W-CDMAとソフトバンク無線LANでハンドオーバーに成功
外では3G携帯電話。自宅では無線LANでADSLにつながりIP電話に。そんなサービスを実現できる技術の実験に、エリクソンが成功した。
エリクソンとソフトバンクグループの携帯事業会社BBモバイルは7月26日、3Gネットワーク(W-CDMA)と無線LAN(IEEE802.11)の間で、音声と映像のハンドオーバー実験に成功したと発表した。
BBモバイルが実験している1.7GHz帯を使ったW-CDMAネットワークと、ソフトバンクBBが提供中のADSLサービスに接続された無線LANとの間で、音声とビデオセッションを同時に別のネットワークに切り替える(ハンドオーバーする)というもの。
項目 | W-CDMA | 無線LAN | ハンドオーバー |
---|---|---|---|
音声 | 回線交換 | VoIP | 呼転送/B2B UA |
ビデオ | パケット通信/IP | ビデオ/IP | モバイルIP(MIP) |
デモの構成図。無線LANおよびADSL部分は、既存のシステムをそのまま利用できる。W-CDMAネットワーク側はIMSの採用とIMSへのソフトウェア追加が必要。また端末はW-CDMAと無線LANのデュアルモードに対応する必要がある
当初W-CDMAで、音声およびビデオセッションが接続されており、切り替えを行うと0.5~1秒程度両方のネットワークを同時に利用し、その後W-CDMAを切断、無線LANのみの接続に切り替わる(make-brefore-breake)。実用化時は、無線LANのエリア内に入ったら無線LANに自動的に切り替わり、エリアを出たらW-CDMAにまた戻るといった動作を想定している。
スーツケースとノートPCで1つの端末を構成している。スーツケース部分にW-CDMAの端末が収められており、無線LANの部分はノートPCを使う。W-CDMA端末部分は、1.7GHz帯への周波数コンバーターとSony Ericssonの「Z1010」からなっている。デモはBBモバイルがW-CDMAの実験を行っている埼玉県与野市で行われた(4月28日の記事参照)。ビル屋上にあるのが1.7GHz帯のW-CDMA基地局
W-CDMAから無線LAN、また無線LANからW-CDMAへと、音声とビデオが途切れることなくハンドオーバーするのを体験できた。画面は中央が無線LANのトラフィック、下がW-CDMAのトラフィックを示す。途中で一瞬に重なりがありながら、トラフィックが移っているのが分かる
ソフトバンクは、無線LAN機能を載せた携帯電話を使い、自宅に戻ったらADSLモデムに無線LANで接続してIP電話がかけられるといったサービスを想定してきた(7月22日の記事参照)。同社の1.7GHz帯W-CDMAのテストを行うベンダーの1社でもあるエリクソンの今回の実験成功により、こうしたサービスの技術的な実現可能性が高まった。
回線交換の音声とパケット交換のビデオを同時にハンドオーバー
回線交換の音声とパケット交換のビデオセッションを、同時にハンドオーバーさせたことが今回の実験のポイントだ。回線交換の音声とVoIPの音声のハンドオーバーや、パケット交換ビデオとIPのビデオのハンドオーバーは、従来から実績があった。
回線交換とパケット交換を混在させたサービスは3GPP Combinational Sercices(CSI)と呼ばれ、3GPPのRelease 6で標準化されたもの。回線交換とIMSを組み合わせて実現する。回線交換の音声とVoIPとのハンドオーバーはRelease 7で検討中であり、CSIのハンドオーバーはRelease 8に盛り込まれる可能性がある。
3G携帯電話では、音声通話にもVoIPを使うオールIPのソリューションが話題に上がることが増えているが、「音声のパケット化を携帯でやると、品質や遅延の問題がある。今のところ、回線交換を使った方が品質も効率もいい」と日本エリクソンCTOの藤岡雅宣氏。
エリクソンは、シナリオの1つとしてはオールIPを想定するが、2つ目のシナリオとして回線交換の音声を残したCSIも検討している。
関連記事
- 「HSDPA、IMSによりモバイルもオールIP化へ」Ericsson
仏カンヌで2月17日まで開催された、モバイル業界最大の年次イベント「3GSM World Congress 2005」、今年のキーワードはHSDPAだった。 - ソフトバンク、携帯事業の現在
2006年ともいわれる新規参入に揺れる携帯業界。その台風の目となるソフトバンクの動向をまとめた。 - BBモバイル、1.7GHz帯W-CDMAで下り14.4Mbpsを確認
ソフトバンクグループのBBモバイルが、1.7GHz帯を使ったHSDPAの実証実験で、下り14.4Mbpsの通信速度を確認した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.