全面開放で不法勧誘も~韓国の番号ポータビリティ:韓国携帯事情(2/2 ページ)
日本に先駆けること2年、番号ポータビリティの実施に踏み切った韓国では、3キャリアの競争が激化。商標を巡る訴訟や違法販売による営業停止命令にまで発展した。
3キャリアはいずれも母体が大企業であることから、人脈を利用した販売に親企業の社員まで動員したという。さらに韓国では違法とされている、端末機に対する補助金ま(日本でいうインセンティブ。販売コミッション)を支給し、端末を無料もしくは10万ウォン(1万円)以下という破格値で販売もした。見かねた韓国政府は、昨年6月、各キャリアへ対し20~40日間にわたる営業停止命令を出している。
こうした激しい攻防の結果、3社とも2004年の売り上げが増加したのに対し、営業利益率はいずれも20%以上ダウン。キム・シンベSKテレコム社長も「2004年は番号移動の時差制などのため難しい1年だった。顧客誘致と新規加入者の確保のため、マーケティング費用が増加し、収益性が悪化したのは事実だ」(デジタルタイムス)と、苦しいコメントを出すほどだった。
2005年、番号ポータビリティが全面開放された結果は?
年が明けて2005年。番号ポータビリティの本格的な始動と共に激しい競争が続く中、早々から政府が介入せざるを得ない一幕が生じた。
昨年11月末、MP3フォンなどの人気で念願の会員数600万人を突破したLGTは、番号ポータビリティによる加入者の流出を恐れ、SKTが不法な補助金を支給していることを告発する広告を新聞に掲載するという手段に出たのだ。
ところが当のLGTも補助金を出し、無料または格安で端末を提供していたため、政府情報通信部の通信委員会はLGTに対し、補助金支給の中断を要求。それにも関わらず同社は補助金の支給をやめなかったため、同社にとっては最大となる40億ウォン(約4億円)の課徴金を課すことを決定した。
今回の制裁によって同委員会は、今後違法行為をした事業者には、即刻かつ集中的に制裁を加えることで、市場の安定化を図る方針を明らかにし、各キャリアに緊張感を与えた。
20日時点での調査では、SKTとKTFの加入者はそれぞれ1995人、1848人純増した反面、LGTは3843人純減。1日から現在まで増えたり減ったりの状態だ。同時にSKT約51%、KTF約32%、LGT約16%という昨年後半からの市場占有率にも劇的な変化は出てきていない。
それでも日々変わる会員数を目の前に今後も激しい競争が予想され、2年目に入った韓国番号ポータビリティは消耗戦の様相を呈してきている。大々的な広告合戦をしながら状況に大きな変化がないというのは、2001年実施の「マイライン」を想起させるが、市場占有率を16%まで上げた昨年のLGTの健闘のように、根気強いマーケティングでユーザーの意識も少しずつ変ってくるかもしれない。今後の韓国、そして番号ポータビリティ導入を2006年に控える日本の状況を見守りたい。
佐々木朋美
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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