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転々「私、昨日、廃業しました」Mobile&Movie 第290回

映画に登場する“モバイル製品”をチェックする「Mobile&Movie」。今回ご紹介するのは借金に苦しむ大学生が、借金取りの提案で東京を散歩することになる『転々』。映画の散歩コースをたどれるケータイスタンプラリーも展開中です。【ネタバレ注意】

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 今回ご紹介する作品は、昨年末突然の結婚発表で世間を驚かせたオダギリジョー主演(お相手は香椎由宇)の『転々』。借金に苦しむ大学生が、借金取りの提案により、東京の町を散歩することになります。

 以下、内容に触れますので、これから見る予定の人は注意して下さい。

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 文哉(オダギリジョー)は、古びた四畳半のアパートに住む大学8年生。目下の悩みは学業のことよりも借金問題。産みの親には捨てられ、育ての親は逮捕され、天涯孤独の文哉は借金を返せるメドが立ちません。返済の期限があと3日と迫ったところで、文哉のアパートに借金取りの福原(三浦友和)が現われます。

 文哉の借金の総額は、利息も合わせて84万円。慌てふためく文哉は何とかして、1円でも返せないものかと悪あがきしますが、福原は冷静に文哉に返済する能力がないことを見抜きます。そして文哉に100万円の札束をチラつかせ、福原は提案します。

 「100万円ある。オレに付き合え」

 状況を理解できない文哉は驚くばかり。福原は続けます。

 「散歩するだけで100万円やる」

 文哉は何か裏があるに違いないと勘ぐりますが、借金を返すためには手段を選べず、福原の提案を受け入れることにします。こうして文哉は福原と“東京散歩”をすることになりました。期間は福原が満足するまでで、それが終われば100万円が文哉のもとに。

 最初に福原が向かったのは吉祥寺。福原と文哉は2人で井の頭公園を歩き、焼き鳥屋(いせや)にも足を運びます。福原が思い出を語りながら歩いていると、携帯電話の呼び出し音が。

 「はい、ええ、ご用件はわかりました」

 淡々と話す福原。

 「私、昨日、廃業しました」

 そっけなく電話を切った福原に文哉は慌てて尋ねます。

 「廃業って、借金取りやめたんですか?」

 「もっと大事なものをやめたんだ」

 福原が借金取りをやめたと聞いても、100万円のためには“東京散歩”を続けるしかない文哉。福原は文哉の思い出の地にも行きたいと言い出し、文哉はかつて家族と住んでいた街(中央線沿線)まで案内します。2人で散歩をし始めて数日後、やっと福原は“散歩の理由”を文哉に明かしますが、それは信じられないものでした。ウソか本当か判断つかないまま、福原の妻との思い出をめぐる散歩をひたすら続けます。

 やがて辿り着いた東向島では、福原の知り合いの麻起子(小泉今日子)の家を訪れ、文哉と麻起子の姪のふふみ(吉高由里子)と4人で、家族団欒のようなひとときを過ごします。文哉はすっかり忘れていた、家庭の温かさを思い出して悲しくなってしまいます。そして福原との絆が少しずつ深まりかけた頃、“東京散歩”は終着点へ。ラストシーンは、福原が携帯電話を投げ捨てて……。

 どこか懐かしい“昭和”の香り漂う景色に惹かれ、見終わった後“東京散歩”したくなる作品です。公式サイトでは、GPS携帯で足あとを実況中継しながらロケ地をめぐる“東京お散歩ラリーが実施されています。

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