薄型テレビを手のひらに――「AQUOSケータイ W64SH」が目指す究極の映像美とは:開発者に聞く「AQUOSケータイ W64SH」(3/3 ページ)
auの2008年秋冬モデルの中でも多機能な「AQUOSケータイ W64SH」。auケータイでは最大の3.5インチフルワイドVGA液晶を搭載し、ワンセグやLISMO Videoなどの映像コンテンツを満喫できる。auユーザーにとっては念願の“全部入り”シャープ端末といえるW64SHの開発の背景を聞いた。
横画面で快適に操作できるAVメニュー
W64SHには新しい操作デバイスとして、上下左右のカーソル移動と決定操作ができる光TOUCH CRUISERを採用し、さらに横画面で快適に操作できるUI「AVメニュー」を搭載した。AVメニューからはデータフォルダやカメラ、ワンセグ、LISMO、PCサイトビューアー、PCドキュメントビューアーなどを起動できる。
谷氏が「横画面UIで特に力を入れた」と話すのがデータフォルダ。フォルダ内のデータを1画面に18枚か50枚のサムネイルで表示できるのが特徴だ。サムネイルの枚数は側面の上下キーで変更でき、カメラキーからmicroSDへのアクセス、クリアキーの長押しでデータの消去もできるなど、操作性を特に追求した。
谷氏はW64SHの開発で最も苦労したのは「光TOUCH CRUISERと加速度センサーに対応させることだった」と振り返る。「KCP+上で直感的な操作を実現するのは難しい部分が多かったですね。1つのアプリケーションに光TOUCH CRUISERを対応させたからといって、すべてのアプリに対応させるということは仕組み上できません。光TOUCH CRUISERを利用するアプリケーションごとに検証して、使える幅を広げていきました」(谷氏)
他キャリアのシャープ製端末を見ると、ドコモは「SH-03A」、ソフトバンクモバイルは「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」がタッチパネルを採用している。そんな中で、W64SHがタッチパネルではなく光TOUCH CRUISERを採用したのは「より美しいビューワーを重視したため」(谷氏)だ。KCP+の制約上タッチパネルの搭載が難しいということはなく、あくまでコンセプトの問題だという。
「タッチパネルも視野に入れましたが、『スーパーAVビューワー』をコンセプトの核にしているので、より美しいビューワーを目指しました。タッチパネルはセンサーパネルを1枚入れなければならないので、タッチパネル非搭載の液晶の方がきれいに表現できます。単純に、パネルに触れることが少ないので、ディスプレイの表面を汚さずに済むという面もあります。また、光TOUCH CRUISERでもタッチパネルのような使い勝手をおおむね実現できたと考えています」(谷氏)
横画面で光TOUCH CRUISERを使えるのはauのシャープ製端末では初めてだが、文字入力や一部のツールなど、全操作を横画面でこなせるわけではない。「横画面での文字入力は、サイクロイドスタイルでもう少し頑張りたいという考えはあります」と谷氏。タッチパネルか、サイクロイドか……auのシャープ製端末が今後どんなスタイルに進化するのか、期待したい。
スマートリンク辞書をはじめ実用機能も進化
映像機能や光TOUCH CRUISERなどの陰に隠れがちだが、W64SHは基本機能も大きく進化し、シャープ端末らしい使い勝手のよさにも磨きがかけられている。進化した機能は以下のとおり。
- 海外版「EZガイドマップ」を搭載
- 日本語/英語のバイリンガル機能を搭載
- スマートリンク辞書に「日英翻訳」を追加
- スマートリンク辞書の内蔵辞書で単語や文章の音声発音が可能に
- スマートリンク辞書のネット辞書の横断検索が可能に
- 日本語入力システムが「ケータイShoin7」に進化
- 本体を閉じてロック、開いて通話開始、閉じて通話終了などができるスライダー連動機能を搭載
- カロリーカウンターを搭載
- 振って操作できる体感ゲームに対応
- 充電中に待受画面に卓上時計を表示できるように
- なめらかなアウトラインフォントを採用
- 画面上端のインフォメーションエリアにEZニュースフラッシュのニュースやメールの差出人と件名、緊急地震速報も設定可能に
- ショートカットに登録できる機能を拡大
- 受信メールのカラーラベルに対応
- メール一覧画面からワンタッチでメールの既読化が可能に
- オートパワーオン/オフが可能に
シャープは電子辞書を手がけているだけあり、辞書機能には特に力を入れた。8000文例を収録した日英辞書は、例文中の固有名詞や動詞などをシチュエーションに合わせて変更できる。例えば「スペイン料理を食べたいです」の「スペイン料理」を「日本料理」や「シーフード」「肉料理」「中華料理」に変更する、といった具合だ。このように変更できる単語は約2万語を用意した。また、「全部で3個です」など数字が出てくる文では数字の変更もできる。
「この日英翻訳はシャープの電子辞書にも搭載する本格的な機能です。シャープ製端末には初めて搭載しましたが、読み上げる英語の音声のスピードや音量の調節もできるなど、本格的な辞書です」(谷氏)。
スマートリンク辞書のネット辞書は、複数の辞書を一括検索できるようになった。一括検索できる辞書の数に制限はなく、保存してある辞書すべてを使って検索できる。「これは他キャリアのスマートリンク辞書対応のSHケータイでも搭載していない機能です」(谷氏)
メールは見やすさに配慮し、送受信メールの一覧表示でカラーラベルが付けられるようになった。EZキーを押すと、メールリストの色を赤→青→緑に変更できる。ほかに、一覧画面でメールキーを押すと、受信メールを既読化できるようになった。「W64SHはメール一覧画面に(カーソル選択しているメールの)本文も表示でき、短文ならメールを開かずに読めるので、一覧画面でもワンタッチで既読化できるようにしました」(谷氏)
快適に使いこなせるようパフォーマンスにもこだわり、キーレスポンスを改善した。「W62SHでもよく言われていましたが、KCP+になって反応速度が遅くなってしまった感は否めません。使っていてストレスを感じないように、いろいろな機能のキーレスポンスを向上させました。KCP+対応端末の中では速いという評価をいただいています。とはいえ、改善できるところはまだあるので、パフォーマンスの向上はもっと進めていきたいですね」(谷氏)
3.5インチフルワイドVGA液晶、光TOUCH CRUISERや加速度センサーといった、新しいハードウェアとソフトウェアをふんだんに盛り込んだW64SHは、「これぞシャープケータイ」といえるような、auの“全部入り”端末に仕上がった。KDDIが掲げる「究極美」を体現するモデルとしてはもちろん、先進デバイスを搭載した多機能ケータイとしても満足できる1台といえる。
関連キーワード
辞書 | TOUCH CRUISER | AQUOSケータイ | シャープ | au 2008年秋冬モデル | タッチパネル | AQUOSケータイ W64SH | 電子辞書 | モーションセンサー | KDDI | LISMO | W62SH
関連記事
第1回 着信LEDと通知ランプはどこにある?――「AQUOSケータイ W64SH」
au端末最大の3.5インチフルワイドVGA液晶や光TOUCH CRUISERを搭載し、AV機能を充実させた「AQUOSケータイ W64SH」。“ここ”が知りたい第1回では、着信LEDや外部メモリスロット、スピーカーの位置、テレビ電話やボイスレコーダーへの対応について調べた。「SHケータイ史上最強のカメラ」が完成――シャープ、“元気なケータイ!”をアピール
シャープは11月19日、同社の携帯電話2008年秋冬モデルの説明会を開催。海外市場と国内市場における同社の今後の取り組み、また秋冬モデルで特に注力したカメラ機能の進化について説明した。au「W63CA」「W64SH」「W65T」、シンプルコース分割で月々2000円前後
auの「EXILIMケータイ W63CA」「AQUOSケータイ W64SH」「W65T」が11月19日から順次発売される。大手量販店では、EXILIMケータイ W63CAとAQUOSケータイ W64SHはシンプルコース一括で6万4920円、24回払いで月々2355円と案内されていた。3.5インチディスプレイ+光TOUCH CRUISER対応のフルスライド――「AQUOSケータイ W64SH」
フルスライドボディが特徴的なシャープの「AQUOSケータイ W64SH」。大型の3.5インチNEWモバイルASV液晶や光TOUCH CRUISER、Bluetooth、FMトランスミッターなど、AV機能を満喫できるデバイスや機能が充実している。写真で解説する「AQUOSケータイ W64SH」
シャープ製の「AQUOSケータイ W64SH」は、3.5インチフルワイドVGA液晶や光TOUCH CRUISERといった新しいデバイスに加え、5.2Mカメラ、Bluetooth、FMトンラスミッターを搭載するなど、auの2008年秋冬モデルの中でも随一のスペックを誇る。多彩なAV機能をはじめ、前モデル「W62SH」から進化した部分を中心にチェックした。薄型テレビなみの画質を携帯で――KDDIから“究極美”ケータイ
KDDIから「世界初」「同社初」を冠する“究極美”ケータイが発売される。3.1型ワイドVGAの有機ELディスプレイや3.5型フルワイドVGA液晶といった大画面高精細ディスプレイで、“ビジュアルのau”をアピールする。「もう一度auらしく」――冬モデルは“映像美とスタイル”で
冬モデルは久々に「auらしい」ラインアップになった。上位3機種には480×800ピクセル表示のワイドパネルを搭載して「映像美」を追及。「北斗の拳モデル」など個性的な「フルチェンケータイ」も加える。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.