「ゆずるね。」と「500kbps使い放題」で差別化を図るmineo 目指すはシェア10%
オプテージが、MVNOサービス「mineo」の新サービス「ゆずるね。」と「パケット放題」を発表した。2つのサービスはどんな狙いがあるのか。契約数が鈍化する中で、mineoはどう差別化を図っていくのか。
オプテージが、MVNOサービス「mineo」の新サービス「ゆずるね。」と「パケット放題」を発表した。ゆずるね。は、12時~13時のデータ通信を使わない宣言をすることで帯域の混雑を緩和させ、特典がもらえるサービス。パケット放題は、高速通信をオフにした際の速度を500kbpsに上げるオプションサービス。これら2サービスは、どんな狙いで提供するのか? モバイル事業戦略部長の福留康和氏が説明した。
2019年のmineoは、ファン(ユーザー)とのつながりを深め、共にサービスを作っていく「共創戦略」を強化してきた。その核となるサービスとして、ファンと共に新サービスを作る「共創アンバサダー」、ユーザーがスマホや通信サービスの使い方を教える「サポートアンバサダー」、mineoに紹介したユーザー数の実績に応じた電子マネーギフトをプレゼントする「紹介アンバサダー」を展開している。
共創アンバサダーには25人が就任して、58案件で意見交換を行った。サポートアンバサダーでは11人が就任して65件をサポートした。紹介アンバサダーを介したmineo加入率は約3割に上る。
こうした取り組みが功を奏し、競合他社と比べ、ユーザーと共にサービスを作り上げているイメージが高いという調査結果も出ている。またmineoを単独で検討する“指名買い”の比率が、2018年9月の15%から、2019年9月には27%に向上した。
2020年はこの共創戦略をさらに深め、オプテージは「共創と共想を深化させる」と表現する。「共想」は「共に想う」を意味する造語で、パケットをユーザー間で共有できる「フリータンク」に続く、ユーザーの「譲り合い、助け合い」を体現する新たなサービスを増やしていく。その1つがゆずるね。だ。
MVNOサービスは、ユーザーが集中する12時~13時に、極端に通信速度が低下する傾向にある。だからといって無尽蔵に帯域を増強するとコスト増になり、収支のバランスが崩れてしまう。そこで、快適さと価格のバランスを取るべく考案したのが、ゆずるね。というわけだ。ゆずるね。の構想は、コミュニティーサイト「マイネ王」の「アイデアファーム」や、共創アンバサダーとの座談会で挙がっていたという。「ユーザー同士で譲り合いができるのは業界初、mineoじゃないとできない」と福留氏は胸を張る。
ゆずるね。によって、どのぐらい帯域が空き、快適になるのかが気になるところだが、「現時点で示せる数字はない」と福留氏。「毎日5万人程度の方にご利用いただけると想定しているが、われわれが帯域の制限を掛けるわけではないので、どのぐらいの方が成功するか、宣言した方々の普段の使い方による。(12時~13時に)日頃から使っていない人が宣言する人もいれば、日頃はヘビーに使って宣言する人もいる。サービスを始めた上で数値を見ていきたい」(同氏)
ゆずるね。では、宣言してから12時~13時のデータ通信量が数MB以内だと成功し、1MB以下なら確実に成功する。宣言は毎日する必要があり、「来週1週間は海外に行くからまとめて宣言したい」といったことはできない。「思いやりの気持ちを持ってやってほしいので、日々、ゆずるね。ボタンを押していただきたい」と福留氏は説明する。サービス名も当初は「ゆずるね!」が候補だったそうだが、「『!』があると押しつけがましくなってしまうため、手紙を送るようなイメージで『。』を付けた」と同氏。
もう1つ、2020年に強化するのが「ベース価値の追求」で、その1つとして提供するのが、500kbpsのデータ通信が使い放題になるパケット放題だ。2019年6月に先行トライアルとして実施した「mineoスイッチ増速ウィーク」の評判がよかったことから正式サービス化が決定。また、このトライアルでは13万ユーザーが利用し、その際にトラフィックの負荷は検証済み。正式サービス化でトラフィックが増えても現実的な範囲で増強でき、大きな影響がないよう設計しているという。
パケット放題はプランに組み込んでいるのではなく、オプションサービスとして提供しているので、データSIMと音声SIMのどのプランとも組み合わせられる。また、mineoアプリで節約スイッチをオフにすれば、高速通信が可能になるので、必要に応じて高速か低速(500kbps)か使い分けられるのも便利だ。
なお、トライアルでは1Mbpsのコースも提供していたが、1Mbpsのパケット放題は、現時点では予定していない。1Mbpsで使い放題にすると「値段が倍以上(700円以上)になる」(福留氏)ため、そこも踏まえて、ユーザーの声を聞いていくとした。
もう1つ、ベース価値を上げる取り組みとして、同社が「業界最安水準」をうたう大型キャンペーンを展開する。月額料金から800円を6カ月間割引、データ容量を6カ月間1GBプラスすることで、音声SIMで4GBのデータ通信が6カ月間、月額710円から利用できる。
mineoの契約数は、2018年に100万を超えてから鈍化しており、現在は約117万回線にとどまっている。モバイル事業戦略部 モバイル事業戦略チーム チームマネージャーの太田範氏は「キャリアの安価なプランの影響も大きい」と話す。オプテージは、2020年度までにmineoの契約数を200万にまで伸ばすことを計画していたが、こちらは見直し、「現段階では、シェア10%以上を目標にしている」と福留氏。MM総研の調査によると、2019年9月時点でmineoのシェアは8.3%。まずはここから1.7%を上積みしていくことが当面の目標となる。
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