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ahamo、povo、LINEMOにキャリアメールは必要か――サービス設計思想に総務省がダメ出しするのはアリなのか石川温のスマホ業界新聞

総務省の「スイッチング円滑化タスクフォース」において、MNPを活性化する方向案が示された。キャリアメールの持ち運びをMNOのオンライン専用プラン(ブランド)にも対応させようとしているのだが、総務省がそこまで「口出し」すのはアリなのだろうか……?

 2月26日に開催された総務省「スイッチング円滑化タスクフォース(第5回)」では、キャリアメールの持ち運びについてもテーマにあがった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年2月27日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。

 キャリアメールの持ち運びについては送受信ともに一定のニーズがあることは理解できる。しかし、議論をするのはあまりに遅すぎやしないか。本来であれば、MNPが開始される時から同時に導入すべき事案である。

 今回、理不尽だと感じたのが、3月から開始となるahamo、povo、LINEMOに対してもキャリアメールを利用可能とすべきとしたことだ。

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 すでに開始まで1ヶ月を切った段階で、このような無理難題を吹っかけてくるのは、あまりにたちが悪い。

 そもそも、ahamoは、NTTドコモの若手社員が企画し「今時の若い人はメールなんて使わない」という意見から、キャリアメールが排除された。井伊基之社長は「キャリアメールはあったほうがいいんじゃないか」という意見だったようだが、若手社員の考えを尊重して、キャリアメールの導入を見送った。

 また、井伊社長が総務省にahamoのお伺いを立てに行ったときも総務省の官僚から「キャリアメールをやらないなんて、ahamoはサブブランドじゃないのか」と突っ込まれたようだが、井伊社長は頑なに「サブブランドじゃない。キャリアメールはやらない」と押し切ったという。

 つまり、キャリアメールをやらないというのは、最もユーザーに近い立場にいるNTTドコモの若手社員によるコンセプトであり、井伊社長や総務省の官僚といった「メインターゲットから遠い人たち」が、とやかく言うべきではないのだ。

 総務省では、MNP転出前の事業者がメールアドレスを管理する「変更元管理方式」を導入させようとしている。

 キャリア3社によれば、システム開発に平均1年かかるため、2022年夏頃の提供が現実的だとされる。

 結局、キャリアがキャリアサービスをオープン化し、月額課金によって提供。PCやスマホのメールアプリで設定すれば、どの環境でも送受信できるようになるだろう。

 つまり、MVNOだろうがオンライン専用プランだろうと、関係ないわけで、このタイミングでahamoやpovo、LINEMOを名指しして「キャリアメールを使えるようにしろ」というのは理解に苦しむ。

 特にLINEMOに関しては、LINEでのメッセージを使いこなしている人向けのサービスだけに、なぜ、キャリアメールが使えるようにしなくてはいけないのか。

 既存のメインブランドの料金プランは「キャリアメールやApple Watchなどいろんな機能が使えるから高い」のであって、オンライン専用プランは「シンプルでわかりやすく、余計なものがないから安い」という、大前提を改めてユーザーに理解してもらう必要があるのではないか。

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