「W41T」に搭載されたHDDの謎
KDDIから発表された「MUSIC-HDD」こと「W41T」は、携帯電話としては国内で初めて0.85インチの小型HDDを搭載したユニークな製品だ。
KDDIの「W41T」は、「MUSIC-HDD」の名で発売される、HDD内蔵の携帯電話だ(1月19日の記事参照)。国内初となる内蔵HDDの秘密に迫った。
0.85インチの4GバイトHDDを搭載
搭載されているのは、東芝が開発した0.85インチ(約2.2センチ)のディスクを採用したHDDだ。2004年1月に発表された(2004年1月8日の記事参照)このドライブは、「iPod」などで使われている1.8インチHDDの約4分の1のサイズで、容量は4Gバイト。SDカード並みの小ささを実現している。
このドライブを搭載したことで、W41Tはほかの音楽ケータイにはない、4Gバイトという広大な保存領域を獲得したわけだ。
接続方式などの詳細は明らかにされなかったものの、miniSDカードのように外部記憶として扱われる。このため、「ハードディスクメニュー」が用意されていて、ほかの機種でminiSDにコピー/移動できるデータについてはすべてHDDに書き込める。
USBマスストレージクラスにも対応しているため、PCとUSBケーブルで接続すれば、内蔵HDDにアクセスすることも可能だ。ただしPCから見えるのは512Mバイトの「PCフォルダ」だけで、残りの3.5Gバイトについては「セキュリティの関係上見えなくしている」(説明員)という。「着うたフル」などのデータが外部から容易にアクセスできる位置にあっては問題があるからだろう。つまり、着うたフルのデータなど、著作権の絡むデータは3.5Gバイトまでしか保存できない。残りの512Mバイトの領域については、カメラで撮影した写真や動画の保存、PC用の簡易外付けHDDなどとして活用できる。
耐衝撃性は従来製品より低め
HDDは、シリコンメモリと違い駆動部品があるため、動作中に落下させたり、強い衝撃を与えたりすると破損してしまう可能性がある。この点を指摘すると、HDDの周囲を緩衝材で覆い、さらにその外側にシールドを施すことで保護しているという旨の説明があったが、HDD自体には特別な仕掛けはしていないとのこと。ただ「ディスクへのアクセスを減らすため、HDD上にあるデータの読み書きは、極力抑えるようにプログラムしている」(説明員)という。例えば音楽データを再生する場合、HDDから内蔵メモリに1曲分のデータをバッファリングし、再生中はHDDにアクセスしないようにしている。これは、後述するが、同時に消費電力の低減にも効果がある。
また、片手で持ってボタン操作を行う機会の多い携帯電話は、落下するリスクが、HDDオーディオプレーヤーなどと比べても格段に高い。KDDIでもそれは認識しており、落下テストなどの実験は行ったそうで、「一般的なHDDオーディオプレーヤーよりも高い耐衝撃性を確保してある」(説明員)。ただ、やはりHDDを持たない従来の携帯電話ほど強くはないという。ちなみにHDDが壊れてしまった場合、修理(交換)してもらうことは可能だが、当然ながら中のデータの復旧はできない。
シリコンメモリに対するアドバンテージは?
NAND型フラッシュメモリ(シリコンメモリ)の価格は、メモリオーディオプレーヤーの普及という追い風が吹いて、急速に低価格化が進んでいる。「iPod nano」のように、すでに4Gバイトのシリコンメモリを搭載したオーディオプレーヤーも発売中だ。そんな今、あえて4GバイトをHDDで搭載するメリットはあるのだろうか。
明確な回答を得られなかったが「現時点でも、シリコンメモリを用いるより容量あたりの単価は安く、より大きな容量を確保できる」とのことだった。「より大容量のHDDを搭載した後継モデルが登場する可能性もあり得る」そうだ。ちなみに東芝は、1月6日に垂直磁気記録(PMR)技術を採用した10Gバイトの0.85インチHDDも発表(1月6日の記事参照)している。
消費電力は、シリコンメモリよりは高いと考えられるものの、バッテリー容量は3.6ボルト880mAhと標準的で、特別大きいわけではない。しかし、HDDからの着うたフルの連続再生時間は、イヤフォン再生時で8時間、スピーカー再生時で7時間を確保している。さらに、Bluetoothを利用すれば12時間の再生が可能だ。バッテリー容量や搭載されている機能が異なるが、参考までに他機種での外部メモリからの音楽連続再生時間を挙げておくと、「neon」と「W41K」が8時間、「W41H」が7.5時間、「W41CA」が6.5時間、「W41S」と「W41SA」が5時間(いずれもイヤフォン再生時)となっており、W41TがHDDを搭載したことによるトレードオフは、サイズ以外は特にないようだ。
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