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モバイルブロードバンドのメインストリームはHSPAに──Ericsson CEOのスヴァンベリ氏Ericsson Strategy and Technology Summit

スウェーデンのEricssonは9月11日、英ロンドンで「Strategy and Technology Summit」を開催。モバイルブロードバンドのトレンドはHSPAからLTEへの流れがメインストリームになるとの考えを示した。

 スウェーデンのEricssonは9月11日、英ロンドンでプレス・アナリスト向けのカンファレンス「Strategy and Technology Summit」を開催した。モバイル機器最大手の同社はここで、モバイルネットワークのトレンドを分析し、同社の戦略を披露した。

モバイルブロードバンドへの強い需要


EricssonのCEO兼社長、カール-ヘンリック・スヴァンベリ氏

 EricssonのCEO兼社長、カール-ヘンリック・スヴァンベリ氏はまず、モバイル業界のトレンドについて、成熟市場と途上国市場に分けて紹介した。成熟市場では、「ユーザーが運転席に戻ってきた」とスヴァンベリ氏は表現する。5~6年前にEricssonらベンダーがW-CDMAをプッシュした頃とは異なり、ユーザーが携帯電話を利用して何をしたいのかを明確に理解している、と同氏は言う。「マーケットの需要は大きい」(スヴァンベリ氏)

 ユーザーは若者が中心で、携帯電話経由でインターネットやユーザー生成コンテンツ(CGM)を利用するというのが新しいトレンドだ。この結果、データトラフィックは予想を上回るペースで成長しており、3G網におけるデータの利用は今年5月、音声と同じレベルに達し、それ以降は音声を上回っているという。

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 スヴァンベリ氏が特に強調したのがHSPA(HSDPA/HSUPA)だ。3.5GともいわれるHSPAは、W-CDMAをベースとした技術で、既存のW-CDMAから容易にアップグレードできる。ユーザーの強いニーズに押されるように、オペレータのHSPA導入が進んでいる。現在、3Gユーザーは世界に1億5000万人、毎月600万人が新たに加入しているという。W-CDMAネットワークは世界78カ国の174事業者が展開しており、そのうちHSPAネットワークの数は128。HSPAのサービス開始を控えている国は約50カ国あり、ロシア、メキシコ、ナイジェリアなどの途上国が多いという。HSPAをサポートした端末は300機種に達し、2008年にはHSPA通信機能を標準搭載したノートPCも登場する。

 HSPAに代表されるモバイルブロードバンドは明確なトレンドで、「今後マス市場に普及する」とスヴァンベリ氏は語る。データの利用はさらに増え、カバレッジとキャパシティがオペレータ市場の動きを決定するという。

当分はHSPAがメイン技術

 HSPAのさらに先、4Gの世代については、LTE(Long Term Evolution)に向けた動きが進んでいるが、EricssonではHSPAがメイン技術にとどまる時代が当分は続くと見ているようだ。

 技術トレンドについて語った同社CTO、ホーカン・エリクソン氏によると、HSPAは2007年に下り最大7.2Mbpsに達しており、2008年には下り最大28Mbpsを実現できる見通しだという。

 携帯電話の技術によるモバイルブロードバンドの有力な対抗技術として、現在モバイルWiMAXが注目を集めているが、エリクソン氏は、WiMAXのメリットとされる実装コストについて、「端末側だけで判断するのは不十分」と釘を刺す。インフラ側では、HSPAが下りと上りのトラフィックを分けたFDD(周波数分割複信)方式を利用しているのに対し、WiMAXはTDD(時分割複信)方式を採用している。この場合、基地局あたりのエリアカバレッジはHSPAのほうが優れているという。

スケールと技術リードがEricssonの戦略

 固定網と移動体の融合する次世代に向けたEricssonの戦略は、固定とモバイルの両方でIP、マルチメディア、ブロードバンドを実現することだ。

 最新の調査で、EricssonのGSM/HSPA機器市場におけるシェアは約45%に達した。一時期は35%に落ち込んだシェアが再び増えた背景には、同社が2003年に立てた2年ごとの3ステップ成長戦略がある。第1ステップとなる2003年からの2年間は、設備の運用にフォーカスしてOPEX(運転/保守整備費用)や営業コストを抑えながら研究開発に投資し、第2ステップの2005年から2年間は、研究開発で技術リーダーシップを維持しつつ成長とマーケットシェアの獲得を目指した。2007年以降の第3ステップでは、次世代のマルチメディア時代に向けてポートフォリオ拡大を目指すという戦略だ。

 ここで重要なのが、買収だ。同社は英Marconiの通信事業部、ルーターなど通信機器ベンダーで世界第3位の米Redback Networks、ノルウェーのTandberg Television、GPON(FTTH)技術を持つ米Entrisphereなどの企業を相次いで買収し、固定網側の技術、マルチメディアなどを強化している。

 事業部別に見ると、主事業のネットワークでは技術リーダーシップとスケールがキーワードとなる。スケールを利用して、途上国と成長国の両方のニーズを満たす技術を提供できる体制をとりつつ、最新技術におけるリーダーシップを維持するというわけだ。その結果、最新の調査では、モバイルインフラ市場で45%のシェアを獲得した。

 プロフェッショナルサービスも好調で、現在、同社はテレコムサービスではトップの座についている。英Vodafone、独Deutsche Telekomなど大手との契約を獲得しており、Ericssonの管理サービスを利用するユーザー数は13億5000万人に達しているという。

 マルチメディアは新しい分野となるが、売上管理、サービスデリバリプラットフォーム、モバイルプラットフォームなどの既存技術のほか、TVなどのメディア、エンタープライズがフォーカスエリアとなる。カスタマイズソリューションにスケールを加えることで、成長を図る戦略だ。

 今後も3事業で業績を伸ばしてマーケットシェアを拡大しつつ、技術リーダーシップを維持していくとSvanberg氏は締めくくった。

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