Mobile:NEWS 2003年9月11日 03:02 PM 更新

君は本物の君?体を張った自動認識

東京ビッグサイトで10日から始まった「自動認識総合展」は猫も杓子も「RF-ID」状態だったが、その中で数は少ないもののバイオメトリクスのブースを集めた「BIOMETRICS EXPO」と名づけられた一画が用意されていた。

 近未来映画では普及しまくっている生体認証技術であるが、現実の社会では「認識が甘くてセキュリティが弱い」「認識が厳しすぎて本人も弾かれる」と両極の評価が多く、普及する段階にはまだまだ至っていない。

 しかし、先の技術と思われがちの生体認証技術。新しい認識方法は次々と登場するが、指紋や顔認識といった従来から研究されている手法では、識別そのものの精度や、認識速度といった基本的な技術に関して、ある程度完成の域に達しているらしい。

 ここでは、BIOMETRICS EXPOや企業ブースで展示されていた生体認証から「眼」「顔」「指紋」を使った製品を取り上げてみよう。

「眼」を使った生体認識

 「網膜パターン」を使った認識技術は、映画でもよく登場する技術だが、生体認識の世界ではすでに過去のものになりつつある。

 その最大の原因は、網膜パターンが「経年変化に対応できない」こと。網膜の毛細血管パターンを利用するわけだが、この毛細血管が疾病の影響を受けやすく、また老化による毛細血管の劣化が発生しやすいという弱点がある。

 網膜パターンを利用したシステムの設備が高価であることもあって、最近は眼球の「虹彩」文様を識別に利用する方法が主流になりつつあるそうだ。虹彩は疾病や老化などの経年変化の影響を受けにくい利点がある。

 生体認識で問題になるのが、写真や画像データを使った「なりすまし」であるが、今回展示されていたシステムでは、認識時に虹彩のパターンだけでなく「生体反応」も取り入れている。虹彩は眼が受ける光量が変化すると「キュッ」と反応するが、その生体反応を認識時に利用しているので、動画を使ったなりすましも防げるらしい。

 問題の価格は1ゲート分で200万円台と、まだまだ高価であるが、展示していたシーベルの担当者によると「普及が進んで導入数が増えてくれば、劇的に価格は下がってくるだろう」とのこと。


展示されていたIris Access 3000.非接触型の虹彩認証は衛生面からもユーザーに喜ばれるという

「顔」を使った生体認証

 パターン認識の処理が重く、なかなか実用化が進まなかった「顔」認識も、ハードウェアのコストパフォーマンスが劇的に向上した今では、十分実用できるレベルに達している。

 現在の顔認証が抱える問題点は、経年変化や認証時における顔の角度の変化にいかにして対応するか。今回、顔認証方式製品を展示していたオムロンと東芝は、それぞれ異なるアプローチでこの問題を解決している。

 オムロンの方式は、目鼻や眉といった「顔のパーツ」の相対位置を認証に使うもの。顔のパーツを特徴点として抽出し、特徴点の相対的な位置関係を「特徴量」として定量化することで、顔のパターンをデータベースに蓄積していく。経年変化や顔の角度変化には、蓄積した特徴量にたいして傾き補正などを行うことで対応する。

 東芝の方式は、入力された画像から「顔の領域」を抽出するために、両目や鼻、口の位置を使うものの、顔の認識はキャプチャーされた顔の画像パターンと、登録されている顔の画像を照らし合わせることで行っている。

 この方式では「照らし合わせた画像の一致した程度」によって認証時に採点が行われるが、この点数が合格点ぎりぎりに下がったときに、そのときキャプチャーされた画像を認証用データベースに登録する「学習機能」がサポートされている。経年変化や「太った」「痩せた」という変化は、この学習機能で対応するようになっている。


オムロンの顔認証システム「FaceReco SEARCH」では、カメラに映し出されている複数の顔を同時に認識して認証を行う。デモではXeon/3GHzのデュアルマシンで動作していた。顔認証ではカメラの解像度も問題になるが、オムロンでは「両耳の間が最低で80ピクセル、100ピクセルあれば問題ない」としている


東芝はすでに製品化しているゲート用顔認証システム「FacePass」をPC認証用として10月からパッケージ販売を行う。登録可能ユーザー数が5名で価格は7000円程度になる予定

「指紋」を使った生体認証

 最も普及している生体認証といえば指紋。技術的にはFRR(本人否定率)が0.1%以下、FAR(他人受入率)が0.001%と精度の面ではほぼ完成されている。

 精度の問題を乗り越えた指紋認証の開発現場で、現在取り組んでいるのが「より軽いシステム」。携帯電話やPDAなどのパフォーマンスが限られているハードウェアでも、処理時間が短く精度が高い製品の需要が高まっている。

 認証システムを軽くするため、これまで1〜100Kバイト程度であった指紋データを、抽出する指紋の特徴点と認識アルゴリズムを工夫して64バイトという世界最小容量にしたBeyondLSIのシステムや、指紋認識の方式に従来の「マニューシャ」方式(指紋文様のパターンを特徴点という座標データで定量化する)でなく、周波数方式(指紋をラインスキャニングし、凹凸の出現パターンを波に置き換えて指紋のパターンを認識する)を採用して認証処理を軽くしたDDSのシステムなどが展示されていた。


DDSでは、指紋認証で採用した周波数方式を「顔認証」でも取り入れている。こちらは顔の「陰影」を使って波を抽出する仕組み。処理負荷の低い方法を使うことで、パフォーマンスが制限されている携帯電話やPDAでも顔認証を使えるようになるのが特徴。「パワーと認証制度のトレードオフが難しくて」製品に時間がかかっていたが、まもなく出荷される予定だ

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関連リンク
▼ 自動認識総合展

[長浜和也, ITmedia]

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