ペースで推移。会社員の新規登録はいうまでもないが、会員登録した家族なども一緒に登録しているのが安定した会員獲得の要因になっている。解約率は月間約10名と1割に止まっており、解約理由も転勤などやむを得ない理由によるものが多い。

4月からはモバイル決済も。小田急グループ内でポイントの共有化も

   サービス開始から約2年。会員は着実に増えているが、気になるのがロマンスカー@clubを利用するのに、積み立て金を駅窓口まで入金しなければならない手間だ。

 サービス立ち上げ時から「携帯電話での決済を考えていた」(内田氏)が、カードの手数料が高いため、会員動向を見てから導入を検討することにしたという。現在、会員の月額平均積み立て額は5000円。会員の利用状況も安定していることから、2003年の4月からクレジットカードによるモバイル決済を導入することが決まった。会員は駅窓口へ出向く手間が省け、携帯電話だけで、自分が乗りたいロマンスカーチケットを予約・購入ができるようになる。

 しかし帰宅時のロマンスカー乗車率は携帯電話でのロマンスカーチケットサービス開始以前から100%に達しており、このサービスが売上拡大には直接つながらない面もある。小田急電鉄では、ユーザーの利便性が向上することで「ITサービスの先鞭をつける企業」という企業イメージにつなげたい考えだ。

 今後は「ロマンスカー@club」を小田急グループの流通業であるデパートやスーパーと連携させるなど、ポイントサービスの共有化も検討している。

 携帯電話を使うことで既存ビジネスの利便性を図ろうとする企業は多い。小田急電鉄は携帯電話の特性を把握した上で、ユーザーのメリットを見極め、その時々に必要とされるサービスにフォーカスしたことが成功につながっている。

 グループシナジーを生かしたポイント共有サービスや「グーパス」を始めとした他の携帯電話サービスとの連携が、今後の小田急電鉄の新事業拡大に結びついてくるのではなかろうか。

著者プロフィール

沢 里映:フジサンケイグループ日本工業新聞にて、ITベンチャー社長取材による企業の様々なITビジネスモデルを連載。他、小学館「DIME」、リクルート「アントレ」他でコンシューマ向けITサービスなどの記事も執筆



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[沢 里映, ITmedia]

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