日本の技術が貢献 “スマホ以外”で先進国開拓を目指すFirefox OS:佐野正弘のスマホビジネス文化論(1/2 ページ)
KDDIと「Fx0」を開発し、さらに新カテゴリー端末の共同開発構想も打ち出したMozilla。これからのFirefox OSはどう進化していくのか? Mozillaのアンドレアス・ガルCTOに聞いた。
KDDIの「Fx0」で国内進出を果たした「Firefox OS」。3月に開催されたモバイル関連イベント「Mobile World Congress 2015」(MWC 2015)では、KDDIなど世界4キャリアと共同でフィーチャーフォン型など新しいカテゴリーの端末開発を目指すなど、日本市場にも影響を与える取り組みを発表した。
Firefox OSはFx0の開発でどのように進化したのか。また今後の日本市場に対し、Firefox OSはどのような変化を与えようとしているのか。MozillaのCTOであるアンドレアス・ガル氏に、日本市場におけるFirefox OSの取り組みについて話を聞いた。
日本絡みの大きな発表が相次ぐFirefox OS陣営
GoogleのAndroidと、AppleのiOSが圧倒的な市場シェアを獲得しているスマートフォン市場だが、2社に対抗するべくチャレンジを続けているOSはいくつかある。そうした第3勢力の代表格が、MozillaのFirefox OSだ。
これまで新興国向けのエントリーモデルで採用されてきたFirefox OSだが、ガル氏は「最近、日本にも大きく関係する動きが相次いでいる」と話す。1つは、パナソニックが4K対応のスマートテレビにFirefox OSを採用したこと。これによって、従来スマートフォンに限られていたFirefox OSが、スマートフォン以外にも道が開かれ、Web技術の活用の幅も広がることになる。
そしてもう1つは、2014年末にKDDIがFirefox OSとしては初のハイエンドモデルFx0を発売したことだ。これまで市場に投入されてきたFirefox OS搭載スマートフォンは、新興国向けに低価格を実現するため、性能的にはロースペックで、機能も絞られたシンプルなものとなっていた。だがFx0は「KDDIと密に連携しながら、ハイエンドのスマートフォンを展開することを目指した」(ガル氏)と話しているように、クアッドコアプロセッサやHDディスプレイ、そしてLTEによる高速通信に対応するなど、最近の一般的なスマートフォンに近いスペックを実現した内容となっている。
しかもFx0は、開発者やエレクトロニクスの操作が好き人などをターゲットとしていることもあり、ボディが透明でオープン性が高く、完全なオープンソースから成り立っているFirefox OSとマッチしていると、ガル氏は話す。そうした特徴的な要素が好評を得たためか、Fx0はMWC 2015で米Trusted Reviewsが選出したBest of Mobile World Congress 2015を受賞するなど、海外でも高い評価を受けている。
「Fx0」でKDDIが実現したFirefox OSの高度化
従来のFirefox OSでは新興国向けを重視してきたMozillaが、日本企業とタッグを組んで、日本での取り組みに力を入れているのはなぜだろうか。ガル氏は日本市場への取り組みに関して、「日本を狙ったというより、Firefox OSの対象範囲を広げたという考え方になる」と話す。
Firefox OSの新興国市場開拓は順調に進んでいるようで、最近ではMWCに合わせて、フランスの大手キャリアであるOrangeと提携し、アフリカへの展開も進めるとも発表している。そうしたことから、次のターゲットとして先進国の市場開拓を進めたい思いが、Mozillaにはあるようだ。
だが先進国のユーザーが相手となると、ローエンド向けを重視していたこれまでのFirefox OS端末による市場開拓は難しい。そこでFirefox OSも、先進国が求める性能をキャッチアップする必要があったとのこと。そうしたFirefox OSの高度化に向けた協力に大きく貢献したのが、KDDIであったという。
実際KDDIはFx0の開発に際して、Mozillaのエンジニアと密に連携。Firefox OSのソフト的な互換性は維持したまま、HDディスプレイやLTEなどの機能を付加することに貢献したという。この取り組みによってFirefox OSがハイエンドモデルにも対応できることが証明されたことから、「Fx0は興奮を持って受け入れられた」と、ガル氏は話している。
ちなみに、KDDIの田中孝司社長が「日本人は詳細にも注目するから」といって、Fx0のために金色のネジまで特注で作って用意したのには、ガル氏もかなり驚いたとのこと。そうしたこともあってか、「MWCでもFx0は“非常にクールだ”と関心が高く、他のスマートフォンと比べ引き立っていた」と話すなど、ガル氏はFx0を非常に高く評価しているようだ。
Firefox OSがフィーチャーフォンで狙うのは?
KDDIの協力によって高度化を実現したことで、Firefox OSはより幅広い市場環境に対応できるようになったと、ガル氏は話す。その上で、先進国市場の開拓を進めるために打ち出したのが、やはりMWCに合わせて打ち出した新端末開発の取り組みだ。これは既報の通り、MozillaとKDDI、そして米Verizon Wireless、韓国のLG U+、そしてスペインのTelefonicaと共同で、新しいカテゴリーの端末を開発するというものである。
その背景として挙げられるのは、ガル氏が「東京の街中を歩いていると、いかに多くの人がフィーチャーフォンを持っているかが分かる。日本ではいまだに携帯電話契約者の約50%が従来型の携帯電話を使っているという統計もある」と話しているように、スマートフォン以前の従来型のデバイスを支持するユーザーが、先進国には一定数存在し続けていることだ。
キャリアやメーカーが各社がスマートフォンへまい進する中、フィーチャーフォンの進化は非常に限定的で、最新技術に対応できていないとガル氏は指摘する。最近では「AQUOS K」のようにAndroidをフィーチャーフォン向けにカスタマイズする取り組みも進められているが、本来フィーチャーフォンに向けたOSではないことから、開発には多くの苦労があるとも聞く。
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