ドコモに聞く新料金「irumo」の狙い 矛盾しているように見える仕様にはワケがあった(1/3 ページ)
ドコモが導入した新料金プランのうち、注目度が高かったのが、他社のサブブランドに対抗できる「irumo」だ。一方で、OCN モバイル ONEに料金体系が近かったこともあり、実質的な値上げとの評価も聞こえてくる。サービス開始から約1カ月がたち、どのような傾向が出ているのか。ドコモに聞いた。
ドコモが鳴り物入りで導入した低料金ブランドの「irumo」や、ギガホ・ギガライトを刷新した「eximo」は、賛否両論を巻き起こしながら、大きな話題を集めた。中でも注目度が高かったのは、他社のサブブランドに対抗できる料金プランのirumoだ。主力となるデータ容量を3GBに据えつつ、ドコモ光とのセット割やdカードお支払い割を組み合わせると、月額料金は880円(税込み、以下同)まで下がる。
一方で、OCN モバイル ONEに料金体系が近かったこともあり、実質的な値上げとの評価も聞こえてくる。OCN モバイル ONEとは異なり、ドコモ光がある程度前提になった料金プランだったからだ。セット割は他社のサブブランドでも導入しているものの、OCN モバイル ONEを引き継いだような料金体系だったこともあり、比較対象がMVNOになってしまったきらいはある。
とはいえ、これはあくまでネットを中心にした前評判にすぎない。他社のサブブランドがユーザーからは好評なことを踏まえると、irumoが評価される可能性も高い。では、サービス開始から約1カ月がたち、どのような傾向が出ているのか。irumoを導入した経緯や狙いとともに、その反響をドコモに聞いた。インタビューには、ドコモの営業本部 営業戦略部長の山本明宏氏と、営業本部 営業戦略部 料金戦略担当主査の古川拓人氏が答えた。
ドコモは小容量のプランがずっと「高い」と言われていた
―― 最初に、irumoを提供するようになった理由や狙いを教えてください。
山本氏 小容量の料金プランに関して、ドコモはずっと「高い」と言われていました。ギガライトはありましたが、それで十分小容量のニーズがカバーできていない反省があった。世の中を見ても、3GB未満の方は半数ぐらいいて、かなりの方がご不満をお持ちだったと気付きました。ドコモとしても、2021年にはエコノミーMVNOを始め、MVNO各社と組んで対応はしていました。ただ、ポートイン側はあったのですが、ポートアウトに課題がありました。いよいよドコモとしても対応すべきではないかと議論し、irumoを導入しています。
―― エコノミーMVNOでも、他社からはユーザーを獲得できていたということですね。
山本氏 一定数は取れていました。メインになっていたのは、OCN モバイル ONEです。(irumoを導入した)今もエコノミーMVNOは続けていますが、どちらかといえば、特徴的な料金を出すところが残っています。お子様の見守りに強いトーンモバイルや、シニアで通話を重視したLIBMOなど、ニッチなシーンにお応えしていく側面があります。逆に、OCN モバイル ONEはどちらかというとターゲットが広く、(ポートインの)ボリュームゾーンでした。
―― irumoですが、そのOCN モバイル ONEに近い0.5GBプランがあり、かなり踏み込んできた印象を受けました。なぜこの容量を用意したのでしょうか。
山本氏 そこは議論しました。irumo自体は3GB未満の方に対応するため、3GBを中心に考えたプラン構成にしています。その途中で、NTTレゾナントの合併の話があり、OCN モバイル ONEの知見も生かそうということで、チームにジョインしてもらいました。OCN モバイル ONEの500MBコースはエコノミーMVNOでかなり好評で、そうであればわれわれも出そうじゃないかとなりました。ユーザーニーズがかなりあることは(OCN モバイル ONEで)証明できていたんです。
―― なるほど。先にirumoがあり、レゾナントの合併やOCN モバイル ONEの合流は後からだったんですね。
山本氏 われわれはキャリアなので、料金プランに関する議論はずっとしています。大体2、3年ごとに新しい料金プランが出ていますが、競合関係も見ながら、検討は常にしています。
OCN モバイル ONEの料金体系も参考しつつ、6GBや9GBも導入した
―― 0.5GB以外のデータ容量も3GB、6GB、9GBで、OCN モバイル ONEに近いと思います。この点も参考にしたのでしょうか。
山本氏 順番として、3GBをメインに考え、0.5GBの議論をしました。その上になるとahamoが20GBのため、3GBだけだとアップセル(上位の料金プランへの変更を促すこと)がしづらい。きめ細かにニーズにこたえるためには、“間”が必要ではないかとなりました。OCN モバイル ONEの料金体系も参考しつつ、6GBや9GBも導入しました。あまり増えすぎてしまうと複雑に見えてしまうので、4つぐらいということでこのようになっています。それでも多いのですが、きめ細かさとシンプルさを両立させました。
―― データ容量が3つであれば、他社のサブブランドも同じなので、比較的シンプルに見えたのではないでしょうか。0.5GBは速度も違いますし、別枠という見せ方でよかったのではと思いました。
山本氏 0.5GBは他キャリアのユーザーで、データ通信を抑えているに来ていただくためのプランです。ドコモユーザーに積極的にそちらに行ってほしいというメッセージではありません。その意味では、確かに平等に見せすぎてしまった気はしますね。
―― 他社のサブブランドの場合、3GBの上は15GBで一気に容量が上がります。対するirumoは小刻みで、最大が9GBです。これはなぜでしょうか。
山本氏 3GB未満の方が半数以上いらっしゃる一方で、10GB以上の方が少ないからです。(データ容量は)小容量のユーザーのニーズにきめ細かにこたえるirumoというコンセプトで議論をしました。確かに、3GBずつ上がっていくのは小刻みに見えるかもしれませんが、きめ細かにお応えしたいという思いがあります。
関連記事
ドコモの新料金「irumo」を冷静に分析 「分かりにくい」「改悪」以上に大きいインパクト
ドコモが7月1日から新料金プランを提供する。小容量プラン「irumo」の狙いは、UQ mobileやY!mobileといった、他社のサブブランドに対抗することだ。eximoからは、ユーザーのデータ使用量が増加するタイミングに合わせ、ARPUを上げていきたい狙いが透けて見える。「ドコモはセカンドブランドで負けている」「最大の売りは高い回線品質」 NTT島田社長がコメント
NTTの島田明社長が2023年度第1四半期決算会見で、NTTドコモの新料金プランについて言及した。他社のセカンドブランド(サブブランド)で負けているとの認識で、「irumo」で巻き返しを図る。小容量帯のプランを提供してもARPUは下がらないとの見通しも示した。ドコモが月額550円からの新料金「irumo」で低容量にテコ入れする理由
NTTドコモが6月20日にプランの再編を行い、特に低容量プランを強化した。全て7月1日から提供する。なぜドコモがサブブランドを新設せず、プランの再編を行ったのか? 発表会で語られた。ドコモの新料金「irumo」のお得度を検証 Y!mobile/UQ mobileより安いケースが多いが注意点も
ドコモが7月1日から提供を始める「irumo」を、他社プランやahamoと比較してみる。最初はあまりいい印象を持っていなかったが、OCN モバイル ONEの後継プランではなく、ドコモの低容量プランと捉えると納得がいきそうだ。新規受付停止「OCN モバイル ONE」の今後は? ドコモの「irumo」に乗り換えるべきなのか
irumoは、NTTレゾナントが提供している「OCN モバイル ONE」の後継に位置付けられるサービス。OCN モバイル ONEはまだ利用できるとはいえ、新規受付を停止したことで、このまま使い続けていいのか不安を感じている人もいるだろう。OCN モバイル ONEとirumoの違い、OCN モバイル ONEの今後についてまとめた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.