“かざす”文化を広げる―おサイフケータイ対応Androidに隠された新機能「Push送信」とは(1/2 ページ)

日本のケータイユーザーが待ち望んでいた、おサイフケータイ対応Android端末には、「Push送信」という新機能が用意されている。この機能を活用したアプリが増えると、おサイフケータイを“かざす”シーンも広がりそうだ。

» 2010年12月17日 10時00分 公開
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 2010年、日本市場にはかつてないほど多くのスマートフォンが登場した。Android OSを搭載したスマートフォンは、端末メーカー各社からさまざまな製品が登場したこともあり、注目度が急上昇。中でもおサイフケータイやワンセグ、赤外線通信機能といった、日本のケータイでおなじみの機能を搭載した、日本のユーザーを意識したAndroid搭載スマートフォンが登場したことで、ケータイ(フィーチャーフォン)とスマートフォンの垣根が低くなったことは大きなトピックだ。

Photo Android搭載スマートフォンにもおサイフケータイ対応機種が登場した

 特に、多くのユーザーがケータイからスマートフォンへの買い替えをためらう原因になっていた、おサイフケータイに対応したAndroid端末が登場した点は特筆すべきポイントだ。NTTドコモの「LYNX 3D SH-03C」「REGZA Phone T-01C」、KDDIの「IS03」「REGZA Phone IS04」「IS05」、ソフトバンクモバイルの「GALAPAGOS 003SH」「GALAPAGOS 005SH」の7台は、いずれも“1台持ち”できるスマートフォンとして、これまでスマートフォンを使ったことがないようなユーザーにまで、幅広くアピールする端末となっている。

 Android端末のおサイフケータイサービスは、2010年11月から電子マネーの「モバイルWAON」、ヨドバシカメラやビックカメラの会員証/ポイントカード、12月からANAの座席予約システム「SKiP」などの提供が始まっている。2011年以降も、「Edy」や「iD」「モバイルSuica」などのおサイフケータイサービスがAndroid端末に対応する予定だ。

 今や多くのケータイユーザーの生活に欠かせない存在となっているおサイフケータイのサービスが、Android端末でも利用できるようになったことで、日本市場でもケータイからスマートフォンへの移行が加速されるのは間違いない。

AndroidのモバイルFeliCaに搭載された新機能

Photo おサイフケータイ対応Android端末は、かざすだけで相手にデータを送れる「Push送信」機能を備える

 ところで、Android端末のおサイフケータイサービスは、既存のおサイフケータイと同じように利用できる決済や会員証などの機能に加えて、Android端末ならではの特徴を生かした新しい機能「Push送信」を搭載していることをご存じだろうか。

 Push送信機能は、モバイルFeliCa ICチップの通信機能を活用して、任意のおサイフケータイ対応Android端末から他のおサイフケータイに、最大184バイトまでのデータを送れる機能だ。

 フェリカネットワークス コアテクノロジー事業推進室 事業推進課マネジャーの相澤浩氏は、「Androidに搭載されるおサイフケータイで“かざす”機能をもっと気軽に使ってほしかったから」と、Push送信機能を搭載した意図を説明する。

 「Android端末にモバイルFeliCa ICチップを搭載するにあたり、今までどおりおサイフケータイとして電子マネーや会員証機能、交通乗車券機能といったサービスが利用でき、おサイフケータイならではの安心感や便利さを引き継げる、という点はもちろん最優先で検討しました。それに加えて、Androidのよさを生かしつつ、おサイフケータイの新しい使い方を提案するために、Push送信機能を実装しました」(相澤氏)

 FeliCaのリーダー/ライターから、おサイフケータイにクーポンなどの情報をPush送信する機能は、すでにサービスとして提供されており、NTTドコモの「ToruCa(トルカ)」などがおなじみだ。今回Android端末に実装されたPush送信機能は、Android端末そのものがリーダー/ライターになるようなイメージだとフェリカネットワークス コアテクノロジー事業推進室 事業推進課の安井健太郎氏は言う。

Photo フェリカネットワークス コアテクノロジー事業推進室 事業推進課の安井健太郎氏

 「具体的なイメージとしては、飲食店の店頭やコンサートなどのイベント会場に携帯電話をかざすリーダー/ライターが置いてあるのを見られたことがあるかと思います。リーダー/ライターにおサイフケータイをかざすと、おサイフケータイ側でブラウザが起動して、Webサイトにアクセスし、スタンプやクーポン、さまざまな情報が入手できます。Push送信機能は、あのリーダー/ライターがAndroid端末に置き換わるような感じですね」(安井氏)

 つまりこのPush送信機能を活用すると、おサイフケータイ対応Android端末から、別のおサイフケータイに、携帯電話に付いているFeliCaマークを合わせるだけでデータが送れるようになる。

 おサイフケータイ同士でFeliCaマークを合わせて、電話帳などのデータをやり取りする機能は、ドコモの「iC通信」などとして利用されているが、Push送信機能は、もっと軽いデータを1度だけ送る機能だ。

Photo フェリカネットワークス コアテクノロジー事業推進室 事業推進課 マネジャーの相澤浩氏

 「iC通信は、連続で何度も通信をして、大容量データのやり取りを行う機能です。これに対してPush送信機能は、もっと簡単なデータを1回で送る機能になります」(相澤氏)

 画像や電話帳などのデータは、数百Kバイトから、大きい場合は数Mバイトもの容量がある。そういったものを分割してどんどん送る機能がFALP通信機能(FeliCa Ad-hoc Link Protocol)であり、一方Push送信機能は、データの容量は184バイト未満に制限されているが、ブラウザやメーラーを起動し、URLのような情報を渡したり、Android特有の機能である「インテント」を送ることができる。

 このインテントを送れるのが、Android端末ならではの部分だ。インテントとは、簡単に言うとあるアプリから別のアプリを呼び出して処理を受け渡す仕組みのこと。Androidでは、アプリが“インテントを発行”すると、OSがそれに対応したアプリを起動してくれる。例えばTwitterクライアントがURLを含むインテントを出すと、Webブラウザを起動してサイトを表示する。もしURLを受け取るアプリが複数あれば、それをユーザーに選択させることができる。アプリをあまり作り込まずに、アプリ同士を簡単に連携させることができるのがメリットだ。

 おサイフケータイ対応Android端末のPush送信機能を利用すると、モバイルFeliCa ICチップを通して、自分が送りたいデータを簡単に送ることができる。フェリカネットワークスがサンプルソースコードを公開している「おすすめアプリ送信」というAndroidアプリを例に、このPush送信機能を具体的に紹介しよう。

好きなアプリを教えられるデモアプリ「おすすめアプリ送信」

 Androidアプリは全世界から膨大な数がリリースされているが、その反面、好みのものを探し出すのが難しい面もある。自分が気に入ったアプリを友だちに教えたくても、アプリの名前が分からないと口頭で伝えるのはなかなか難しく、また、マーケットのアプリ検索機能も精度がいまひとつな状態だ。

 おすすめアプリ送信は、自分のAndroid端末にダウンロードしたアプリを一覧で表示。そこから友だちに教えたいアプリを選択すると、Android MarketへのURlを、Push送信機能で相手のおサイフケータイ対応Android端末に送れる。受信側に特別な準備は必要なく、Push送信で情報を受け取るとポップアップウィンドウが表示されるので、そこで「開く」を選ぶと、Android Marketアプリを起動して、簡単にアプリのダウンロードページにアクセスできる。

PhotoPhotoPhoto 【送信側】おすすめアプリ送信を利用すると、おサイフケータイ同士で簡単にアプリの紹介ができる。アプリを起動すると、端末にインストールされたアプリが一覧表示されるので、相手に紹介したいアプリを選ぶと、Android Marketのページにアクセスできるデータが送信される
PhotoPhoto 【受信側】受信側は、データを受け取ると「起動しますか?」という確認画面が表示される。「はい」を選ぶと受け取ったデータを元にアプリを起動したり、URLを開いたりできる。意図せずデータを受信した場合は「いいえ」を選べばいい

ブラウザ起動やメーラー起動は既存のおサイフケータイにも送信可能

 「おすすめアプリ送信」はAndroid端末同士で利用することを想定したアプリだが、Push送信されるデータの一部は既存のおサイフケータイでも受けられる。インテントはさすがにAndroid端末でないと処理できないが、ブラウザ起動やメーラー起動は、iモードFeliCa端末やEZ FeliCa端末、S! FeliCa端末、ウィルコムICサービス端末でも受信して、正しく処理することができる(一部、非対応機種あり)。

 ブラウザを起動してWebサイトにアクセスさせることが簡単にできるので、例えばブラウザベースのゲームに応用すると、アイテムなどの受け渡しができる可能性もある。また、待受画像や着うたをダウンロードできるサイトに誘導するといった用途も想定されている。最近であれば、Twitterアカウントを教えたりする際に、おサイフケータイ対応Androidをかざし合うといった使い方もできそうだ。アイデア次第で、このPush送信機能が活用できるシーンはたくさんある。

 しかも、持ち運べるAndroid端末がリーダー/ライターの役割を果たすので、情報をPushする場所が制限されないというメリットもある。

 「例えば、ケータイをポスターにかざすと着うたをダウンロードできるような広告がありますよね。ダウンロードサイトのURLを送る、というものですが、こうした広告では電源を確保したり、専用のリーダー/ライターを設置したりする必要があります。でもこのAndroidのPush送信機能を活用すれば、リーダー/ライターを用意する必要がないんです。スタッフにおサイフケータイが付いたAndroid端末を持たせて、来ていただいたお客さんにどんどんかざしてもらうことができます」(安井氏)

 データを受ける側は、おサイフケータイでさえあれば何もしなくていいのも、この機能の便利なところだ。赤外線通信でアドレス帳を交換する際のような、メニューを呼び出し、相手に待受状態になってもらってから送信するといったような手間は必要なく、受ける側の端末はおサイフケータイにロックがかかった状態でも受信できる。もちろん、データを受信してもアプリの起動を拒否することはできるから、不安なサイトに勝手にアクセスしてしまうようなことはない。

 またおサイフケータイのサービスにはセキュリティの問題は常につきまとうが、今回のPush送信機能に関しては、既存のおサイフケータイサービスのセキュリティには一切影響がないのも特徴だ。

 「電子マネーや乗車券のデータは、モバイルFeliCa ICチップの中のメモリにデータを保存して、セキュリティを保っています。しかし、今回のPush送信機能はその領域にはアクセスせずに、あくまで受け渡し程度のことしかやりません。今回の仕様はサービス事業者様だけでなく一般の方にも広く公開していますが、情報を公開することでセキュリティリスクが高まるようなことはありません。モバイルFeliCa ICチップを完全にインタフェースとして公開できるというところが大きなポイントです」(相澤氏)

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