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Huawei、“世界初”をうたう5Gプロセッサ「Kirin 990」を発表 Mate30シリーズに搭載IFA2019(1/3 ページ)

IFA2019の基調講演に、Huaweiのリチャード・ユー氏が登壇。5G対応のプロセッサ「Kirin 990」を発表した。19日に発表予定の「Mate30」シリーズに搭載される。AppleのAirPodsに対抗するワイヤレスイヤフォンも発表した。

 9月6日、ドイツ・ベルリンにて世界最大級に家電展示会「IFA2019」が開催された。オープニング・キーノート(開幕の基調講演)には、Huaweiのコンシューマー・ビジネスグループのCEO、リチャード・ユー氏が登壇。「5G:An Opportunity to Rethink Evolution(5Gは進化を再考する機会)」というテーマで講演を行った。

 講演の内容は、Huaweiが次期モデルから導入する、最新のプロセッサ「Kirin 990」の発表が中心で、グローバルで年内に発売する新製品もプレゼンテーションし、基調講演というよりは新製品発表会という趣だった。

世界初の5G対応プロセッサ「Kirin 990」を発表

 リチャード・ユー氏は、まずHuaweiがAI対応のプロセッサ「Kirin 970」と「Kirin 980」をリリースに、モバイルAIをリードしてきた実績をアピールする。

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2017年のIFAではKirin 970を発表、2018年はKirin 980を発表し、AIの処理性能をアピールした

モバイルAIは、既にスマートフォンの幅広いアプリケーションで応用されている

 端末上のAIとクラウドのAIを連携させるが、「リアルタイム」とはいえない従来の技術を「Mobile AI 1.0」と定義し、これからは、5Gを組み合わせた「Mobile AI 2.0」となり、時差なく、リアルタイムでクラウドと同期できるようになると説明した。


5Gの高速通信によって、端末とクラウドがリアルタイムで連携

 Huaweiは、既に「Balong」という5Gのプロセッサをリリースしている。他社の5Gプロセッサが、4G向けのプロセッサと組み合わせて使うNSA(Non-StandAlone)であるのに対して、Balongは単体でも機能する優位性をアピールした。


5Gチップにおいて、他者をリードしていることを主張

 そして「世界初のフラグシップ5Gプロセッサ」として発表されたのが「Kirin 990 5G」だ。7nmプロセスとEUV(極端紫外線リソグラフィ)を用いて製造され、103億のトランジスタを搭載する。前モデルのKirin 980は68億トランジスタなので約1.5倍増した形だ。5Gモデムを内蔵し、GPUが10コアから16コアに増え、AI関連のデータを処理するNPUにも電送効率を上げるコアが追加したという。


Kirin 990 5Gの主な仕様。4つの「世界初」を実現している

 Kirin 990 5Gは、5Gモデムを内蔵するプロセッサなので、他社に比べて大幅な小型化が図られているという。5Gでの通信速度はダウンロードが最大2.3Gps、アップロードは最大1.25Gpsに達する。従来のプロセッサに比べてパフォーマンスが大幅に向上することに加えて、電力効率も向上しているという。


オールインワンのプロセッサのため、他社の5Gチップより36%も小さくできたという

スピードテストやデータダウンロードなどのテスト結果も披露された

他社に比べて消費電力が少なくて済むメリットもアピール

 通信方式は2Gから5Gまでをカバーしている。2枚のSIMを挿して使う場合、1枚目は5Gまで、2枚目は4Gまでが使える。つまり、5Gのデータ通信と4GのVoLTEを併用できる仕組みだ。


5Gデータ+4G VoLTEの利用が可能

 NPUは、前モデルのKirin 980と同様に2つのBig-Core(大きなコア)で構成されるが、さらに新しいTiny-Core(小さなコア)が追加され、伝送の効率が向上し、省電力にもつながるという。


Tiny-Coreの導入によって、データ伝送の効率がよくなるイメージ。AI関連の処理が速くなるという

NPUの進化によって、リアルタイムの映像処理が素早く行えるイメージが紹介された

人物だけがスキャンされて……

異なる背景に合成するといった処理もスピーディーに行える

 データ処理の中核となるCPUは、2.86GHz×2コア、2.36GHz×2コア、1.95GHz×4コアという構成。競合他社とのベンチマーク比較を掲示し、性能が大きく上回っていることを強調した。また、世界初の16コアのGPUと「スマートキャッシュ」機能により、グラフィック処理のパフォーマンスと電力効率も向上しているという。


8コアCPUのスペック

CPUの性能も、QualcommのSnapdragon 855を大きくリードしているとアピール

Kirin 980では10コアだったGPUは、16コアに強化された

スマートキャッシュは速いレスポンスが求められるゲームなどの有効

 画像処理を行うISP(イメージシグナルプロセッサ)は第5世代に進化。特に強化されたのはノイズリダクションだ。静止画だけでなく、動画のノイズリダクションにも対応。AIとの連携により、人物の顔の補正などもスピーディーに行われるという。


静止画の画質が向上。ディテールまで表現できるようになる

動画のノイズリダクションのイメージ

AIによるビューティー補正が行われるプロセスを動画で説明

 なお、Kirin 990は4G向けのモデルもあり、出荷国やモデルによって使い分けるという。そして、既に公表済みではあったが、Kirin 990を搭載する「HUAWEI Mate 30」シリーズを9月19日にミュンヘンで発表することをあらためて予告した。


Kirin 990 5GとKirin 990のスペックの差分

これでもかというほどに、Qualcommに対する優位性を強調

Kirin 990を搭載するHUAWEI Mate 30シリーズの発売を予告
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