それでもG'zOneを諦めない──カシオデザインチームの執念(2/2 ページ)
「もう一度、G'zOneをやりたい」──。空白の4年間、元祖G'zOneのデザインチームはずっとそう願い続けていた。手が空くと、出るかどうかも分からないG'zOneをデザインする日々。ようやくそれが報われる時がやってきた。
社長を、KDDIを、ユーザーを味方につけて
ここからデザインチームは製品化に向けた行動にうって出る。まずはカシオ計算機内の商品審議会で社長に直接、提案した。「“わずかな差で製品を作るのではなく、全く違う商品を作りましょう”と提案したら、社長も『カシオがやるべき製品だ』と支持してくれた」
ただ携帯電話は通信キャリアが販売するため、社内の支持を取り付けただけでは製品を出せない。「製品化するまでにはその後2年を要した」
次のステップはKDDIへの根回し。KDDIの一部スタッフに提案しながらヒアリングを繰り返した。「ここでも反応は良かった。このデザインで商品を出すということについては、けっこうな支持が得られることが分かった」
しかし商品として出す以上、どれくらい売れるのかが重要になってくる。それが誰にも予測できなかった。「過去のG'zOneの苦い経験から、“いくつ売れるの”というところでみんな黙ってしまう。具体的に進まない時期が長かった」
こうした状況を打開したのは皮肉にもスペック競争の行き詰まりだった。「カメラ付き携帯をいくら煮詰めても、マニアックな方向に行ってしまう。3Mまで行って限界が見えてきたところで、“そういえばG'zOne、あったよね”という話になった。それから一気に量産に向けて動き始めた」
2005年1月、ビジネス的な可能性を見せるために、米ラスベガスで開催された2005 International CESに出品(1月7日の記事参照)。ここで予想以上の反響があったことから、“ビジネス的にもいける”と実感できたという。「待っている人がいっぱいいることが分かった」(6月2日の記事参照)
そして5月26日。G'zOneは折りたたみ型の「G'zOne TYPE-R」として、4年ぶりにユーザーの前に姿を現した(5月26日の記事参照)。
G'zOne TYPE-Rは、多様化戦略の切り札
井戸氏はカシオの端末開発について、こう話す。「うちはそれほど大きいメーカーではないので、“ほかと違うことをやる”のが存在意義となる。デザインも、そこを切り口にして提案したいと考えている」
今の市場は多様化が進んできたとはいえ、まだ同じような商品を各社が分け合っている“市場の細分化にすぎない”という見方だ。「携帯電話はもっといろいろなものがあっていい。G'zOne TYPE-Rは携帯電話を多様化するためにカシオが取った戦略の1つといえるだろう」
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