「便利なもの」にはへきえきしている──松永真×SH702iD:シリーズ・702iDクリエイターインタビュー(2/2 ページ)
「とりたてて言うことはない」と、SH702iDの開発を振り返る松永氏。スペックにこだわるのでなく、たたずまいにこだわったというその開発スタンスとは。
同氏がイメージするのは、紳士がタバコを吸わない間にも愛用のパイプの材質を愛でている姿。松永氏はさらに「ダンヒルのライター」「モンブランの万年筆」などを例に挙げつつ、「くどくど解説しなくても、持ち主の品性伝わるようなもの」に仕上げたかったのだと説明した。
ただし、このスタンスで端末を開発していくと、メーカー側としては不都合も出てくる。仮定の話になるが、塗装にしても日常的に使ってもらうことを想定した「汚れにくい塗装」というのはある。それが、松永氏の考えがこの塗装と相容れないこともあり得る。
しかし、SH702iDではデザインを優先している。別にSH702iDが汚れやすいというわけではないが、大事なのはユーザーに愛情を持ってもらうことだとの考えだ。「例えば、何千万円の毛皮のコートがあったとする。これは、毎日手入れをしないと着られたものではない。だが買った人間は『ほっておけない』気持ちになり、毎日手入れをする」
松永氏はまた、こうした開発スタンスはメーカーサイドから反発をくうかとも思っていたが、実際にはすんなりと受け入れられたと付け加える。実際に、思ったほど現場サイドとの衝突がなかったとした。
こだわりがないように見えて、こだわっている
「とりたてて言うことはない」といいながらも、実際には同氏は積極的に端末開発に関わっている。SH702iDのためのフォントも作っているし、端末全体とコーディネートした待受画像も作っている。折りたたみを開閉するときの音にもこだわった。ただ、そうしたことをあえて売り物にしたくなかったのだと松永氏は話す。
スペックで勝負する端末にしたくない、といっていたHS702iDが、結果的に「FOMA最小、最軽量」といううたい文句がついて“スペックで勝負できる”ものになってしまったのは、ある種皮肉だといえる。「そういうことを言わないでくれ、といっているのだが、やはりカタログにはその文言を入れたいようで……」(苦笑)
とはいえ、最終的にSH702iDは松永氏の手になじむようなものに仕上がった。
「何でもない、しかしその累積によってでてきた存在感のようなものがあれば。ぜひそれを見てほしい。少なくとも、僕がこれを持つようになるだろう、ということだけは確かです」
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