法人契約の携帯電話は「コスト」ではなく「投資」──KDDI 湯浅英雄氏:ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)
番号ポータビリティ以降、コンシューマー市場では順調に契約数を伸ばしているKDDI。では法人市場ではどうなのだろうか。KDDI モバイルソリューション事業本部 事業本部長 執行役員の湯浅英雄氏に話を聞いた。
ソフトバンクモバイル、ウィルコムにどう対抗するか
ITmedia 法人市場の今後において、大きな可能性を秘めているのがデータ系のモバイルソリューションです。しかし、その一方で、市場の現況を鑑みますと、ソフトバンクモバイルが火をつけた「低料金・音声定額」のサービスが中小規模の法人から支持されています。この分野ではPHSのウィルコムも、ソフトバンクモバイルと並んで存在感を強く持っています。
KDDIとしては、この市場にどのようにアプローチするのでしょうか。
湯浅 確かに個人事業主や商店さんの場合は、ソリューションで使いたいというニーズはほとんどありません。100契約以上の規模になって、セキュリティなど、付加価値的な機能が求められてきます。
ITmedia 法人市場を取材していますと、100契約以下ではソフトバンクモバイルとウィルコムが強い、という話をよく聞きます。
湯浅 実際のところは、100契約にも満たないと思いますね。(ソフトバンクモバイルやウィルコムが強いのは)10から数十契約規模といったところでしょう。そういった層をかなり取られているのは事実です。
ITmedia 「安いから」と理由で、事業主の方が個人契約を法人契約に切り替えるケースも少なくないようですね。
湯浅 そういう意味では、我々は負けてもいないのですよ。そもそも、これまでアプローチしてきた法人市場が競合していないのですから(笑)
ただ、そういった中堅・小規模な会社は、社数から言えば非常に多い。我々も今後、その層にアプローチしなければならないと考えています。大企業向けの展開は、だいぶメドが付いてきましたしね(笑) 中小企業の市場にも降りていきます。
ITmedia 中小企業にも強いauを目指すわけですね。
湯浅 携帯をコードレス電話のように使ってもらおうと思っています。そのためのサービスとして「ケータイdeコードレス」など小規模な店舗向けのサービスも用意しています(5月10日の記事参照)。
また、データ系の試みとして、無料で使えるビジネスツールとして「ビジネスEZ」というポータルサイトも立ち上げています(6月14日の記事参照)。簡単なアプリですが、スケジュール管理やグループアドレス帳などの機能をご利用いただけます。
法人向けサービスの販売チャネルの今後
ITmedia KDDIの法人ビジネスは、当初は直販モデルを中心に立ち上げられたわけですが、販売チャネル戦略は今後どのように考えていますか。
湯浅 そうですね。当初は直販が多かったのですが、昨年くらいから中小企業にも使っていただきたいと考えまして、代理店制度も始めました。比較的規模の大きいauショップで、法人営業の担当者がいらっしゃるところに代理店になっていただいています。この場合は、もちろんKDDIの法人営業としての教育支援を行います。
ITmedia なるほど。しかし従来のauショップは、コンシューマー向けのイメージが強かったですから、法人市場へのアプローチという点では難しくありませんか。
湯浅 いや、そうでもありませんよ。例えば、トヨタ販売店の一部がauショップも兼ねていますが、トヨタは多くの法人顧客を持っています。
ITmedia トヨタということは、PiPitが中心になるのでしょうか。
湯浅 そうですね。PiPitのラインになります。トヨタ車ディーラーを兼ねるケースが多いので、トヨタとして法人顧客へのリーチを持たれていて、auの法人契約獲得にも貢献していただいています。
例えば、クラウンをお乗りの方は会社のオーナー層ですから、トヨタディーラーはタッチポイントを持っていますが、携帯電話としてはドコモを選ばれている方が多い。そこをトヨタ販売店にご協力いただくことで崩していきたい。
ITmedia ここにきてトヨタとKDDIの協力体制は強化されていますね。昨年はトヨタオリジナルケータイ「TiMO」を出されましたし。
湯浅 いろいろな形で協力体制ができてきています。先ほどのクラウンや、レクサスにはカーナビが標準で付いていますが、それにはBluetoothハンズフリー機能が用意されている。それとTiMOを組み合わせて、トヨタ車をお乗り方向けの協業などにも力を入れています。
ITmedia トヨタとの連携はコンシューマー向けでも行っていますが、法人向けはさらに効果がありそうですね。法人名義のクルマといえば、クラウンとカローラ、そしてヴィッツが定番ですから(笑)
湯浅 ええ。またPiPitは併設店で“待ち”の状態になるわけですが、我々としてはトヨタディーラーの営業担当に、トヨタ車と合わせてKDDIの携帯電話を営業していただく取り組みも行っています。むろん、彼らの本業は車を売ることなので、ここは時間をかけてご協力いただく体制を作っていきたいと考えています。
ITmedia これまで法人ビジネスにおける販売チャネルは、KDDIの場合は直販が大きかったわけですが、代理店が占める比率も拡大しているのでしょうか。
湯浅 そうですね。今は直販と代理店で、ほぼ半々といったところです。今後、法人契約数が増えてきますと、それぞれのお客様に対する継続営業も重要になります。マンパワー的な要因からも、販売チャネルの拡幅は重要だと考えています。
携帯電話導入は「投資」である
ITmedia 2007年は法人市場への注目が集まっているわけですが、KDDIでは、今後の展望をどのように持たれていますか?
湯浅 まず基本になるのは、法人契約での携帯電話導入は(利用者となる)企業にとって「投資」であるということです。携帯電話を単なる「コスト」と見るような導入ではもったいない。携帯電話に投資し、アプリケーションを開発すれば、企業にとって重要な業務改善が果たせます。そういうメッセージを常に持っていきたい。逆に言えば、これは“安売り”では絶対にできないのです。
ITmedia その方針は今年も変えない、と。
湯浅 そうです。さらに、我々は当初、大企業中心に法人ビジネスを行ってきましたが、今年はそれを中堅・小規模企業まで広げていきます。商品、サービス、料金、ブランド、販売チャネル。この5つをしっかりと強化していきます。
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