高橋社長「中途半端な4Gネットワークなら5Gは活きない」――UNLIMITEDな世界観で楽天に先制攻撃:石川温のスマホ業界新聞
10月にMNO参入を控える楽天モバイルに、地域と期間を限定してネットワークをローミング提供するKDDI(と沖縄セルラー電話)。KDDIの高橋誠社長は、来る「5G」の普及においてしっかりとした「4G(LTE)」ネットワークを構築することの重要性を語った。事実上、楽天モバイルをあおるかのようにも聞こえる。
8月28日、KDDIは「au UNLIMITED WORLD発表会」を開催。10月1日に施行される改正電気通信事業法に対応した新プラン「auデータMAXプラン Netflixパック」を発表した。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年8月31日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
高橋誠社長のプレゼンがキレッキレで、見ていてとても気持ち良かった。 5Gに関しては「5Gを主語で語る人は信じてはいけない。5G、5Gといったって何ができるのか、言えるようにしないといけない。言葉だけが繰り返させる。5Gという言葉をひけらかす人は、サービスのイメージがわかっていないのではないか」と一刀両断。
こういった発言は以前、法人向けイベントでもあったのだが、改めて強調された。
ネットワークに関しても「我々はピカピカな4Gを作り上げる。中途半端な4Gネットワークなら5Gは活きない」と、すでに行政指導を3回食らっている楽天を牽制。
KDDIが楽天とローミングや物流、決済でパートナー契約をしていたとは思えない、煽りっぷりに清々しさを感じたほどだ。
新料金プランにおいても「ソフトバンクやドコモは『ギガなんとか』をやっている。楽天は大容量の料金プランは厳しいのでは」(高橋社長)と語る。
そりゃ、楽天が東京23区、名古屋市、大阪市以外の地域をKDDIからネットワークを従量制で借りるとなれば、使い放題のような大容量プランの実現はかなり困難だ。
楽天の首根っこを掴んでおいて、「楽天は大容量の料金プランは厳しいのでは」とサラリと言う高橋社長もずいぶんと人が悪い。楽天は組む相手を間違えてしまったのかも知れない。
今回、KDDIが使い放題プランを強化してきたことを考えると、おそらく、NTTドコモやソフトバンクも追随せざるを得ないだろう。キャリアとしては「使い放題」で、ユーザーを増やせば、それだけARPUを上げることができるだけに、まんざらでもないはずだ。
実際、「使い放題」と言われても、一般的なユーザーで月に何十GBも使えるかといえば、かなり疑問だ。それよりも「使い放題と言われるとストレスなく安心して使える」という方にメリットを感じる人も多いはずだ。
3キャリアは5Gの導入に向けて単価の高い「使い放題」にシフト。総務省が狙う値下げ方向とは逆の道を進むことになるだろう。
楽天はスーパーホーダイのような制限のある使い放題ではなく、真の「使い放題」を提供できるのかがカギとなっていきそうだ。
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