マイナンバーカード機能のスマホ内蔵で何が変わる? 「誤解」と「期待されること」(1/3 ページ)
マイナンバーカード機能のスマートフォンへの内蔵が、2023年5月11日に実現することが決まった。パスワードレスのログインやオンラインでの本人確認などに使うのが主な目的。行政手続きや民間サービスの登録など、さまざまなサービスを使いやすくすることを目指す。
マイナンバーカード機能のスマートフォンへの内蔵が、2023年5月11日に実現することが決まった。10月13日の会見で、デジタル庁の河野太郎デジタル大臣が表明した。今後、搭載に向けた準備を進めていく考えだが、マイナンバーカード機能を搭載することで、スマートフォンで何ができるようになるのか。
マイナンバーカードを使わずに安全・簡単にパスワードレスのログイン
国が推進するマイナンバーカードだが、マイナポイントによる普及施策が第1弾、第2弾と続いたことで申請数が増加。交付数はようやく6253万枚、普及率は49%(10月12日時点)を超え、ほぼ国民の半数が持つようになった。それでも、国民のほとんど全員が保有することを目指している政府は、さらなる施策で普及を加速させていきたい考え。
その一環となるのが、「スマートフォンへのマイナンバーカード機能の搭載」。マイナンバーカードがなくてもその機能の一部をスマートフォンで実行できるようになることによって利便性が向上すれば、マイナンバーカードの普及につながるというのが政府の見立てだ。
利便性の向上としては、例えば安心安全なパスワードレスのログインが実現できる、というものが挙げられる。
そもそも注意が必要なのは、今回の施策は「マイナンバーカード機能の一部がスマホに内蔵される」というもので、マイナンバーカード自体が搭載されるわけではないという点だ。券面をスマホ画面で表示するなどしてオフラインの身分証明書として使う、といったことはできない。パスワードレスのログインやオンラインでの本人確認などに使うのが主な目的だ。
一例としては国のオンラインサービスとしてマイナポータルがあり、住民票を取得するといった地方公共団体の行政手続きをオンライン申請したり、行政機関が保有する自分の情報の確認をしたり、マイナンバーカードの健康保険証利用の登録、公金受取口座の登録といった機能が利用できる。
このマイナポータルにログインするには、マイナンバーカードと、カード発行時に登録した4桁の暗証番号を使う。IDやパスワードは不要で、スマホからであればマイナポータルアプリをインストールし、マイナンバーカードをかざすだけでログインできるようになる。
これは、マイナンバーカードの電子証明書が国民一人一人で異なり、ログインした人と別の人が明確に区別できるため、会員を区別(認証)するためのIDやパスワードが不要だからだ。以降は、「同じマイナンバーカード(の電子証明書)でログインしている」ことを識別している形だ。
これは現在、IDとパスワードの組み合わせで行っている一般的な認証の代わりとなるものだ。LINEやGmailなど、さまざまなサイトがユーザー登録を求めるが、個別のIDを決めて、他と重複しないパスワードを設定する必要がある。サイト側はその組み合わせで個人を識別する。サイトごとに異なる設定になるので、パスワード管理ツールなどを使わないと覚えるのは不可能だ。
マイナンバーカードの仕組みであれば、そうした設定は不要で、理論的にはどのサイトでもマイナンバーカードと4桁の暗証番号があればログインできるようになる。これならIDとパスワードに悩まされることはない(ここでは、そこで発生するデメリットには触れない)。
これは、マイナンバーカードのICチップ内に電子証明書が保管されてログインに使用されているからだ。この電子証明書をスマホ内に保存できるようにする、というのが、「マイナンバーカード機能のスマホ内蔵」だ。
現時点ではマイナポータルの他は、e-Tax、ねんきんネット(日本年金機構)、MyPost(日本郵便)など、かなりログイン先は限られている。これを民間企業の利用にも拡大するのが政府の方針だ。
スマホに電子証明書が内蔵された場合、カードが不要になり、スマホの生体認証を使うので、4桁の暗証番号も不要。例えば毎回SMSの2段階認証を使うようなサイトでも、指紋認証(と電子証明書)だけでログインできるようになるだろう。
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