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2003年8月18日 02:55 PM 更新
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Interview
CLIEはどこへ行くのか?(1/3)
PDA市場は期待されたほど成長せず、いまだに試行錯誤を続けているように見える。そんな中で、これまでのPalmOS搭載機とは異なる雰囲気を持つ新型CLIE「PEG-UX50」が投入された。この新型機の話を中心に、CLIEの今後の方向性について、ソニーハンドヘルドコンピュータカンパニープレジデントの吉田雅信氏に話を伺った。
一時期はPDA市場を席巻したPalm OS搭載機。しかしふと気付いて見れば、日本アイ・ビー・エム(IBM)、Handspring、Palmの3社がともに日本市場から撤退。現在、日本語版のPalm OS搭載機を販売しているのはソニーだけとなった。
Palm OS搭載機以外を見ても、各社製PocketPCは企業向けソリューションと組み合わせたシステムの一部として販売されることが多く、シャープの「ザウルス」シリーズも大胆な進化・派生を繰り返しながらも、市場全体を盛り上げるには至っていない。
現在、“PDA”という製品形態そのものに、「本当に大きな市場へと成長するのか?」と疑問の目が向けられていることは否定できない。そんな中で投入された、無線LAN+Bluetooth内蔵、横型ディスプレイ、キーボード付きという、これまでのPalmOS搭載機とは異なる雰囲気を持つ新型CLIE「PEG-UX50」の話を中心に、ソニーハンドヘルドコンピュータカンパニープレジデントの吉田雅信氏に話を伺った。(聞き手・構成、本田雅一)
新CLIEはビジネス指向?
CLIEはエンターテイメント指向の強いPDAとして生まれましたが、本来、PDAが得意とする個人情報の管理機能はビジネスの要素が強かった。そこにソニーの血が入り込むことで、独特の市場を築いてきたという側面がありました。
しかし、PDA市場は、ひいき目に見ても成長していません。UX50はそうした閉塞感を打破するためのものなのでしょうか? また、製品の“味”が、ビジネスの方向に強く振られているようにも見えますが……。
「本来のPDA市場は、現在の市場規模から比べると一桁多いぐらいの潜在需要があると思います。ただ、さまざまな面でPDAは、まだ成熟した、誰にでも魅力的な製品になりきれていない部分があります」(吉田雅信氏、以下同)
では、新製品のUX50は、従来のCLIE路線を踏襲するのではなく、ユーザーの幅を広げていくものと考えればいいのでしょうか?
「これまでCLIEでは、エンターテイメント、すなわち娯楽をテーマに、いろいろなチャレンジをしてきました。他社がすでに掘り起こしているユーザー層を取り合うのではなく、潜在的な顧客に対してアピールしようとしたわけです。UX50に関しては、よりビジネス指向の強いユーザーにも満足してもらえると思います」
これまでにもキーボード付きというCLIEはありましたが、UX50はノートPCライクというか、コンバーチブルタイプのタブレットPCにも似ています。
「今、ビジネスマンのほとんどは仕事でパソコンを活用しています。そうした“パソコンに慣れた人たち”に使ってほしい製品にしました。外出先にもノートPCを持って行く人たちの一部は、今回のCLIEの方が良いと思うでしょう。さまざまなな使い方を提案する中の一つの提案になります」
もっともUX50と似た筐体デザインは、シャープがすでに採用しています。PDAの市場は、世界的に見ても十分に大きくなれずにいる感が強いですが、中でも日本市場は特に閉塞感が強い。なぜ日本にPDAが根付かないのでしょう?
「日本人は本来、テクノロジーガジェットが大好きですよね。これまでも、さまざまなエレクトロニクス製品が、日本市場をきっかけに立ち上がってきました。しかし、なぜかPDAは日本で花開かない。それはなぜなのかが、CLIEのバリエーションを作っていく上でのポイントです」
日本では携帯電話が情報端末としての役目を負っているように見えます。現時点で、携帯電話の多くは個人情報管理などの機能が豊富ではなく、PDAとしての使い勝手は限られています。携帯電話では情報端末として不足だと考えている人もいるでしょうが、そこからPDAにつながる道筋が明確ではありません。
「日本において、最もプライオリティが高い情報機器は携帯電話でしょう。しかし、すべての人がi-mode端末をはじめとする携帯電話で満足しているのか、と言うと、そんなことはないと思います。音楽や映像を出先で楽しんだり、ネットワークを通じたより密なコミュニケーションを行えるアプリケーションを搭載し、ソフトウェアによる拡張性も高い。PDAでなければできないことはたくさんあります」
UX50ではBluetoothと無線LANを内蔵する、どちらかと言えばパソコンに近い通信デバイスの構成を取りました。これには、どのような意図があるのでしょうか。
[本田雅一, ITmedia]
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