法人市場を“クラウドSIM”で開拓、テレワーク需要にもマッチ 「DoRACOON」の狙いを聞く:MVNOに聞く(2/3 ページ)
DoRACOONは、クラウドSIM内蔵端末、回線、ソリューションがセットになったサービス。オフィスや店舗に必要な回線や、中小規模の会社の内線子機、テレワークや出張時のネット回線として利用できる。固定回線のバックアップや、内線子機としての利用を想定している。
スマートフォンの受注比率が増えている
―― 7月にサービスを開始してから、手応えはどの程度ありますか。
滝氏 (サービス開始と)並行して進んでいる商談が多くありますが、先行しているのは、リモートワークの環境構築のところでのモバイルWi-Fiルーターです。一方で、NTT西日本と連携して商材の中に組み込んでいただいているのが、スマホタイプです。ビジネスフォンの子機として組み込む提案が多く、受注比率でいうと、スマホの「jetfon S20i」が増えています。
吉田氏 スタートアップのように急激に事務所が大きくなると、その都度工事するのはものすごくお金がかかる。その都度固定電話の配線をし直さなければならないので、移動させるコストが非常に高くなります。クラウドPBXはアメリカ由来ですが、内線をなぜ固定にするのか、無線でいいじゃないかという発想です。
スマホが増えているのも、テレワーク増加の影響があります。テレワークで事務所にいなくても、事務所と同じ環境を作れるからです。固定電話の番号にかかってきても、かけた相手に分からないように、自宅のスマホが鳴る。テレワーク事情に一番合ったソリューションだと思います。
滝氏 中小企業で、会社の名前が売れているわけではないようなところの場合、電話番号が信用になっていることがまだまだ多いのが実情です。営業マンが携帯電話の番号を名刺に入れることは比較的浸透していますが、会社としてはやはり固定電話の番号があった方が安心できます。
吉田氏 ただし、携帯電話の番号が必要なくなるかというと、それも違います。この端末はSIMフリーなので、(内線とは別に)ドコモ、au、ソフトバンクのSIMカードを入れて事務所や自宅で使うこともできます。
光回線を設置しづらい環境で据え置き型ルーターが有効に
―― 据え置き型の端末は、今までのクラウドSIM端末にはなかったものですね。
吉田氏 はい。クラウドSIM対応のWi-Fiルーターには、マルチインタフェースを持っているものがありませんでした。この端末には、LANポートやUSBコネクター、Wi-Fiと3つのインタフェースがあります。LANやUSBは用途がかなり広い。例えばサイネージだと、サイネージのコントローラーがあり、そことはUSBなりLANなりで接続するのが一般的です。用途もその方が広がりますからね。バックアップ回線として使えるマルチインタフェースのクラウドSIM対応Wi-Fiルーターは、恐らくこれが世界初になります。
滝氏 他にも監視カメラの場合、マンションに有線のインターネットは引き込んでいても、そこから伸ばして設置しようとすると、ケーブルを伸ばすだけで敷設のコストが結構上がってしまいます。そういったところに使わせてくれないというご相談をいただくこともあります。
吉田氏 光回線は大きなトラフィックを運ぶのにはいいのですが、設置しづらい環境もあります。例えば駐車場のような屋外だと、ケーブルが切れてしまうこともある。そういった意味で、今後の需要はかなり増えてくると思っています。実際、私がNTTコミュニケーションズにいたときにも、警備関係のISDNパケットシステムを、MVNOのモバイル回線で巻き取ったことがあります。無線で大丈夫かと言われましたが、つながれば問題ない。お店に来て、スイッチを押し、お店が開いたという情報を警備会社に送り、閉めたときにもう1回ボタンを押すだけなので、そこに光回線の料金を払うのかという問題もありました。
―― 据え置き型以外にも2タイプの端末がありますが、これらはMAYA SYSTEMから調達しているのでしょうか。
吉田氏 ルーターはシャープの工場で作ってもらいましたが、完全に国内製です。必要な部品を(クラウドSIMを提供する)uCloudlinkに提供してもらい、回路などの設計は全てシャープにお任せしています。今は(米国の)エンティティリストに入っている企業のものを使えない会社もあるため、部品も1つ1つ調べて、中身に入っていないことまで確認しています。スマホの製造は中国ですが、部品メーカーは同様に全て確認しています。
滝氏 MAYA SYSTEMはメーカーの顔も持っているので、機器は安心して調達できます。
吉田氏 そういう意味では、FREETELが役に立っています。技術的なところは彼らがチェックしているので、安心していただければと思います。
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