モバイルネットワークを活用した「ドローン配送」は、いつ実現されるのか?(1/2 ページ)
上空からユーザーの元へ直接荷物が配送される――。そんな未来が「ドローン」によって近づきつつある。その鍵を握るのがモバイルネットワーク。NTTドコモとKDDIに、ドローン配送への取り組みを聞いた。
上空からユーザーの元へ直接荷物が配送される――。そんな未来が「ドローン」によって近づきつつある。ドローンといえば、今だと上空を飛ばして空撮をする機器というイメージが強いが、このドローンを産業に活用する動きが進んでいる。その一つが配送だ。
ドローン配送のメリット
現在、ドローンは操縦者が目視できる範囲で操作することが航空法で義務付けられているが、2018年度ごろからは山間部や農村などで目視外での操縦が可能になる見込みで、国土交通省がそのための要件を発表している。そして2020年以降は、都市部を含む有人地帯でも目視外でドローンを操作できるようになることを、同省は目標に掲げている。
国土交通省が発表した、ドローンをはじめとした無人航空機の目視外飛行に関する要件。「人が立ち入る可能性の低い場所であること」「機体を遠隔監視すること」「周辺の気象状況を監視すること」などが定められている
目視外飛行の鍵を握るのが「モバイルネットワーク」だ。現在、ドローンは操縦者がコントローラーで飛ばす方法が一般的だが、飛行距離は目視できる範囲に限られる。しかしモバイルネットワークを活用して操縦者が遠隔操作をすることで、より広域にわたってドローンを飛ばせるようになる。その究極的なゴールの一つがドローン配送というわけだ。
ドローン配送のメリットは、昨今叫ばれている「働き方改革」につながる。「インターネット通販が増えてきて、配送員の数が追い付かないなど、配送業でも労働力不足が社会課題として挙がっています。その部分をドローンで自動化できてくれば、労力を補いコストダウンにもつながります」とKDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部 商品1グループの松木友明氏は話す。特に山間部や農村地帯など、配送員を派遣しにくい場所でドローンを活用するのは効果的といえる。
ドコモとKDDIの取り組み
NTTドコモとKDDIは、モバイル通信機能を内蔵したドローンを活用し、新たなビジネスを創出する取り組みを続けている。なお、モバイル通信機能を内蔵したドローンは、ドコモは「セルラードローン」、KDDIは「スマートドローン」と呼んでおり、記事でもその表記に従う。
2社はドローンをビジネスに活用するためのプラットフォームを開発しており、パートナー企業に提供している。2社とも、自社でドローンのサービスを提供するのではなく、インフラやクラウドを提供し、パートナー企業のサービスを支援するスタンスを取っている。
ドコモの「ドローンプラットフォーム docomo sky」は、クラウド上でドローンを制御する「クラウドコネクト」、遠隔地からドローンを自動運航させるための「運航支援基盤」、撮影・取得したデータを活用するための「ビジネス支援基盤」、解析アプリの開発を目的とする「解析支援基盤」の4つから構成される。
KDDIの「スマートドローンプラットフォーム」は、ドローン機体、3次元地図、運航管理、クラウドの4つで構成されており、農業、測量、検査、災害、配送などに生かしていく考えだ。
ドローン配送は“買い物弱者”の味方に
ドコモとKDDIは2016年にドローン事業をスタートしており、実際にドローン配送の実証実験も行っている。ドコモは2016年11~12月に、セルラードローンを活用した買い物代行サービスを実施。シニアや子育て世帯を対象に、九州本島から約2.5km離れた福岡市の能古島(のこのしま)まで商品を配送した。KDDIは2017年4月に新潟県長岡市山古志にて、約2km離れた住宅街にスマートドローンで食品を届ける実験を行い、6~7分ほどで届けられたという。
実証実験で2社が主なターゲットに想定しているのが、地方の「買い物弱者」と呼ばれる人たち。「車の免許を返納してしまい、移動手段のない高齢者の方が多く、地元のボランティアの方が生活必需品を直接持っていくケースが多いですが、ボランティアも高齢化で負担が増えています。そこでドローンを使ってお弁当や生活必需品を配れないかと考えました」と松木氏は話す。
ドコモが実証実験の届け先に能古島という離島を選んだのも、定期便の船が来る回数が少なく、なかなか本土へ買い物をする機会がない地域だから。実験では「一般のお宅を想定して、洗濯、洗剤、ティッシュなど届けました」とNTTドコモ ドローンビジネス推進室長の藤間良樹氏は振り返る。
ドローン配送といっても、工場からユーザー宅まで直接届けるというよりは、物流センターまではトラックで届け、そこからドローンで配送することを2社は想定しているようだ。「拠点間はトラック、ラストワンマイルはドローンにするなど、ハイブリッドにしていくかは実証実験で見極める必要がありますが、中山間地域(山間地とその周辺の地域)は人が行くと手間なので、ドローンが代替するのは有効な手段です」とKDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部 商品1グループの博野雅文氏は話す。
ドローンの安全面をどう担保するか
実験の結果、どんな成果や課題が見つかったのか。1つはドローン機体の安全性をどこまで担保できるか。「基本は自動飛行のプログラミングを活用しますが、例えば変な風にあおられたときなどには、遠隔で操作する必要があります。一方、ドローンは機体にセンサーを持っているので、障害物を検知して回避することはできます」と藤間氏。災害時など不測の事態にいかに対処できるかが鍵を握っているといえる。
「配送で使うには、雨、風、雪には耐えていかないといけない」(博野氏)ため、ドローン自体に耐久性が求められる。KDDIは、産業用ドローンを開発するメーカーのプロドローンに出資しており、IPX5の防水性能とIP5Xの防塵(じん)性能を持つドローンの開発も進んでいる。
「ドローンをどこに着陸させるのか」という問題もある。ドローンが安全に発着陸できるよう、KDDIは「ドローンポート」と呼ばれる地点に着陸させることを想定している。またドコモも長野県伊那市長谷地区で、ドローンポートを活用した配送の実証実験を2017年11月に実施している。
このドローンポートにはそれなりの面積が必要なので、全ての住居に設置するのは現実的ではない。着陸が難しい際、ドローンが窓やベランダまで荷物を下ろすという方法も考えられるが、「どの方法が最適かは実験によって見極める必要があります」と博野氏。藤間氏は「正しく届けるための精度や、荷物をどうやってお渡しするか、着陸の衝撃などは、改善の余地があります」と話す。
松木氏によると、全国の基地局をドローンポートとして活用していく考えもあるという。人口の多い地域ほど基地局も多いため、人口分布に沿ってドローンポートをうまく配備していけば、全国で短時間のドローン配送が容易になるだろう。
ドローンを遠隔地でいかに監視するかも考えなければならない。KDDIは基地局を監視する全国10箇所のネットワークセンターで、ドローンやポートも監視していく計画だ。
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