INFOBARスマホはもう出ない? 「INFOBAR大百科展」で振り返る“デザインケータイ”の20年(1/3 ページ)
KDDIは東京都多摩市にある「KDDI MUSEUM」で、「INFOBAR 大百科展」を開催する。期間は10月30日~2024年1月19日。初日となる30日、au Design projectや、iidaブランドの製品を企画してきた事業創造本部 Web3推進部 エキスパートの砂原哲氏がINFOBARの秘話や、今後を語った。
KDDIは東京都多摩市にある「KDDI MUSEUM」で、「INFOBAR 大百科展」を開催する。期間は10月30日~2024年1月19日。入場料は一般が300円で、大学生以下は無料だ。展示物が一部のメディアに先行公開された。その初日となる30日、au Design projectや、iidaブランドの製品を企画してきた事業創造本部 Web3推進部 エキスパートの砂原哲氏がINFOBARの秘話や、今後について語った。
真っ黒の携帯電話とは真逆を行くデザイン
INFOBAR誕生前の90年代後半は黒を基調とする携帯電話が主流で、INFOBARのようなカラフルな本体は珍しかった。もともとはスマートフォンのように情報を確認できるようなタイプの携帯電話を目指していた。細長い本体にディスプレイが付き、そこからさまざまな情報を得られるようなコンセプトから、INFOBAR(情報のバー)という名称になった。
砂原氏は2001~2002年にINFOBARのコンセプトモデルが発表され、初代が発売された翌2003年当時をこう振り返る。「今でこそカルチャーやアートなどの発信地として語られることの多い渋谷だが、INFOBARが発売された2003年はハロウィーンの仮装すら流行していない時代だった。ルーズソックスの女子高生がたくさんいて、世はいわば女子高生ブームだった。ルーズソックスの女子高生がデコ電を片手に街を歩いていた」
一方、2000年代初頭は携帯電話のみならず、自動車や家電などのジャンルで、デザイン性に富んだ製品が渇望されていた時代でもあったという。デザイナーが携帯電話デザインを当たり前のように手掛けるのは珍しかったようだ。デザインのいいケータイが欲しい」と心に抱く人の要望に応えるかのように始動したのがau Design projectだったという。
「われわれからIDEO Japanの深澤直人さんにお声がけしたのが2001年2月。それから3カ月後にビジネスショーでコンセプトモデルの「info.bar」(インフォドットバー)を発表した。製品版では採用されなかったピンクを基調としたカラーもあった。われわれが六本木のAXISビルを訪ねたときにこのコンセプトを深澤さんに提案いただき、丸みを帯びたせっけんなど、マテリアル感のある触感も合わせて提案いただいた」(砂原氏)
このような経緯で誕生した初代はチョコバーのようなプロトタイプで、女子高生がキーの付け替えを楽しめ、ファッションアイテムの一部として、携帯電話を持つことを想定。それまで真っ黒なカラーがほとんどだった携帯電話に対して、真逆を行くポップなカラーをあえて採用したのがINFOBARだった。見た目は文字通り細長いバーにタイル形状のボタンが配置されたものだ。
砂原氏は「これが形になるまでに2年ほどかかり、そのメーカーに三洋マルチメディア鳥取が採用された。テンキーについては暗い場所での視認性を重視し、キーが光るようにした。外装の樹脂の加工が難しく、なおかつ光沢感を出すのに苦労した」と当時の苦労を語る。さらに、「案としてあった全5色の量産は難しく、最終的に3色展開となった」と話す。結果として赤を基調とした「NISHIKIGOI」、白と黒(市松模様)を基調とした「ICHIMATSU」、シルバーを基調とした「BUILDING」の3種類が用意された。
初代の発表会はモデルがINFOBAR本体を持つような、「今となっては少なくなった展示手法」(砂原氏)で行われ、INFOBARのユニークな面をアピールしていたようだ。
au Design projectはその後、「talby」や「MEDIA SKIN」など、さまざまな“名作”を生み出してきたわけだが、「INFOBARの象徴的なカラーであるNISHIKIDGOIが断トツの人気を誇る」とのことから、展示の中心をINFOBARに決めたようだ。その初代モデルは2003年の発売から4年後の2007年、デザイン性の高さ、そして独自性、個性が評価され、教科書や新聞などに掲載されたという。
この2007年に、初代の後継である「INFOBAR 2」が発売される。ディスプレイにサムスン電子製の有機ELを採用し、ワンセグやおサイフケータイ対応などいわゆる全部入りの携帯電話でもあった。「特にアメ玉のように丸みを帯びた小さい本体にワンセグのアンテナを詰め込むのに苦労した」(砂原氏)としている。その苦労が功を奏して「INFOBARで最も完成度の高いモデルとなり、3G停波まで長らく愛用してもらえた」そうだ。
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