JSAT、インマルサット衛星を利用した移動体通信市場へ参入
JSATが米Stratosとの合弁企業「JSAT MOBILE」を設立し、インマルサット衛星を利用した移動体通信市場へ参入することを発表した。2009年初めにサービスを開始し、2013年に約33億円の売上を見込む。
JSATは8月21日、インマルサット衛星を利用した移動体通信市場への参入を発表した。8月中に米Stratos Global Corporation(以下、Stratos)と合弁し、通信事業会社である「JSAT MOBILE Communications」(以下、JSAT MOBILE)を設立、2009年初めをめどにサービスを開始する。
インマルサットは、英Inmarsatが提供する衛星通信サービス。北極/南極をのぞく全地球エリアをカバーしており、船舶・航空会社や官公庁、報道関係者を対象に衛星電話/データ通信/救難信号通信を提供している。
Inmarsatは2005年に、最大492kbpsのパケット通信「BGAN」(Broadband Global Area Network)を発表したが、東日本を含む太平洋地域ではカバーする衛星がないためこれまで利用できなかった。その後、「Inmarsat-4」3号機をカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げ(8月20日の記事参照)、地球のどこにいても3Gケータイとほぼ同じ速度の衛星通信を提供できるようになった。
JSAT代表取締役執行役員社長の秋山政徳氏は、「JSATは、日本でオンリーワン、アジアでナンバーワンの衛星通信企業。現在のKuバンド、Cバンドを使った放送中心のサービスに加え、Lバンドを利用するインマルサットを用意することで、さらなるサービス拡充を目指したい」と新規参入への意気込みを語った。
JSATの既存事業であるKuバンド/Cバンドを利用した衛星通信は、放送・大容量データ送信向けのサービス。地上設備が大きく、数十Mbpsの高速通信が可能だが通信料も高額という、いわいる固定回線向けのサービスだ。一方のインマルサットは最大492kbpsと低中速だが、地上設備は片手で抱えられるサイズで柔軟な運用が行える。
日本ではすでに、KDDIと日本デジコムがインマルサット事業を手がけているほか、NTTドコモが日本全土と沿岸約200海里をカバーする「ワイドスター」を提供中だ。JSAT執行役員でJSAT MOBILE代表取締役社長に就任する渋谷恵氏は、「現在の国内衛星通信市場は、インマルサットとワイドスターの2つで構成されている。市場規模の算出方法はさまざまだが、回線のみであれば合計100億円程度。これが5年後の2013年には約188億円規模に成長する見通しだ。JSAT MOBILEとしては、このうち33億円をコミットしたいと思っている」と述べ、成長市場への事業拡大であること説明した。
今回JSATと合弁するStratosは、インマルサットサービスのディストリビューター(1次代理店)として世界最大の規模を誇る企業。日本でも7年前からビジネスを展開しており、船舶会社などを相手に、インマルサットのサービスと機器を販売している。
渋谷氏はStratosをパートナー企業とした経緯について、「ただ回線を用意するだけでなく、他社との優位性を持って参入したかった。Stratosはインマルサットディストリビューターのリーディングカンパニーであり、回線のボリュームディスカウントによってサービスを安く提供できる。また、帯域の圧縮技術やウイルス対策などの付加サービスが充実しており、回線と機材をまとめて導入できるワンストップショッピングサービスやアフターサポートにも定評がある」と述べた。
なおStratosは、2009年4月にInmarsatの子会社になる予定で、JSAT MOBILEは将来的にInmarsat本体と直接取り引きすることになる。こうした事情もStratos選出に影響したという。
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