ファミマに「セブン銀行ATM」が導入された理由 進む“ATMガチャ”解消と金融インフラの地殻変動(1/2 ページ)
ファミリーマートが全国の既存ATMをセブン銀行ベースの「ファミマATM」へ順次置き換える展開を開始した。背景にはスマホ決済の現金チャージ需要拡大があり、4年後の転換完了でセブン銀行が設置台数トップになる。単独維持が難しいATMビジネスにおいて、利便性を生かしたプラットフォーム化の動きがさらに加速しそうだ。
6月1日にファミリーマート店舗でのセブン銀行ATMの設置が開始された。本稿執筆の6月2日時点で「ファミリーマート ムスブ田町店」と「ファミリーマート 戸田市役所/S店」の2店舗での設置が行われており、今後4年をかけて全国約1万6000台の既存ATMが統一の「ファミマATM」へと置換されていく(エリアフランチャイズである南九州ファミリーマートと沖縄ファミリーマート管轄の店舗を除く)。
現在、ファミリーマートには全店舗の約7割にイーネットのATMが、約3割にゆうちょ銀行ATMが設置されている。同店舗に複数種類のATMが混在する遠因となったのが、過去の「am/pm」や「サークルKサンクス」といった競合ブランドの買収・統合だった。結果として、同じコンビニチェーンでありながら、ATMで提供されるサービスの内容が異なるという問題があった。
加えて、2019年7月1日にスタートしたQRコード決済「ファミペイ(FamiPay)」では、ATM経由での現金チャージが行えない課題もある。競合サービスであるPayPayがセブン銀行ATMで現金チャージ可能で、かつ同ATMにおける銀行外取引の大部分をPayPayチャージのトランザクションが占めている現状を考えれば、ウイークポイントの1つであったことは間違いない。
2024年6月にファミリーマートの親会社である伊藤忠商事とセブン銀行の間で資本業務提携が発表されるまで、さまざまな観測報道が行われていた。その背景には、ファミリーマート周辺でデジタル化戦略を模索する伊藤忠と、その障害要因としてデジタル金融において主要ピースの1つとなるATMが、外部委託で統一環境にない点を問題視していたことが挙げられる。コンビニATMとして業界トップのセブン銀行を取り込むことで、ATMを通じたデジタル戦略を推進するのが狙いだとされていた。
新生「ファミマATM」の機能は「セブン銀行ATM」と大差なし
新たにファミリーマート店舗に設置されるATMは「ファミマATM」と呼ばれ、外見上の基本デザインや顔認証、マイナンバーカード読み取りといった機能はセブンイレブン店舗などに現在展開されている第4世代のセブン銀行ATMと一緒だ。
セブン銀行ATMでできることはごく一部(※)を除いてそのままファミマATMでも可能で、前述のPayPayチャージの他、ファミリーマート店内では決済に利用できない「nanacoチャージ」までできてしまう。外見上はセブン銀行(セブン&アイ)のロゴがなくなり、ファミリーマートのコーポレートカラーである緑色のカラーリングになっているが、スタート画面のUIが若干ファミマATM仕様にアレンジされている以外は、UI/UXや機能面での差異はないと思っていい。
既存のATMがファミマATMになったことでどのようなメリットがあるのか。1つは前述のように現金チャージ対応の決済サービス拡大で、特にスマートフォン利用と相性のいいコード決済や電子マネーのチャージに対応していることが大きい。
「銀行口座やクレジットカード経由でのチャージも可能なのに、なぜ現金チャージなのか」という意見もあるかと思う。ただ、学生を含む若年層や高齢者、女性層などに聴き取り調査をしていると、手持ちの現金をスマホ決済サービスにチャージして利用する……といった使い方をしている人が意外に多い。先ほどセブン銀行ATMにおけるPayPayチャージ利用の圧倒的な利用件数について触れたが、それが意味するのは、それだけ現金チャージ需要が大きいことに他ならない。
また、セブン銀行を含む一部金融機関では、スマホアプリ経由でのATMからの現金引き出しに対応していたり、顔認証による現金引き出しにも対応していたりする。この場合、銀行取引にスマートフォンさえ不要だ。最終的な置き換え完了は4年後になるが、「ファミリーマートに行けば(セブン銀行ATMと同じ)一定のATMサービスが受けられる」という安心感は大きい。もう「コンビニATMガチャ」などと呼ばれることはないのだ。
ゆうちょ銀行ATMはどのように維持するのか
デメリットとしては、これまでゆうちょ銀行ATMで無料引き出しサービスなどを当てにしていた利用者の場合、セブン銀行ATMでは利用料を徴収される可能性がある点だ。ファミリーマートにおけるゆうちょ銀行ATMは、もともとゼロバンクとバンクタイムが運営していたサークルKサンクスの事業を引き継いでいるケースが多い。
しかし、ゆうちょ銀行はもともとコンビニ向けATMを持っておらず、旧サークルKサンクス店舗への設置にあたり新たに開発されたものだ。郵便局外に設置していたものもフル機能でコンビニ仕様とは異なる。結果として、ファミリーマートでのゆうちょ銀行ATM運用の歴史は浅く(長くて10年前後)、ATMの新規開発投資の回収も含め、どのように契約を切り替えていくかが気になるところだ。
ファミマATMの展開に4年かかる理由の1つは、この旧運営会社からセブン銀行への運営会社切り替えに伴う契約の更新にある。もう1つは、セブン銀行側のATM製造台数と設置にかかわる人員の確保にある。もともとセブン銀行ATM自体が旧機種から現在の第4世代へと切り替えるのに5年近く費やしており、1万6000台のリプレースにかかる期間もそれを鑑みて算出されたものだと考えられる。
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