KDDIはローソンと組んで何を仕掛ける? 携帯ショップの雇用問題解決にも? 株主総会で語られたこと(2/2 ページ)
KDDIが6月19日、都内で第40期 定時株主総会を開催した。株主から、ローソンと資本業務提携した背景や狙いの質問が出た。KDDIが日本の抱える社会課題の解決に貢献する企業であるためには、これまで以上に顧客接点の強化が重要だとする。
5G Sub6の2波は「大きな武器」 5G SAも見据えてエリア拡大
KDDIのケーブル事業についての質問があり、執行役員専務 CTO コア技術統括本部長の吉村和幸氏が回答した。
「KDDIの海底ケーブル事業は大きく2つ。1つは皆さまの通信を、海底ケーブルを通じて各世界とつないでいること。海底ケーブルの陸揚げ局、ならびに海底ケーブルの保守をしている。また、海底ケーブルを実際に引く作業も行っていて、こちらは子会社のKDDIケーブルシップが行っている。海底ケーブルの敷設、修理を行っており、そのための2つの船を持っている。「つなぐ力を進化させる」ため、この重要な海底ケーブルの事業をKDDIで行っている」
また、事業計画に示されたSub6エリアの拡大について、今後、5Gネットワークの品質向上にどの程度取り組んでいくのかという質問があった。この質問にも吉村氏が回答。
「現在、KDDIは業界最多のSub6の基地局を打っているとともに、衛星干渉の軽減でエリアも関東で2.8倍、全国で1.5倍に広がっている。今後もトラフィックはどんどん増えていくので、しっかりと対応していきたい。特に弊社の場合、Sub6の周波数を2波、100MHz帯域幅を2つ持っている。例えば都内の繁華街や、今後どんどんトラフィックが伸びていくところに対して、この周波数2波を使って、より高速なネットワークを作っていきたい。
あわせて今後、5G SAのサービスも始まっていく。5G SAは5Gの周波数だけを使っているので、そこにしっかり対応できるように、Sub6のネットワークの面を広げていく。基地局は昨年度もかなりの数を打ってきた。この品質を維持するために、引き続きしっかりと対応していきたい」
高橋氏も「このSub6の2波はわれわれにとって大きな武器。しっかり拡大して、競合と戦っていきたい」と意気込んだ。
株主優待変更について「ネット環境がない人でも利用できるのか」といった質問があった。最勝寺氏は「株主優待に関するサポート窓口を設置する予定。ネットの利用に不慣れな株主に対して丁寧に対応していく」と理解を求めた。
高橋氏は「使いやすいように引き続き努力する。Pontaポイントはローソンでも使っていいただける」と付け加えた。
会場からはSDGsについて複数の質問
来場した株主からの質問に対しては、議長を務めた社長の高橋誠氏と担当役員が回答した。
KDDIが「TELEHOUSE」として展開しているデータセンターでは多くの電力を必要とすること、最近打ち上げが増えている低軌道の通信衛星は、衛星が増えて混雑し、デブリ(宇宙ごみ)も問題視されるなど、デメリットも増えていると株主は指摘。ITU(国際電気通信連合)以外の機関が必要ではないか、先端技術を追いかけるにあたってSDGsに対してKDDIはどう考えているかとの質問があった。
執行役員常務で、先端技術統括本部長 兼 先端技術企画本部長の松田浩路氏が回答した。
「KDDIは世界中にデータセンターを保有しているが、2025年度までに実質再生エネルギー100%という目標を掲げており、順調に進捗(しんちょく)している。AIの台頭でデータセンターがこれからも増えていくが、環境負荷を少しでも軽減できるように、最先端の省電力性能を持ったサーバを選定したり、冷却技術の技術検証を実施したりして、業界一丸となって環境負荷の低減に努めている。
昨年(2023年)は再生エネルギー発電会社「auリニューアブルエナジー」を設立。脱炭素社会に向けて取り組んでいきたい。
KDDIは60年以上前から衛星通信を手掛けており、当初から宇宙ごみは認識され、地上から場所の把握に取り組んできた。最近はスペースXをはじめとして、低軌道の衛星が非常に増えてきた。こうした衛星、宇宙の混雑に対しては、「増やさない」「減らす」という2つの方向でルールが規定されている。KDDIは国連傘下の機関であるITU(の関連団体)にも議長を輩出しており、活発な議論を行っている。
『増やさない・減らす』とは、ロケットを再利用したり、打ち上げた後、大気圏で完全燃焼させてごみが出ないようにしたりといったこと。最近では、宇宙ごみを捉えてコントロールする技術もある。KDDIはそういったことが実現可能なパートナーと提携し、宇宙産業の健全な発展に努めていきたい」
続けて脱炭素、カーボンニュートラルに対する取り組みについての質問があり、執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長の最勝寺奈苗氏が回答した。
「実質的な再生可能エネルギーでのカーボンニュートラルを目指している。今般、KDDIグループの目標を前倒しし、データセンターは使用電力の実質100%を再生可能エネルギーで対応していく予定。また、2030年度までにKDDIグループ全体でのカーボンニュートラル、2040年度までにサプライチェーン全体を含めたCO2排出量を実質ゼロにするネットゼロ達成したいと考えている。サプライチェーン全体でのCO2削減は非常にハードルが高いが、取引先との協働により、社会全体でのカーボンニュートラル、ネットゼロに取り組んでいく」
再生可能エネルギーの利用について、太陽光パネルのリユース、リサイクル問題、CO2排出問題などの課題を指摘し、KDDIの見解を尋ねる質問もあった。取締役執行役員常務 パーソナル事業本部長の竹澤浩氏が回答した。
「まず、太陽光パネルを選定するときに、信頼性、安全性、コスト面を十分に考慮した上で採用する。国のリサイクル義務化に向けた検討も承知している。各種法令を順守するとともに、調達段階、リサイクル段階においても、環境に配慮したパートナー、次の展開に向けて一緒にできるパートナーを選択し、コストミニマムで共にやっていきたいと考えている」
軍事政権が続くミャンマーでの事業について。減益原因にもなっているのに、なぜここまでミャンマー事業にこだわるのかという質問には、執行役員常務 グローバルコンシューマ事業本部長 曽雌博之氏が回答した。
「ミャンマーにおける事業について、人権面を懸念するさまざまな声があることは承知している。一方で、われわれはステークホルダーと対話を続けており、ミャンマー国民の皆さまのために、通信インフラを維持することが人権尊重の観点で重要だという意見もいただいている。
これらを踏まえ、今後もパートナーである国営郵便・電気通信事業体(MPT)の通信事業運営をサポートしながら、ミャンマー国民の生活に不可欠な通信インフラ維持に貢献していきたいと考えている。今後も、現地社員、家族、関係者の安全確保を最優先に、人権を尊重するための適切な対処を継続する。ミャンマーの情勢を注視しながら、適切に対応していきたい」
社長の高橋氏は、「KDDIが参入する以前、ミャンマーの携帯電話普及率は13%だったのが117%まで伸びた。ミャンマー国民のためには非常にプラスになっていると自負している。人権は非常に重要な課題なので真摯(しんし)な姿勢で取り組む」とコメント。設備のリース債権の回収が滞っていることについては、「今年度以降も回収に努めていきたい」とした。
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