予断を許さない“Huawei問題” 日本市場に与える影響は?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
米商務省から事実上の禁輸措置を受けた結果、日本でも、主にHuawei端末の販売に影響が出始めている。5月24日に発売される予定だった「P30」「P30 lite」は、多くの販路で発売が延期になった。なぜこのような事態になったのか? 今後の影響も含めて考察する。
米商務省から事実上の禁輸措置を受けた結果、日本でも、主にHuawei端末の販売に影響が出始めている。5月24日に発売される予定だった「P30」「P30 lite」は、取り扱いを表明していたMVNOが相次いで販売開始を延期。ビックカメラ、ヨドバシカメラや同社のオンラインストアでは購入が可能だが、当初の予定より販路は狭くなってしまった。
また、大手キャリアや傘下のサブブランドも、発売を延期。KDDIとUQ mobileは「P30 lite Premium」を、Y!mobileはP30 liteを取り扱う予定だったが、現時点では予約受付も停止している。「P30 Pro」をラインアップに加えていたドコモは、もともと「今夏発売」と時期があいまいだったこともあり、発売日自体は変更していないが、現在、予約は受け付けていない。
では、なぜこのような事態になったのか。今後の影響も含め、本連載で考察していきたい。
CPU、OS、部品と影響は多岐にわたる一方で、既存端末のサポートは継続
相次いで延期されたHuawei端末の発売だが、製品そのものに何か致命的な欠陥があったわけではない。きっかけは、安全保障や外交上の脅威を理由に、米商務省が同社を「エンティティリスト」に登録したこと。米国が事実上の禁輸措置を発動した結果、Huaweiはスマートフォンの開発に必要な部材やソフトウェアの調達が困難になっている。
実際、Googleが取引を停止すると、新規製品でAndroidが利用できなくなる他、Androidのアップデートも停止される恐れがある。ソフトバンク傘下のArmも、Huawei傘下のHiSilicon(ハイシリコン)との取引を停止しており、プロセッサの新規開発も厳しい状況に陥っている。ただし禁輸措置には猶予もあり、ユーザーに向けた既存の端末へのセキュリティアップデートなどのサポートは実施できる。
事実、Googleは、米国の制裁が発覚した直後に、既存のファーウェイ端末にセキュリティパッチやGoogle Play Protectを継続して提供する声明を発表している。これを受け、ファーウェイも「日本で今回発表したスマートフォン、タブレットにおいて、その使用、今後のセキュリティアップデート、アフターサービスなどが影響を受けることはありません。安心して、ご購入、ご使用ください」とコメント。これを見る限り、P30やP30 liteは、“既存端末”として、サポートを継続提供できることがうかがえる。
では、各キャリアやサブブランド、MVNOが相次いで発売を延期したのはなぜか。あるキャリア関係者は、「現時点では、両社のコメント以上のことが分からない」と明かす。確かに、HuaweiやGoogleの声明には、将来的なOSのアップデートに対する言及はなく、「今後」がいつまでを指すのかも不透明だ。キャリアの販売するP30やP30 liteがサポートできないのではなく、キャリアの商品として販売するうえで、リスクがどの程度あるかが読み取れない状況で慎重を期したというわけだ。
同様に、2018年にエンティティリストに登録されたZTEのケースでは、日本でもアップデートサーバが停止し、セキュリティパッチが提供できなくなるなど、メーカーだけでなく、キャリアも対応に追われた。こうした過去の苦い経験がある以上、気軽に販売に踏み切れないのが実情だろう。発表時点では発売の意思を固めていたMVNOも、続々とキャリアの状況を見て、念のために発売を延期した可能性が高い。
逆にいえば、ユーザーがリスクを認識したうえで、自らの意思で購入する分には問題ない。そのため、ビックカメラやヨドバシカメラといった大手家電量販店では、Huaweiからのコメントを掲示するなどして販売を継続している。今後のリスクをどう捉えるかで対応が分かれた格好だ。
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