「2011年まで待つつもりはない」──MediaFLO導入を急ぐソフトバンクモバイルのビジョン:MediaFLO Conference 2007(2/2 ページ)
「2009年中にはMediaFLOのサービスを開始したい」──。こう話すのはソフトバンク傘下のモバイルメディア企画を率いる矢吹雅彦社長。どんなサービスをどんなビジネスモデルで展開しようとしているのか。
1つ目は、放送される機会がなかなかないものの、記憶に残っている番組を見たいというロングテール的なニーズで、2つ目はちょっとした空き時間に最新情報を確認したいというニーズ。3つ目として挙げるのは、特定の地域やコミュニティで情報を共有したいというニーズ。4つ目はフリーペーパーやチラシの情報を動画で見たいというニーズだ。
こうした需要に対応するサービスの1つとして矢吹氏が提案するのが、一定時間ごとに自動でリニューアルされる蓄積型コンテンツだ。例えば1時のニュースを見逃しても、端末内に1時のニュースが蓄積され、1時10分に1時のニュースを視聴できるというイメージだ。「これは15分ごとにリニューアルされ、いつでも最新のニュースを見られる。こういうニーズは必ずある」(矢吹氏)
もう1つは、メタデータやタグを使い、自分が好きなジャンルの番組やマイチャンネルを電波が届かない場所でも楽しめるようにするソリューションだ。「ロングテール的なコンテンツは制作コストをどこまで下げられるかが重要になるが、周波数帯の利用効率がいいMediaFLOなら、こうしたコンテンツを流す仕組みとして使える」(同)
また、MediaFLOは地域やコミュニティに応じた配信ができるので、特定地域のユーザーやコミュニティに向けた地域限定動画広告や動画チラシも配信できるという。
さらに矢吹氏は、“セグメントを絞ったあとは受動的に視聴する”という形の、放送と通信の中間的なサービスへのニーズが急増していると指摘。ユーザーが自分の生活時間に合わせて、いつでもどこでも必要な情報を得られるようなサービスの提供を目指すとした。「例えば、1チャンネルから6チャンネルまでをワンセグに、7チャンネルから10チャンネルあたりをMediaFLOに割り当て、11チャンネルは自分が見たいものを蓄積型で視聴できるようにする、ということも考えられる」(同)
ネットワークと配信プラットフォームの一部をオープン化
カメラやテレビ、おサイフ機能が搭載されたことで、携帯はますます手放せないツールになり、ユーザーが接触する時間も長くなる。これによりユーザーの可処分時間が増え、「ビジネスのパイは間違いなく増える」と矢吹氏は予測する。
MediaFLOのビジネスモデルについては、ポイントとして(1)コンテンツ利用者への課金(2)コンテンツ提供者への課金(3)スポンサーサイドへの課金 の3つを挙げた。
コンテンツ利用者への課金については、従来のようなコンテンツ料の課金に加え、好きなコンテンツを集めた「マイチャンネル」などの1チャンネルごとの課金、ハイライトシーンのショートクリップへの少額課金があるとし、コンテンツ提供サイドへの課金は、仲間やコミュニティなどにコンテンツをブロードキャストする際の「コンテンツアップロード料」、配信チャンネルを好きな期間や地域で買い取る「買い取り料」などを検討しているという。スポンサーサイドへの課金は、これまでの広告に時間/地域限定動画などの付加価値を提案し、安いコストで一定の帯域を提供することも可能になるとした。
注目すべきは、ネットワークと配信プラットフォームの一部をオープンなビジネス環境として開放することを検討している点だ。「この上でさまざまなコンテンツホルダーやパートナーが、ビジネスを行える環境を作ることも可能性としてある。大きな観点から見ると(垂直と水平を両立する)“L字型”の事業を展開したい」(矢吹氏)
MediaFLOの収入源は、大きく分けて広告収入モデルとサブスクリプションモデル、ペイ・パー・ビュー(都度課金)モデルがあり、これらを融合して組みあわせることでビジネスモデルを構築すると矢吹氏。「可処分時間の拡大があり、“見たい、知りたいニーズ”と“見せたい、知らせたいニーズ”がある。可処分時間の拡大がビジネスのパイの広がりにつながり、市場全体が拡大する。それを広告モデル、サブスクリプションモデル、ペイ・パー・ビューを組み合わせて、ビジネスモデルを組み上げたいと思っている」
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