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XiaomiがMeituを飲み込みGioneeが破産した理由は? 2018年の中国スマホ市場を振り返る山根康宏の中国携帯最新事情(1/3 ページ)

2018年の中国市場では、中小メーカーにとっては苦しい展開となった。シェア拡大を目指すXiaomiとそれを提携の相手に選んだMeitu。この2社の動きは中国メーカーの統廃合の動きを加速させるかもしれない。

 Huawei、OPPO、Xiaomiの名前を聞かない日がないほど、中国大手スマートフォンメーカーの存在感が高まっている。一方、中小メーカーにとっては苦しい展開となったのが2018年の中国市場だった。シェア拡大を目指すXiaomiとそれを提携の相手に選んだMeitu。この2社の動きは中国メーカーの統廃合の動きを加速させるかもしれない。

中国市場の競争激化の波に飲み込まれたMeitu

 世界のスマートフォン市場で中国メーカーの勢いが止まらない。2018年第2四半期にHuaweiがAppleを抜き世界シェア2位となり、続く第3四半期もAppleを抑え込んだ。この数値はガートナーやIDCなど世界のメジャーな調査会社の結果全てが同じ状況を示している。Leicaという信頼のカメラブランドを手にしたHuaweiは、その名に恥じない製品を次々と送り出した。サブブランドのHonorからは7型超えの巨大画面やスライド式ディスプレイを備えた製品が出てくるなど、業界をリードする新しい技術の採用にも積極的だ。

 Huaweiを追いかけるようにXiaomiが類似の製品を投入したり、OPPOやVivoもカメラ可動式端末を出したりするなど、中国のスマートフォン上位メーカーは次々と新世代の製品を送り出した。Huaweiが世界初のディスプレイ内蔵型カメラを発表すれば、Vivoは両面カラーディスプレイの製品を投入するなど、「やり放題」ともいえるほど各社は自由な端末開発を行っている。もはや中国上位メーカーのライバルはSamsungやAppleではなく、中国メーカー同士なのだ。

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 この4社に対抗すべく、LenovoやOnePlusなども新製品を投入する一方、2番手以下のメーカーは競争についていけず提携や事業縮小の動きがみられた。その中でも大きな衝撃だったのが、11月に発表されたXiaomiとMeitu(メイトゥ)の電撃的な提携だ。


Xiaomiとの提携を決めたMeituのWu Xinhong(中央)

 美顔アプリ「BeautyPlus」などで有名なMeitu(美図)は自社ブランドでもスマートフォン展開を行っており、高級モデルの「V」シリーズ、ハイエンドモデルの「T」シリーズ、そして標準展開を行っている「M」シリーズの3つのラインアップを持っている。いずれも新機種登場時には最新の美顔モードを搭載しており、その効果は他社を大きく上回っている。「まるでメークをしているような」「自然な若返り効果が得られる」――そんな美顔効果をMeituのスマートフォンは標準でやってのけるのだ。

 Meituはこれまで、3つのラインアップを季節ごとに投入してきた。本体デザインは女性をターゲットに縦長の六角形で、セルフィーに特化したいわばニッチ向けの製品であり、固定ファンも多かった。そのファンの口コミやネットでの評判から徐々にユーザーを増やしていったのだ。ところが、今やOPPOやVivoを中心にインカメラが高画質化し、美顔モードの性能アップによりMeituの優位性は崩れ出している。

 撮り比べてみると確かにMeituのカメラの美顔高価は他社よりも優れているが、OPPO、Vivoのセルフィーも十分美しく撮影できる。セルフィー機能だけでは差別化が難しい時代になったのだ。


Meituのスマホの美顔モードは業界で最強だが、優位性は薄れている

 Meituは打開策として、日本のアニメーションキャラクターをあしらった限定モデルを次々と投入した。セーラームーンやハローキティーといった女性向けキャラだけではなく、ドラゴンボールZなど男性向けモデルも発売。大手メーカーとは異なり、生産ラインに小回りが利く利点を生かして次々とキャラクターモデルを投入した。MeituのWebページを見るとキャラクターモデルが2017年版も含めると10種類も並んでおり、「セルフィー特化メーカー」のイメージはなくなっている。

 Meituは2016年12月15日に香港で上場し、アリババ以来最大規模のIPO(上場)として大きな話題となった。調達した資金のうち3割はスマートフォンなどのハードウェア開発に投資、残りはソフトウェアやECサイト構築に充てるとしていた。実はMeituは上場時点で3年連続赤字が続いていた。売り上げは逆に3年連続で伸びていたが、赤字幅は年々拡大していたのだ。IPOによる資金調達により新製品と新サービスを投入し、売り上げアップを図り赤字からの脱却を目指す予定だった。

 しかしMeituのビジネスモデルは、販売数が多くはないスマートフォンが売り上げ全体の8割を握っており、世界に10億ユーザーを誇るBeautyPlusなどのアプリ・サービスが残りといういびつな構成になっていた。そのスマートフォンが売れ行きを落とせば事業全体に大きな影響を与えてしまう。Meituのもくろみは美顔機能を強化したスマートフォンを年に数機種ずつ展開すればユーザーが増えてくるというものだったのだ。


Meituの売り上げのほとんどは端末が稼いでいた
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