「着うた」排除勧告で審判開始
「着うた」をめぐるレコード会社の独禁法違反事件で、レコード4社に対する審判が開かれた。公取委は「他業者に楽曲を提供しないという暗黙の認識があった」と指摘し、レコード会社は争う姿勢だ。
携帯電話向け「着うた」サービスで大手レコード会社が独占禁止法違反に問われた事件で、レコード会社4社に対する第1回審判が6月22日、公取委審判廷で開かれた。公取委は「他の配信業者に楽曲を提供しないという暗黙の共通認識があった」と指摘。レコード会社は争う姿勢を示した。
4社は、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージック、ビクターエンタテインメント、エイベックスネットワークス。
公取委の排除勧告によると、4社と東芝EMIは、共同出資会社「レーベルモバイル」に着うた配信を委託し、5社が原盤権を持つ楽曲を他の配信業者に提供しないことで合意し、他業者の配信を制限したとしている。
公取委は、5社の行為が独禁法が禁じた不公正な取引方法(共同の取り引き拒絶)に当たるとして3月に排除勧告した。東芝EMIを除き4社が勧告を拒否したため、審判が開かれた。
「暗黙の共通認識」
審判で公取委が説明した事件の経緯はこうだ。
(1)携帯電話向けに着メロサービスが普及したが、レコード会社は着メロからは利益が得られず、不満を抱いていた。
(2)このためレコード会社はレーベルモバイルを共同で設立し、サードパーティができないサービスを展開することで利益を守ろうとした。
(3)着うたサービス開始に当たり、レコード会社は「着うたは、原盤権を持つレコード会社の利益を守ることにかなう。価格競争が起こりにくい安定したビジネスであり、参入障壁も築ける」と考えた。
こうしてレコード会社が2002年8月から10月にかけて会合を重ねるうち、他業者に原盤権の利用許諾を行わないという暗黙の共通認識が形成された──と公取委は指摘した。
レコード会社側は事前に答弁書を提出しているが、認否は保留したもようだ。この日はレコード会社側による口頭の反論はなかったが、公取委側が指摘した「暗黙の認識」について、レコード会社側が「それは文書などでの明示はなかったということか」などと問いただす場面もあった。
公取委は、各社単独の取り引き拒絶については「主張・立証はしない」と明言しており、レコード会社側は原盤権に基づく許諾の正当性の主張に加え、公取委による共同性の立証についても争うと見られる。
次回は8月31日。
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