Mobile:NEWS 2003年6月10日 11:34 PM 更新

QuickTimeが“さまざまな”3GPP標準をサポート

QuickTime 6.3が、3GPP標準の動画をサポートしたことで、FOMA向け動画をPC上で閲覧したり、作成できるようになった。しかし、3GPP標準と一口にいっても、それぞれが完全に互換性があるわけではないようだ。

 アップルコンピュータのQuickTimeが、携帯電話向け動画の標準である3GPP(3rd Generation Partner Project)標準をサポートし、FOMAやJ-SH53向けの動画を作成したり閲覧したりできるようになった(6月4日の記事参照)。

 6月10日に開催された説明会では、アップルコンピュータの原田永幸社長をはじめ、ドコモの夏野剛iモード企画部長などが、新しいQuickTime 6.3への期待を話した(6月10日の記事参照)。「FOMAで採用されているMPEGをQuickTimeがサポートすることで、いよいよ動画も携帯電話とやりとりできるようになった。これは大きなビジネスチャンス」(原田社長)。

 しかし、一概に“3GPP標準”といっても、これは1つのフォーマットを指すわけではないようだ。携帯電話上の動画の取り扱いを巡って、ユーザーは互換性に苦しんできたが、その悩みはまだ完全に解決されたとは言えない。


右手に「Nokia 3650」、左手に「FOMA P2102V」を持ったFrank Casanova氏

複数のコーデックを許容。各社の拡張ありの3GPP標準

 QuickTime 6.3を3GPP標準に対応させるに当たっては、「3GPP標準を広範囲で提供したかった」と米AppleのQuickTime Product Marketing Frank Casanova Directorは話す。

 3GPP標準とは簡単にいえば、数あるMPEG-4のフォーマットやコーデックの中から、携帯電話に適したものを限定し、テキスト情報などの記述方式を定めたものだ。ファイルフォーマットは3gp(MP4)、ムービーコーデックとしてはMPEG-4とH.263、オーディオコーデックにはAACとAMRをサポートする。また、3Gテキスト(TX3G)への対応も必要だ。

端末ムービーコーデックオーディオコーデックファイルフォーマットQuickTimeでの再生
ドコモFOMAMPEG-4AMRMP4
ドコモFOMA(旧)MPEG-4AMRASF×
J-フォン「J-SH53」MPEG-4AMRMP4
J-フォンNancyNancyAMRNancy×
KDDIMPEG-4QCELP/MP3MP4×
国内の端末が利用する、主な動画の方式。AMR(用語)は3G携帯電話が音声通話時に利用する音声コーデック。Nancyはオフィスノアが提供する独自のコーデック。MP4はISO標準として定められたファイルフォーマットで、QuickTimeのファイルフォーマットに基づいて作られている。Casanova氏は「3GPPはMPEG-4に基づいて作られている。MPEG-4はQuickTimeに基づいている。フォーマットを無償で提供することで、標準を作る手伝いをしてきた」と、3GPP標準とQuickTimeがそもそも近い関係にあることを強調していた


 そのため、QuickTime 6.3では各コーデックに対応した動画ファイルを作成、閲覧できる。ただし3GPP動画に対応した携帯電話ですべての3GPP動画を再生できるわけではない。「3GPPフォーマットとドコモ(FOMA)のフォーマットに違いがあるのは確か。日本市場に特化したものになっている」(Casanova氏)。

 例えば同じ3GPPフォーマットでも、Nokiaの「3650」はH.263動画を再生できるが(Nokiaのページ)、FOMAがサポートするのは基本的にMPEG-4となる。プログレッシブダウンロードへの対応やリアルタイムストリーミングへの対応なども、キャリアによって異なるとCasanova氏は言う。

 テキスト情報をテロップとして動画ファイルに組み込めるのも3GPP標準の特徴だが、このテキストについても各社の差違が多い。iモード向けでは絵文字に対応できるよう拡張されているとCasanova氏。


QuickTime Proでは、3GPP準拠の動画を作成できるが、ファイルフォーマットについては「Mobile MPEG-4」「3GPP Release 5.1」「3GPP Release 4.3」と3種類選べる

 ともあれ、QuickTime 6.3のリリースによって、携帯で撮影した動画の多くが、PC上で公式に再生できるようになった。

 また有償のQuickTime Proを購入すれば、動画の作成も行える。本格的な動画編集ソフトも「QuickTimeベースの各種ツールは、そのままMPEG-4と3GPPに自動的に対応」(Casanova氏)する。

 現在のところ、FOMAは動画を添付したメールを受け付けないため、WebサイトにアップロードしてFOMAのWebブラウザ経由でダウンロードするか、SDカードなどの外部メモリに入れて渡す必要がある。

キャリア技術情報
ドコモ2101V/2002向けiモーション
ドコモ2051/2102V向けiモーション
KDDIezmovie技術情報
J-フォンは個人が動画を作成して公開するための情報を公開していない



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関連リンク
▼ 3GPP
▼ アップルコンピュータのQuickTime 6.3ダウンロードサイト

[斎藤健二, ITmedia]

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