“やりすぎ”くらいがちょうどいい――N902iX HIGH-SPEEDのデザインができるまで(2/2 ページ)

» 2006年08月28日 00時00分 公開
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コンセプトを極めるディテール

Photo 数字のフォントは加賀美氏が新たに起こしたもの。「ちょっと冒険してます。“ちゃんと8に見える?”と聞いて回ったほど。使う人もヘビーユーザーを想定していたので、楽しんで使ってもらえるかな、という感覚でした」(加賀美氏)

 加賀美氏はN902iX HIGH-SPEEDのデザインに対する思いをこう話す。「デザイナーというのは、常に新しいことをやりたい、当たり前ではなくちょっとはずしたい、という気持ちを持っています。でも、実際の製品になると、なかなか突っ走れるものではありません。今回のモデルは、想定しているターゲットや機能、高速通信とコンセプトが非常に明確で思い切った仕事ができた。むしろ、思い切ってやらないとダメだなという意識もあった。せっかくHSDPAというこれまでにない機能を最初に実現するのに、今までと同じような、多少高級感があるという程度の端末では、いけないだろうと思ったのです」

 高級感よりも未来感や力強さを出すために、あえて、今まで使っていた金属パーツの使用やメッキ処理を一切採用しなかったという。

 「確かに僕は楽しんでやったんですが、不安だった(笑)ちょっとやりすぎたかな、と」(加賀美氏)

 ただし、ドコモ側は背中を強く押し続けた。「NECさんがちょっとやりすぎたかな、という感覚をお持ちなのは分かっていました。ただ、HSDPAというサービスのインパクトや驚きを、どうユーザーに伝えていくか。この点を考慮してもっともっとコンセプチュアルに極めてほしい、と何度もお願いしました。“この人たちだけに使ってほしいんだ!”くらいの強いメッセージが残るように、無難にまとめることだけは避けてほしいとお願いしました」(増田氏)

Photo デザインにマッチした発話/終話アイコン。当初、加賀美氏は比較的普通のものを使っていたのだという。

 「デザインを見せたときに、社内で“やっぱりこれは行き過ぎだ”という声がなかったわけではありません。でも、ドコモさんからも強い“言葉”をいただいていたので、社内の同意を取っていくのも自信を持って進めていけました」(藤原氏)

書き下ろしのオリジナル曲をプリインストール

Photo 内蔵着うたフルの「STARSHIP」

 こうしたデザインに対する思い入れは外観だけではない。内蔵コンテンツや電源をオン/オフしたときの画面にも及んでいる。さらに、これまでにない取り組みとして、N902iX HIGH-SPEEDオリジナルの楽曲を着うたフルとしてプリインストールしている。

 NEC 商品企画部 森山祐助氏は、「内蔵の着うたフル“STARSHIP”は、ミュージシャンの瀧澤賢太郎氏が書き下ろした、N902iX HIGH-SPEEDのための曲です。瀧澤さん本人に端末を見てもらい、世界観をキーワードや形容詞をまじえてお伝えしました。そして作っていただいたのがこの曲」と話す。

 内蔵する画像についても、N902iX HIGH-SPEEDにふさわしいデザインのものが用意された。「デザイナーが“コンセプトがはっきりしているから作りやすい”といってはりきってくれまして、内蔵画像は100点くらい試作しました。実際に提案したのは、その10分の1くらいなんですけどね」(森山氏)

PhotoPhotoPhoto 内蔵するコンテンツ画像の一例。左から「COMBINE」「Illumination Pipe」「Techno Groove」

 あまり目にする機会がない電源投入時の起動画面や終了画面についても、デザインを徹底している。特に電源オン/オフ時の画面については、わずか数秒の表示ながら綿密な打ち合わせを重ねて検討したという。「NECさんの端末はこれまで、電源をオンにしたときに“Hello”、オフにしたときに“See You”という表示をしていました。N902iX HIGH-SPEEDでは今までと同じだとがっかりさせてしまう。こうした部分も新しくしようと“Ready”と“Shutting Down”に変えてもらいました」(高津氏)

PhotoPhoto 電源投入時の起動画面(左)と終了画面(右)

 「起動時には“Ready”とともに、ロードの進捗状態を表示し文字列がスクロールします。終了時の表示についても、これまでの日本の英語的な発想だと“ShutDown”になると思いますが、より用語にこだわって英語圏の方が使う“Shutting Down”としました」(森山氏)

専門家の意見も取り入れる

 ロボットや機械のような印象を与えるN902iX HIGH-SPEEDだが、それもそのはず。模型雑誌を見て研究したり、プラモデルを脇に置いて打ち合わせしたり、さらには「専門家」に話を聞いたり、モックアップを見てもらったりしたという。

 「詳しい方からたくさんお話を聞きました。対称的にモノを置かず極力非対称にして、バランスを崩した方が格好良く見えるとか、ロボットには意味のないラインはなく、すべて動かすために必要な線であるとか。例えば、N902iX HIGH-SPEEDの肩(スピーカーの部分)のロゴは片方だけですし、内容も無意味にならないように気をつけました。カメラ周辺の処理もそれを踏まえています。理にかなわないものを配置するのは、ポリシーに反するといわれ、自分たちでもかなり勉強して直しました」(増田氏)

PhotoPhoto スピーカー部分の型番(左)。底面もFeliCaチップ周辺にメンテナンスハッチをイメージしたモールドを施した(右)
PhotoPhoto インカメラ(左)、アウトカメラ(右)ともメカっぽさのポリシーにそった処理がなされている

 ロボットで使われているディテールを学ぶことで“らしさ”を表現すると同時に、加賀美氏は逆に具体例を見ないように、バランスをとったという。

 「子供のころに見ていた記憶や、デザイナーとして色々と蓄積されたものを出している感じです。いろいろなものが混ざってますから“これに見えるね、アレに見えるね”とイメージがふくらむのかもしれません。特定のモチーフに集中したら、同じような意見しか出てこなかったのかな、と思っていて、結果的にいい具合に仕上がったと思っています」(加賀美氏)

 「色々なものに見えると言われるのはうれしいですね。見る人がそれぞれイメージできるデザインは狙い通りです。購入した方が“こういう風に見えるんだ”と語りながら使っていただける。これはすごいことだと思います」(高津氏)

いい意味で、期待を裏切る端末に

 N902iX HIGH-SPEEDはドコモ初のHSDPA端末としてリリースされるが、当然ながら今後は他メーカーからもHSDPA端末を出してくるだろう。NECには他に先駆けて端末を発売したメーカーの意気込みを、そして両者に今後の方向性を聞いてみた。

 「方向性はマーケットが決めることで、今後の市場の変化次第だと思います。HSDPA機種はまだ限られていて価格も少し高めですが、より一般的になるのであれば、バリエーションをもっと増やす必要があります」(増田氏)

 NECの藤原氏も市場を見ながら決めたいと断りながらも、こう続けた。「今回の端末が、“NECらしくない”という話は、社内でも社外でも聞いています。それは悪い意味ではなくて、いい意味で使われている。これが非常にうれしい。お客さまの期待を、いい意味で裏切りながら作っていきたい。また、もっと小さくできたのに、という気持ちもありますので、次はもっと小さくしたい、とも思っています。常に“もっともっと”という気持ちを持っていたいですね」(藤原氏)

 そして藤原氏は「実際に使って楽しんでほしい」と強調する。「持つだけで満足する方もいるのですが、この端末は見た目だけでなく、中身もすごい。ハイスピードですし、音楽機能も非常に充実している。イチ押しです! 自分が使ってきた中でも一番いい端末になったと、自信を持っておすすめできます」

Photo 左からNECの森山祐助氏、加賀美努氏、藤原望氏。NTTドコモの増田智子氏と高津利樹氏
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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年9月29日