タフネススマホ「TORQUE G06」は何が進化したのか その中身と「耐海水」の秘密を聞く(1/3 ページ)
京セラの「TORQUE G06」は、タフネススマートフォンとして現在も現役でありつづけるTORQUEシリーズの最新モデルだ。先代の「TORQUE 5G」からボディーが小型軽量となっただけでなく、カメラ機能も進化した。これら進化した点の詳細と、タフネスデバイスでは非常にまれな「耐海水」を掲げる理由を京セラに聞いた。
京セラの「TORQUE G06」は、タフネススマートフォンとして現在も現役でありつづけるTORQUEシリーズの最新モデルだ。先代の「TORQUE 5G」からボディーが小型軽量となっただけでなく、カメラ機能ではメインカメラの強化とマクロ撮影もカバーできる3眼構成などその実力は大きく向上した。
今回は、京セラ横浜事業所のTORQUE開発拠点においてこれらの機能向上の詳細だけでなく、日本のタフネスデバイスでは非常にまれな「耐海水」を掲げる理由と、耐海水のために必要となる堅牢(けんろう)性能について聞いた。
G06で求めたのは「軽量小型化」と「使えるカメラ」
京セラ 通信機器事業本部 通信事業戦略部 パートナービジネスユニット 事業開発課責任者でTORQUEのプロダクトマネジャーである長谷川隆氏は、「前機種のTORQUE 5Gにおいても耐久性を進化させたけれども、やはりサイズが大きくなりすぎた」というユーザーからのフィードバックに応える意味でTORQUE G06では軽量小型を目指したという。
加えて、ユーザーから「カメラの画質についても改善要望を多数いただいているような状況」だったという。「アウトドアにあまり興味のない ユーザーさんであっても、TORQUE G06を手に取っていただくことで、登山に行ってみようとか、マリンスポーツやってみようとか、そういったチャレンジを後押しできるような、“相棒”のような端末になれたらいいなと考えています」(長谷川氏)
軽量小型において、長谷川氏は従来モデルのサイズアップに要因としてディスプレイサイズの大型化を挙げる。例えばTORQUE G04では5型だったのがTORQUE 5Gでは5.5型となり、それに伴い本体サイズと重さもG04の約73(幅)×150(高さ)×13.4mm(奥行き、最厚部17.4mm)の約200gから約75(幅)×167(高さ)×14.8mm(奥行き、最厚部20.3mm)の約248gと変化している。TORQUE G06は約75(幅)×154(高さ)×14.6mm(奥行き)の約234gと縦方向に13mm小型となり重さも14g軽くなった。
TORQUE G06(右)は先代のTORQUE 5G(左)よりも高さが抑えられていることが分かる(2023年12月14日13時15分:初出時、キャプションの左と右が逆になっておりました。おわびして訂正いたします)
この小型化の実現のために京セラでは、従来取り外し式だったバンパーパーツを本体固定に変更した。これまで取り外し式としていたのは衝撃を吸収するパーツだけに傷つきやすく、傷ついたときの交換できるためだったが、固定式とすることで傷がついても交換できなくなる。そこで、バンパーの材質も衝撃を吸収できる柔軟に富む一方で傷がつきにくい強度を兼ね備える素材を選んでいる。
加えて、京セラ端末ソリューション事業部 第2技術部 第2技術課 2係責任者でTORQUEシリーズ機構設計を担当する遠山政利氏は「バンパーは衝撃を吸収する素材にしているが、柔らかすぎても問題がある。屋外での使用や耐油性、耐薬品性も考慮する必要があるので、いろんな材料を試しながら選んでいる」とバンパー素材の重要性と難しさを説明する。
本体の小型化はスピーカーから発する音質と音量にも影響する。意外かもしれないが、スピーカーの性能もアウトドアギアとしては重要だ。それは、野外においてメディアプレイヤーとして使う需要もさることながら、遭難時に自分の場所を救助隊に知らせるエマージェンシーホイッスル的な利用や、最近発生件数が増えているクマなどとの遭遇を回避する警告音としての利用では可能な限り大音量を出すことが求められる。
本体サイズの小型化はスピーカーのサイズも小さくなるため、再生音量が抑えられてしまうため、上記のような局面では不利になってしまう。遠山氏によると、TORQUE G06ではボックススピーカーを採用することで小さなサイズでも大音量が可能になるように工夫したという。「小さいスピーカーでも、大音量が出て、なおかつ、音質も向上しています。TORQUE G06本体の上下部分を小型化しても、デザインと音響とで、工夫して大音量を実現しています」(長谷川氏)
堅牢性を担保する「ローレット加工」テストの意義
もちろん、京セラが「高耐久性の進化を追求しなければならない。ここは、TORQUEのアイデンティティー」(長谷川氏)と述べる堅牢性能についても、TORQUE G06では新たな耐久テストを実施している。
スマートフォンは前面のほとんどを覆うディスプレイが検討性能におけるウイークポイントとなるが、TORQUEシリーズではディスプレイパネルの上に特殊素材のアクリルパネルと貼り重ねることで、傷つきにくさと破損に対する堅牢性を実現している。
その強度はスマートフォン、特にTORQUEシリーズのような堅牢性を訴求するモデルで競合モデルとの重要な差別化ポイントとして訴求することになる。その強度を示す指標の1つが、工場出荷時に実施する耐久テストの内容だ。俗に「拷問テスト」「トーチャーテスト」(Torture test)と呼ぶ。
TORQUE G06の発表会や製品資料で訴求していた「ローレット加工した金属への落下試験」も、そういった拷問試験として新たに採用した手法だ。従来はサンドペーパーの上に2メートルの高さから落下する手法を採用していたが、よりアウトドアの現状に即した、岩肌などに近似した状況を再現するため、凹凸加工=ローレット加工を施した金属資料の上に落下する試験を実施している。
この検証結果をもって京セラの開発スタッフは「保護フィルムを貼る必要はない」(京セラ 通信技術部 第1技術部 第4技術課責任者の山田陽士氏)と訴求する。ただし、タッチパネルの感度調整では、保護フィルムを貼った状況も想定してチューニングを施している。
カメラは約6400万画素に進化 3キャリアで使えるようバンドも幅広く対応
もう1つ、改善点として重視したのがカメラ機能だ。これまで2眼だったレンズにマクロ用レンズを加えた3眼構成にしてマクロ撮影に対応した。この強化については「特にアウトドアにおける虫眼鏡機能の利用が、オーナーズイベントでもかなり好評でした」と山田氏は言う。なお、マクロ撮影時に問題となる“撮影者の影”を防ぐために、LEDライトを2基装備し、影が映らない工夫も施した。
これもカメラ機能の改善点としてユーザーから要望が多かったメイン(広角)カメラの画質については、有効画素数をTORQUE 5Gの約2400万画素から約6400万画素と大幅に増やした。ただし後述の通り、記録画素数としては1600万画素になる。これは4つの画素を1画素として扱うことで1画素あたりの集光量を増やす「クアッドピクセルセンサー」技術を採用しているためだ。
TORQUE G06では対応するバンド帯域も従来モデルから大幅に増やした。これは、「登山される方だと、山はドコモさんが強いという理由で買わない方が多かった」(長谷川氏)という状況を解決するためで、TORQUE G06ではauのみならず、ドコモ、ソフトバンクなど国内主要キャリアが使用する全てのバンドに対応させた。その中にはドコモの5Gで運用する「n79」もある。日本固有のバンドのため海外のSIMフリースマートフォンでは対応していないモデルが多いため、日本のSIMフリーユーザーとしては貴重な選択肢の1つとなる。
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