営業の主力は「おとくライン」に回す~ソフトバンク
おとくラインには現在、開通ベースで12万のユーザーがいることが明かされた。今後は同事業にソフトバンクの営業力を集中させる。
ソフトバンクは2月9日、2004年度第3四半期の決算説明会を開催した。赤字を生み出し続けていたADSL事業にも黒字化のめどがたち、今後は新規事業である回線直収型の固定電話サービス「おとくライン」に注力する。
今四半期の当期損益は265億円の赤字だが、日本テレコムの買収などもあり、売上高は2560億円と前年同期の1366億円から大きく伸びた。孫正義社長は「年間1兆円規模を達成した」と話す。
営業損益ベースでは、75億円の赤字。ただし、おとくラインの先行投資分をのぞけば99億円の黒字だと孫氏は話す。
長年にわたり大幅な赤字を生み出してきた「Yahoo!BB」のADSL事業も、ようやく黒字化のめどが立つところまできた。今四半期、同社のBB事業(ADSL事業)はEBITDA(減価償却前営業利益)ベースで黒字化している。「営業損益でも黒字化は間近」(孫氏)
昨年から進出した法人向け事業も、雑誌の満足度調査ではトップをとったと孫氏。「意外だった。やっている私が意外などと言ってはいけないが……」(笑)。心配もしていたが、順調な滑り出しだという。
次なる「赤字の原因」はおとくライン
経営が安定してきたかに見えるソフトバンクだが、孫氏は守りに入ろうとしない。おとくラインという新規事業に踏み出しており、今度はこれがソフトバンクの黒字化に「待った」をかける要因になる。ソフトバンクは今後、おとくラインの契約者増にリソースを集中させる計画で、既に主力の営業部隊を同事業へシフトしているという。
会場では、おとくラインの受注回線数が2月7日の時点で86万であることも明かされた。実際に開通したのは12万回線。個人と法人の割合は、およそ6:4だという。
しかし、86万を受注したといってもこれらがすべて開通するわけではない。理由は、NTTのせいだと孫氏は不満げに話す。
「回線には、契約名義人がある。これはおじいさんの代に契約されたものだったりして、それがそのままNTTのコンピュータに登録されている。ここで、NTTからおとくラインに乗り替えようと思った場合、この契約名義人を“当てないと”開通しない」
もともとの名義人が誰なのか、ユーザーが忘れている場合がしばしばあり、ソフトバンクとしても困っていると孫氏。法人なら株式会社表記が「前株」か「後株」か、ハイフンがあるかないか、そうしたささいな点もきちんと合致させる必要がある。「潜水艦ゲームをやっているようだ」(同氏)
こうしたやりとりをしている間に、嫌気がさしてしまうユーザーも多い。孫氏は「(受注のうち)約半分がこぼれ落ちていく」と苦々しげに話す。
おとくラインの回線に、Yahoo!BBのADSLを重畳できないという問題もある。技術の問題ではなく、主にNTT東西との事業者間手続きの問題だが、「これは解決が目前だと聞いている」と孫氏。来月か、さ来月かは分からないが、遠くない将来重畳できるようになるとした。
新ターゲット「2005年9月までに650万」
孫氏はADSL事業が黒字転換すれば、おとくラインの赤字をカバーできると見ている。「2005年4月から始まる年度は、通期で黒字化できる」
ソフトバンクは2004年2月に「2005年9月までにYahoo!BBで600万回線を達成する」ことを目標に掲げた(2004年2月13日の記事参照)。しかし、おとくラインに焦点を合わせた今、この目標は実現できないと孫氏。代わりに、「2005年9月までにYahoo!BB+おとくラインで650万回線」を新ターゲットとして据えると話した。
関連記事
- 「ADSLビジネスモデルは確立」 ソフトバンク、赤字大幅圧縮
最終赤字は713億円縮小。9月単月では営業黒字を達成した。「おとくライン」や「Yahoo!BB 光」でもADSL型のユーザー獲得戦略を採り、売り上げを拡大する目論見だ。 - ソフトバンク、当期損失1070億円~情報漏洩の影響も
ソフトバンクは5月10日、2004年3月期の決算を発表した。売上高が5173億円で、経常損益ベースでは719億円の赤字、当期純損失は1070億円となった。今年2月にYahoo!BB顧客情報流出で世間を騒がせたが、決算にもその影響がうかがえた。 - 次は600万回線 ~“強気の攻め”継続を選んだソフトバンク
ソフトバンクは2月12日、2004年3月期第3四半期の決算説明会を行った。第3四半期の当期損失は163億円だったが、前四半期から見れば赤字幅は大きく縮小した。この結果に、孫正義社長は「大変順調だ」と満足の表情を見せた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.