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なぜ? マクドナルド「巨大セルフ注文端末」に批判殺到の理由 UI/UXに価格表示まで……直面している課題とは

マクドナルドが全国の店舗に導入している巨大な店頭注文用タッチパネルのUIに対しSNSで不満が噴出している。特に注文の最終段階まで合計価格が表示されない仕様が予算を意識するユーザーにとって大きな障壁だ。操作フローの煩雑さや視線移動の多さも課題でありモバイルオーダーの優れた設計の転用が期待される。

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 日本のファストフードチェーンの代表格であるマクドナルド。全国各地で多くの人々に親しまれ、日常的な食事の場として欠かせない存在となっている。近年、同社はDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進し、店舗運営の効率化や非接触型サービスの拡充に力を入れてきた。その一環として全国の店舗に導入が進んでいるのが、巨大な縦型の「店頭注文用タッチパネル(セルフオーダー端末)」だ。

 しかし、このいわゆる巨大セルフ注文端末に対して、SNSやインターネット上では連日のように不満や批判の声が上がり、大きな話題となっている。一部のユーザーからは「使い勝手が悪すぎる」「もう使いたくない」といった辛辣な意見も散見され、デジタル化の波と顧客体験(UX)の間に生じた深い溝が浮き彫りになっている。本稿では、ネット上で何が問題視され、どのような不満が噴出しているのかを踏まえながら、今後求められるUI(ユーザーインタフェース)の工夫や改善点について考察する。

Acrelec グローリー
セルフサービス機器の開発・製造・販売などを手掛けるグローリーが2020年に子会社化を発表したフランスのAcrelecはセルフ注文端末の世界的な大手企業だ。マクドナルドなどの大手飲食チェーンへキオスク端末を納入している(出典:「フランスAcrelec Group S.A.S.の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」)

何がネット上で話題になっているのか

 マクドナルドについての意見が特に多いのはX(旧Twitter)だ。巨大セルフ注文端末について、「マクドナルドに行くと、端末のUIが非常に使いにくいと感じる」「最後の最後まで(商品の)値段が表示されなかった」といった一般ユーザーの投稿に対し、数万件の「いいね」やリポストが付き、共感の声が殺到した例もある。

 もちろん、「慣れると割と使いやすい」「対人相手だと言うのが面倒なコミュニケーションが苦手な人より(向いている)」といった肯定的な意見も存在する。しかし、圧倒的多数を占めたのは、操作性や画面設計に対する強いフラストレーションだった。特に、スマートフォン(スマホ)から座席で注文できる「モバイルオーダー」が非常に便利で使いやすいと高く評価されているのに対し、店舗に設置された巨大な端末の使い勝手が著しく劣っているというギャップが、人々の不満をさらに増幅させているようだ。

セルフオーダー 巨大端末 操作 モバイルオーダー
マクドナルド店頭の巨大セルフ注文端末は大型の画面で注文を完結できる。利便性が期待される一方でUIの操作性や価格表示のタイミングについてSNS上ではユーザーからさまざまな意見が寄せられている(※この画像はNotebookLMで作成)

最後まで価格が見えない「不安」とは

 ネット上の批判の中で特に目立ち、最も強い反発を招いている一因が「価格表示の不親切さ」だ。多くのユーザーが指摘しているように、この店頭端末ではメニュー一覧に各商品の価格が表示されておらず、食べたい商品をカートに入れ、注文の最終段階まで進まないと合計金額が分からない仕様になっている。

 例えば「600円以内で食事を済ませたい」と予算を決めて来店した学生や会社員にとって、計算しながら注文できないのは不親切と言わざるを得ない。商品を選ぶたびに「これでいくらになるのだろう」という不安を抱えながら操作を進めなければならない。

 SNSでは、「セット価格はカスタムが絡むから単純に表示しないのでは」という擁護論もあったが、これに対しても「『〇〇円〜』とつけるだけでもいい」「モバイルオーダーだとできているいるこれがなぜ店頭端末だとできないのか」といった的確な反論が寄せられている。

 さらに、この仕様が単なる設計ミスではなく、「意図的なマーケティング手法(ダークパターン)ではないか」と疑う声すら上がっている。「最終決定するまで価格を見せないことで高いセットの買い控えを防ぐ」「散々選んで金額が表示されると『面倒だからこれでいいや』になりやすい」という不信感だ。

冗長で複雑な操作フローも――「10回ほどの画面タッチが必要になる」との声

 操作フローの煩雑さだ。あるユーザーの検証によれば、店頭端末で「ホットコーヒーのSサイズ」を1杯注文するだけで、実に10回ほどの画面タッチが必要になると言う。「ドリンク」を選び、「コーヒー」を選び、サイズを指定し、カートに追加し、さらにサイドメニューの追加を断り、店内か持ち帰りかを選び、決済方法を選ぶ……。対人のレジであれば数秒で済むやりとりが、端末を通すことで非常に冗長なプロセスになってしまうのだ。

 また、UIデザインの基本原則である「Fitts(フィッツ)の法則」(ターゲットへの到達時間は、距離とターゲットの大きさに依存する)に反しているという指摘もある。縦長の大きな画面であるにもかかわらず、「次へ進む」ボタンが画面の上部に出たり下部に出たりと一貫性がなく、ユーザーは視線と手を無駄に大きく動かさなければならない。加えて、会計に進もうとするタイミングでサイドメニューの追加を強く推奨される画面が差し込まれることも、「食べたいもの決まったから会計ボタン押したんやろって」と不評を買っている。

多様なユーザーへの配慮不足も

 ファストフード店ならではといえる意見も見られる。「子どもは手が届かないし、老人はなんのことやら分からない」という声がそれだ。デジタル機器に不慣れな高齢者にとって、複雑な階層構造を持つメニュー画面は迷路のようなものだ。さらに、「もともとが日本語ではない言語になってたときに何を押しても日本語にならなかった」というトラブルで利用を控えたという報告も見られる。

セルフオーダー端末 課題
高齢者や子どもにとって高すぎる位置にあるタッチパネルの構造的な課題を示すイメージ(※この画像はNotebookLMで作成)

求められるUIの工夫と改善、そして「真の顧客第一」へ

 こうしたネット上の数々の不満を見ていくと、クレームともいえる数々ではあるが、システム設計における重要な示唆を含んでいる意見もある。企業がデジタル活用で効率化を追求することは現代では当然の流れだが、それが「顧客の利便性」や「納得感」を犠牲にして成り立つものであってはならない。

 では、どのような改善が必要なのだろうか。第一に、「情報の透明性」を高めることだ。メニュー一覧の時点で「〇〇円〜」という基本価格を明示し、オプションを選択するたびに加算される明朗なシステムへと改修すべきだ。

 第二に、「操作の最短化」と「直感的なUI」の実現だ。「モバイルオーダーのページをそのまま移植したら良いのに」という声があるように、モバイルオーダーの洗練された画面設計を取り入れるだけでも、使い勝手は飛躍的に向上するはずだ。ボタンの配置を固定して視線移動を減らし、サイドメニューの提案は控えめで押し付けがましくないデザインに見直す工夫が求められる。

 マクドナルドはこれまで、スマートフォン用アプリから始まり、モバイルオーダーやドライブスルー受け取りなど、数々のアップデートを重ねて利便性を高めてきた確かな実績を持っている。

 店頭の注文端末に関しても、ネット上で寄せられている顧客のリアルな声に真摯(しんし)に耳を傾け、ユーザー中心のUIへと抜本的な改修を行うことが期待される。「価格が分かりやすく、数回のタッチでスムーズに注文できる」――まずはこれさえ実現できれば、ネット上に渦巻く不満の声は減り、快適なデジタル注文体験を提供できるはずだ。

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