W-ZERO3が変える英会話学習――BEAT・新日鉄・ウィルコムの「なりきりEnglish!」実証実験
ビジネスシーンを中心に、W-ZERO3を利用したさまざまなソリューションが登場している。eラーニングの分野でも一風変わった試みにW-ZERO3が使われている。それが英語教材「なりきりEnglish!」だ。
東京大学大学院情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座(BEAT)は、ビジネスパーソンの隙間時間に利用できるモバイル英語リスニング学習システム「なりきりEnglish!」を、新日本製鐵(以下、新日鉄)とウィルコムの共同研究で開発したと発表した。11月17日から12月8日までの3週間、新日鉄の社員らが参加して企業研修を実施する。
研修開始のワークショップには、新日鉄の社員60人が参加。ウィルコムのスマートフォン「W-ZERO3」を1人1台持ち、端末内に用意された学習コンテンツを使った英会話研修をスタートした。研修の内容は、新日鉄がアジア各国で行っている英語での営業を、担当者に「なりきって」学ぶというもの。
業務に特化した英会話学習
使用するW-ZERO3は初期モデルのW-ZERO3(WS003SH)で、W-SIMは「RX410IN」。ハードウェアは市販の端末と同じ仕様だが、通信関連のソフトウェアなどを追加し、なりきりEnglish!に最適化されているという。そのなりきりEnglish!は、企業向けにカスタマイズされたモバイル英語リスニング教材で、学習者が使うであろう文脈の英語利用にあったストーリーがリスニングの寸劇になっている。その仕事で“将来耳にする英語”を学べることが大きな特徴だ。
たとえば新日鉄の場合、“mother coil”(母材)や“stock yard”(貯蔵場所)など、鉄鋼業界ならではの語句が多く盛り込まれている。今回のストーリーは「タイの需要家を訪れて自社製品を売る」というもの。東南アジア営業グループの担当者に「なりきり」、パートナーの熟練海外赴任経験者とともに商談を進めていく。
1つの動画を使い、さまざまな方法で
この英会話学習にW-ZERO3が使われている最大の理由は、「すきま時間」を使って学習できる点にある。移動中の電車の中や、昼休みなどを利用していつでもどこでも気軽に学習を進められる。コンテンツは主にFlashで作成されており、内蔵ブラウザのInternet Explorer Mobile上で再生する。動画を多用するなど端末への負荷が高いため、“毎日充電する”や“学習中はほかの機能を使用しない”などが注意点として挙げられた。
学習は、朝、家を出るまでの「ウォームアップ」、移動中や昼休みを使う「トレーニング」、就寝前の「クールダウン」と、1日を3つに区切って進める。ウォームアップの段階は日本語が中心で、今日の目標や学習するストーリーの背景とその知識を予習。また、その日の重要語句を覚えて発音を音声ファイルで確認する。
昼の本格的なトレーニングでは最初にリスニングを行い、どのぐらい聞き取れたかを自己採点。続いて要点をつかむ練習とポイントとなる語句の意味と発音を覚える。動画を使っての繰り返し学習や、いくつかのパートに分けて質問に答える学習を進め、その日の学習をまとめるが、成績が悪い場合には“強制復習モード”に突入。苦手なメニューに戻り、強制的にもう一度実行させられるのだ。
1日の終わり、夜に行うクールダウンメニューが“おやすみリスニング”。動画には英語字幕が表示されるので、カラオケのように一緒に発音していくことが可能だ。字幕は非表示にもでき、自分のリスニング能力を確認することもできる。
こうした学習を通じての成績は、レーダーチャートで確認でき、自己分析に役立てられる。また、通常の「復習モード」も備えており、強制的にではなく、自分がもう一度トライしたいメニューにチャレンジすることも可能だ。復習モードでは、別の日のメニューにも再挑戦できる。
この「なりきりEnglish!」を使った研修は3週間の日程で行われ、最終日となる12月8日には最終ワークショップを開催。研修に参加した新日鉄社員たちがその成果を確認しあう予定だ。
「今回は会社向けだが特定業界に向けたものも…」
この研究を行っている東京大学准教授の中原淳氏によると、このなりきりEnglish!は2006年も実証実験を実施しており、ベネッセ社員23名に対して行われた。前回のバージョンから、レーダーチャートの追加やプレゼンテーションを含んだワークショップなどの強化を行っているという。2006年の様子は、BEAT2006年度研究成果報告会のWebサイトで確認できる。
中原氏に今後のビジネス展開についてたずねたところ、まだ商用化は未定であるとする一方で、「今回は1つの会社向けで実証実験を行っているが、特定業界向けのカリキュラムを考えている」とコメント。“特定業界”とはIT業界向けのことらしく、2008年にはスマートフォンを使った英語学習教材ビジネスとして企画することを示唆した。
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