本社と2年がかりで実現 モトローラが「moto g52j 5G」でおサイフケータイ対応を果たせた背景(1/3 ページ)
モトローラがオープン市場で発売した「moto g52j 5G」は、待望のおサイフケータイに対応した。一般的に、おサイフケータイや防水・防塵に対応すると、そのぶんだけ製造コストは上昇するが、3万9800円という価格を実現した。なぜ、このような価格でmoto g52j 5Gを発売できたのか。また、moto g52j 5Gは日本でのラインアップの中で、どう位置付けられているのか。
オープンマーケットで徐々に増えているおサイフケータイ対応モデルだが、モトローラも、ついに同機能に対応したスマートフォンを発売した。それが6月3日に発売した「moto g52j 5G」だ。この端末は、ほぼゼロベースで日本仕様を取り込んだ1台。ベースとなるグローバル版を大幅にカスタマイズして、おサイフケータイだけでなく、IP68の防水・防塵(じん)に対応した。お察しの通り、型番の「j」は「Japan」を意味している。
一般的に、おサイフケータイや防水・防塵に対応すると、そのぶんだけ製造コストは上昇する。同一モデルを、日本以外の国や地域に展開しづらくなるからだ。コストパフォーマンスの高さを売りにしていただけに、モトローラにとっては悩ましい選択だった可能性がある。ところが、同モデルは3万9800円(税込み)とリーズナブルで、グローバル版の「moto g52」とそん色ない価格が設定されている。
なぜ、このような価格でmoto g52j 5Gを発売できたのか。また、moto g52j 5Gは日本でのラインアップの中で、どう位置付けられているのか。おサイフケータイ対応モデルを継続的に投入していけるのかも、気になるポイントといえる。こうした疑問を、モトローラ・モビリティ・ジャパンの代表取締役社長を務める松原丈太氏にぶつけた。松原氏には、同時に発売された「motorola edge 30 PRO」の話や日本市場での戦略も尋ねている。
社長に就任した2年前からおサイフケータイの要望を出していた
―― 満を持してのおサイフケータイ対応モデルですが、まずは導入のいきさつを教えてください。
松原氏 私が社長に就任したのは2年前の2019年ですが、そのときから、これは是が非でもやってもらわないと日本ではテークオフしないと(本社に)言い続けてきました。本社のチームもそれは分かっていて、ぜひやりましょうという話は出ていました。そこからいろいろなスタディーに入り、やっとここまできたということです。2年という時間は大体想定通りでした。
―― なるほど。就任直後から要望は出し続けていたということですね。
松原氏 やはりグローバルのいいところを取り込みながら、日本独自の機能を入れなければ消費者に認められません。そういう話は、ずっとしてきました。
―― 一方で、日本仕様を入れてしまうと、グローバルのコストメリットが生かしづらくなると思います。本社側に抵抗はなかったのでしょうか。
松原氏 やはりそこはありますね。開発リソースにも限りがある中、日本限定になってしまう端末があるのはメーカーとして悩ましいところです。ただ、モトローラはが日本市場をきちんとやっていくという方向性は既に決まっていました。これは私が言うまでもなく決まっていたので、そうですよねという感じで。最初からやる、やらないの議論ではなく、どうやればできるのかという議論になりました。やった以上は日本でちゃんとテークオフしてくださいということで、ジャパンチームとして借りができている状態です。それも決めていたことなので、後はやりきるだけです。
―― この端末はミッドレンジですが、やはり台数が出る端末の方が、1台あたりのコストを抑えられるということなのでしょうか。
松原氏 そこは大きいですね。グローバルで端末が出てから開発を始めると、旬を過ぎてしまいます。そこそこのタイミングで出すにはどうすればいいのかということもあり、いろいろと議論しました。
グローバルモデルとは「全くの別物」
―― とはいえ、moto g52も4月に発表されています。今回はタイムラグが少なかったのではないでしょうか。
松原氏 今後はもっとグローバルとシンクロさせていかなければならないと考えています。まだまだ足りないというのが本音ですね。スマートフォンのコンポーネントは、どんどん進化しています。最新なものを旬なタイミングで出すのは、どのマーケットでも重要視されていること。日本には独自のサーティフィケーション(認証)があり、どうしてもタイムラグができてしまいますが、moto g52j 5Gに限らず、他の端末もできるだけ同時期と考えています。
―― ミッドレンジは他にもありますが、moto g52を元にしたのはなぜですか。
松原氏 お求めやすい5G端末で、かつ5Gだとこういうことができると思ってもらいやすい大画面を搭載していたからです。NetflixやYouTubeをスマートフォンで見る方は、どんどん増えています。そういった面で、5Gを表現しつつお求めやすい。それに道具としてのFeliCaや防水が載っていれば、非常に使いやすいものになります。全ての用がこれ1台で足せますからね。小さいのと大きいのは悩むところでしたが、これも5Gの1つの形だと思っています。
―― ただ、moto g52は5Gに対応していません。その部分も変更したのでしょうか。
松原氏 実は、ベースになっているのは「moto g51 5G」という5G端末です(ただし、プロセッサはSnapdragon 480 Plusで、こちらも厳密にはスペックが異なる)。その意味で、全くの別物になっています。どのモデルとも違う、moto g52j 5Gに仕上がりました。
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