ファミマに「セブン銀行ATM」が導入された理由 進む“ATMガチャ”解消と金融インフラの地殻変動(2/2 ページ)
ファミリーマートが全国の既存ATMをセブン銀行ベースの「ファミマATM」へ順次置き換える展開を開始した。背景にはスマホ決済の現金チャージ需要拡大があり、4年後の転換完了でセブン銀行が設置台数トップになる。単独維持が難しいATMビジネスにおいて、利便性を生かしたプラットフォーム化の動きがさらに加速しそうだ。
ファミマATMで起きる地殻変動 商業施設はほぼコンビニATMに
今までのところ、ファミマATMと他店舗に設置されるセブン銀行ATMの機能的な差異は(ほぼ)ない。ファミマATMの運営委託はセブン銀行に行われ、今後もしセブン銀行ATMへの機能追加などがあった場合、それら新機能やアップデートは全てOTA(オンラインでのアップデート)を通じてファミマATMへ反映される。
一方で、もともとコンビニATMをデジタル金融サービスのツールとして活用するために伊藤忠はセブン銀行への出資を決めたわけで、ファミマATM向けの独自機能開発も当然視野に入っている。そのターゲットの1つが「ファミペイへの現金チャージ」で、ファミリーマートによれば「機能開発に向けた検討を先方と進めている」(同社広報)という。
ファミマATMのみに限定すれば、こうしたファミリーマート店舗や関連サービスとの連動が主軸になるが、業界全体で見れば、今回の展開は近い将来にもATMというビジネスの根本を大きく変える可能性を秘めている。
現在、日本国内にATMは12万台前後設置されているといわれており、そのうち台数トップがゆうちょ銀行の約3万1000台、次点がセブン銀行の約2万8000台、ローソン銀行の約1万4000台、イーネットの約1万2000台と続き、残りはメガバンクなどの金融機関となる。
ここからも分かるように、日本国内のATMはゆうちょ銀行を除けば大部分がコンビニATMで占められており、キャッシュレス化が進んで現金需要が減少する中、このインフラを支えているのはコンビニなのが現状だ。
そして、この概略の台数は今回のファミマATMでの変動分を含んでいないため、もし4年後に転換が完了すればセブン銀行が4万4000台超でトップ、次いでゆうちょ銀行が約2万6000台、ローソン銀行が変わらず、イーネットは1000台未満になる。ゆうちょ銀行ATMの大部分は郵便局内に設置されたもので、日本国内の郵便局の数が2万3500局であることを考えると、商業施設におけるATMは、ほぼコンビニATMに占められていると考えていい。
実は日本国内におけるATMビジネスは岐路にさしかかっている。最近では富士通がATMハードウェア事業からの撤退を発表して話題となったが、窓口業務を含めATMの需要は給料日など特定期間を除いて大きな減少に見舞われており、単独のビジネスとしての存続が難しくなっている。
典型的なのが地銀などの地方金融機関のATMビジネスで、利用頻度が減少しているにもかかわらず、現金輸送の警備費、機器の維持費、監視費用など固定費は変化せず残り、しかも近年のインフレで上昇傾向にさえある。もともと地方の商業施設などに設置されるATMは“客寄せ”を見込んでおり、施設側が地銀などの金融機関に利用料を払って頼み込む形で設置しているケースが多い。一般的な金融機関では、今やATMの維持さえも厳しくなっているのだ。
設置台数を減らすことで固定費削減に臨むが、今度はスケールメリットを出せずに1台あたりの維持費が高くなる悪循環に陥る。例えば山口県を拠点にする第二地方銀行の西京銀行は2026年4月より同行の店舗内外のATM80台をセブン銀行のものに置き換え始めている。この動きに追随する金融機関も出ており、体力の少ない金融機関を中心にこの流れは加速するとみている。
苦境のイーネットが“円満な”清算に向かう可能性
そうなると気になるのがイーネットの存在だ。ファミマATMへの置き換えが完了すると、同社が管理するATMは1000台を切ることになり、恐らくメガバンクと地方銀行の中間くらいの台数を抱える規模になるだろう。もともと同社はメガバンクを含む複数の金融機関が出資してATMの委託運営を行うことを業務としており、ATM運営の過程で得られた手数料収入などを出資比率に応じて各社で分配することで成り立っている。
これがコンビニATMとしてスケールメリットを維持できている状態であれば問題なかったが、近年のキャッシュレス化推進でATM利用も減少し、近年ではその“うま味”もなくなっている。むしろ、手数料収入が減少して収益が運営費用に対してマイナスになった場合、この“積み立て資金”を逆に取り崩す必要に迫られる逆ざや現象が発生する。
ある関係者によれば、出資している金融機関らはこの状況に陥ることを恐れており、運営がマイナスになって取り崩しが発生する前に資金の引き上げを計画しているという。結果としてイーネットがその前に円満な状態での清算に向かう可能性を指摘する。これがイーネットATMのファミマATM移行における背景だ。
残りの、南九州(鹿児島、宮崎)と沖縄のファミリーマートについては、鹿児島を除くとイーネットが展開されているため、基本的には前述の流れに乗ることになるだろう。一方で鹿児島のファミリーマートは独自色を出しており、こちらではその多くに鹿児島銀行のATMが展開されている。
鹿児島銀行では「Payどん」という独自のアプリ決済サービスを提供しており、全国でもかなり早期にスマートフォンを使ったキャッシュレス決済サービスに乗り出したことで知られている。提携していた「銀行Pay」は2026年12月20日いっぱいでのサービス終了を発表しているが、Payどんそのものは鹿児島エリア内で継続して使えるため、地域振興券などとの連動と合わせて現在もなお利用が続いている。今後の交渉しだいだが、恐らく鹿児島エリアは他のエリアとは異なり今後も現行ATMを維持することになる。
あらゆるリアル接点の窓口をATMが代替する時代へ
ATM単体でのビジネスが年々成り立たなくなる中、コンビニATMはその立地の利便性を生かして今後も現金との接点として継続利用されることになるだろう。一方で、スケールメリットを生かしたとしても、現金引き出し窓口としてのATMの役割低下による手数料収入減少は避けられない。
こうした事情を背景に、近年セブン銀行が強化しているのが「+Connect(プラスコネクト)」という考えだ。あらゆるリアル接点の窓口をATMで代替していくことで、金融取引外の収入源を確保しようとしている。逆にいえば、前述のPayPayチャージのような新しいニーズに応える柔軟性がなければ、ATMは今後も維持するのがどんどん困難となり、ファミマATMの登場はそれを端的に示した事例といえる。
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