「携帯電話」から「ケータイ」へ 電話をコンピュータに変えたドコモNTTドコモの20年(前編:1992〜2002)(2/2 ページ)

» 2012年07月24日 10時00分 公開
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世界を変えた「iモード」の衝撃 携帯電話からケータイへ

 1999年は携帯電話業界の大きな転換期だった。iモードサービスがスタートしたことで、携帯電話が、単に“持ち歩ける電話”から、“さまざまな情報を手のひらに集約するツール”へと変化した。これは今までの概念を大きく変える出来事だった。

 iモードは、世界標準のHTMLをベースにした「コンパクトHTML」を利用し、インターネットの一般的な手順でネットワークに接続できるようにした“ミニインターネット”とでも言うべき世界に接続できた。PCと同等とまでは行かなかったが、iモード用にデザインされたWebサイトから情報を得たり、電子メールを送受信したりできた。PC以外の機器からインターネットにアクセスできるのは画期的だった。

 対応端末として発表された「501iシリーズ」は、CMキャラクターに再び広末涼子を起用。かつてポケベルのCMで一世を風靡した魅力で、今度はiモードケータイを若年層へ向けて大きくアピールした。メイクルームやロケバスで広末がケータイを手に持ち操作しているシーンに未来を感じた。

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iモードが登場した際には、かつて(CMで)ポケベルを使っていた広末涼子がケータイを使い「便利さ」をアピール

 この頃斎藤は、PC雑誌の編集だったが、携帯電話の進化に着目し、なぜWAPではなく独自の方式でiモードをやるのか、当時のゲートウェイビジネス部長、榎啓一氏にインタビューをしている。そのときのことを「iモードはそもそもMobileチャンネルを立ち上げる契機になったものの1つでもあり、感慨深いですね」と斎藤は語る。

Photo 園部が初めて購入したiモード端末は「SO502i」。この頃はまだストレートな小型端末も多かった

 iモードが徐々に実用的になってきた2000年頃、園部はまだ雑誌の編集だったが、これまで使っていたSO206からiモード対応端末「SO502i」に機種変更した。変更の理由は「インターネットバンキングとか、着信メロディの変更とか、iモードで使ってみたいサービスが出てきたからです。それと、いつでもどこでもネットが見られる環境に興味を持ったからですね」(園部)。当時のiモードサイトは情報量は多くなかったが、徐々にPC用サイトと携帯電話用のサイトを用意する企業も増えつつあった時期で、外出時などの情報入手が現実的になっていた時期だった。

 携帯電話の契約数が急激に増加し、1年間で1000万を超える純増が数年続いたのもこの頃だ。その結果、030、080、010、020、040、090といった番号から始まる10ケタの電話番号が次々と割り当てられたが、最終的には絶対数が不足して、99年1月にすべて090-3、090-8、090-1、090-2、090-4、090-9の11ケタに再編された。今では信じられないかもしれないが、当時は、「なんとなくサービスが始まった当初からケータイを持っているようなイメージを持たれる」ということで、030で始まる番号が人気だったりした。

503iの登場とMobileチャンネルのスタート

Photo 503iシリーズからの記憶が特に鮮明だと話す斎藤

 99年の秋に、斎藤はPC誌からITmedia Newsに活動の場を移す。ケータイの市場拡大に未来を感じた斎藤は、2000年の502iシリーズの発売を経て、Javaを搭載すると言われていた次期シリーズで、ケータイがさらなる変貌を遂げることを確信したという。そして2001年、斎藤はITmedia内にケータイの情報を扱うMobileチャンネルを立ち上げた。Mobileチャンネルの開設準備は、ドコモの503iシリーズの発表タイミングに間に合うよう、冒頭でも述べたとおり1か月ほどの期間で急ピッチに進められた。

 503iシリーズの最大の特徴は、サーバから「iアプリ」と呼ばれるJavaアプリケーションを端末にダウンロードし、実行できる点にあった。Webブラウザ上でコンテンツを表示するだけでなく、ゲームなどのアプリケーションが実行できるようになったのだ。手のひらにある機器で、PCのようにアプリケーションソフトを動作させるという概念は、今のスマートフォンにも通じる。その後、アプリを快適に動作させるためにCPUが高性能になり、たくさんのデータをやり取りするために通信速度が速くなり、そしてそれがこれまでの足枷をなくして新しいサービスにつながるという好循環を生んだ。iOSやAndroidは、iモードの仕組みを徹底的に研究して生まれたとも言われる。ドコモが切り開いた世界を参考に、スマートフォン上で各種機能やサービスが提供されているわけだ。iアプリのスタートは、まさにケータイが新しい情報端末になったタイミングと言える。

Photo ドコモの503iシリーズ。左からF503i、P503i、D503i、N503i、SO503i
PhotoPhoto Mobile編集部に現在も保存されている「F503i」(写真=左)と「SO503i」(写真=右)

 「この頃から、多くのユーザーが端末のハードウェアスペックに高い関心を持つようになりました。iアプリの動く速度を、専用のアプリケーションで計測して、CPUがどれくらいの速さで動いているのかを比べた記事などはすごく読まれましたね。PC雑誌を作っていたときも、ベンチマークテストと呼ばれる計測プログラムを実行して性能の評価をしていましたが、それと同じようなことをケータイでやるようになりました。いまだに覚えているのは、赤い『P503i』ですね。アプリの実行速度が、当時としてはすごく速かった」(斎藤)

 Javaアプリケーションを実行できる環境が搭載されたことで、503iシリーズはこれまでのiモード端末のような、Webブラウズができるケータイから、モバイルコンピュータへと進化したのだった。この頃から、ケータイの開発はソフトウェアの開発が重要視されるようになり、OSの標準化などの動きも出てきた。

 「ドコモはこの頃の業界を常にリードしていました。これまではひたすら電話を薄く軽くしていく流れだったのに、iモードの搭載、そしてiアプリへの対応を通して、携帯電話を小型コンピュータにしていく方向に舵を切ったわけです。これは今考えても本当に画期的でした。ショートメールなどはあくまでも電話の付加機能でしたが、iモードとiアプリは、この後の高機能化、そしてケータイのスマート化に先鞭を付けた出来事だったと思います」(斎藤)

 幸いなことに、503iシリーズは世間の注目も集め、ITmediaのMobileチャンネルは好スタートを記録。503i関連記事を毎日のように掲載し、Webサイトのトラフィックも右肩上がりで伸びた。Mobileチャンネルを立ち上げた後の斎藤のメイン端末は「N503i」などだったという。この頃斎藤は、機能や性能の進化が楽しくて、毎月のようにケータイを買ってはテストをしていたそうだ。

FOMAサービス開始 カメラ付きケータイも登場

 503iシリーズの登場から程なくして、第3世代携帯電話サービス「FOMA」の試験サービスも始まった。この頃ドコモは、世界に先駆けて次世代移動体通信サービスの開発を進めていた。FOMAでは、ムーバと比べてパケット通信が高速になったため、当時からPCのデータ通信にも利用できることを大きくアピールしていた。ムーバのときに28.8kbps(0.0288Mbps)だった通信速度は、FOMAで384kbps(0.384Mbps)と10倍以上高速化したのだ。これにより、iモード利用時の待ち時間は劇的に短くなった。また、テレビ電話サービスが始まったのもFOMAからだ。スマートフォンでは、相手の映像を見ながら電話をすることもかなり容易になったが、当時としては画期的だった。かつて、ドコモのテレビCMで孫とおじいちゃんがテレビ電話で話すシーンなどが流れ、そこに未来を感じた。

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FOMAのテレビ電話機能を紹介するCMは、孫がおじいちゃんに運動会の報告をするという内容。改めて見てみるとグッとくる

 ただ、2001年5月に始まった試験サービスは公募した4500人のモニター限定で提供されていたため、当時の情報入手にはとても苦労したと斎藤は語る。

 「Mobile編集部での仕事の中でも、FOMAの取材は一番の思い出ですね。試験サービスは公募に外れて端末が入手できなくて、知り合いやいろいろなつてを使って匿名を条件にユーザーに協力してもらいました。NECの『N2001』という端末がモニター用に貸し出されていました。今では考えられないことですが、当時のFOMAはつながる場所を探すのも大変だった記憶があります。でも世界の最先端を走っているドコモと、それを体験している日本、そしてその状況を記者として追いかけられた現場はすごくワクワクしました」(斎藤)

 2002年に、他社が先行していたカメラ付きケータイ「SH251i」が登場したのも思い出深いという。30万画素のCCDカメラを搭載した同機は、ドコモの「iショット」サービス対応端末の第1号で、斎藤は「これでやっとiモードでカメラが使える」と心躍ったという。今でこそケータイには載っていて当たり前のカメラだが、この頃は、写真が手軽に撮れることを評価する声がある一方で、撮影できる写真がそれほどきれいではなかったり、ムーバのネットワークで写真をやり取りするのが大変だったりしたため、搭載には賛否両論があった。ハイエンド端末の504iシリーズのラインアップではなかったものの、あちこちで写真を撮るため持ち歩いたという。

PhotoPhoto 左が最初のFOMA端末の1つ「N2001」。右はドコモ初のカメラ付きケータイ「SH251i」

 アプリケーションとそれを実行する高性能なCPU、カメラなど、今の高機能ケータイやスマートフォンに通じる機能が、この頃徐々にケータイに搭載されていった。ドコモの創業から10年の歳月が経っていた。

後編:2002〜2012へ続く

 前半は、1992年7月から2002年6月までの10年間のドコモの活動から、現在のドコモに通じる進化のルーツや、画期的な転換点となった「iモード」「iアプリ」のスタート時の熱気をお届けした。まさにMobile編集部前編集長の斎藤と現編集長の園部が、学生から社会に出て、さまざまな経験を積んできた時期とドコモの成長が重なっており、特に503iシリーズ以降は端末ごとに思い出がひも付いているような状態で、対談では話題が尽きることがなかった。

 後半は2002年7月から2012年7月までの10年を、再びMobile編集部の10年と重ね合わせながら見通してみたい。特にFOMAの歴史の転換点となった900iシリーズが登場した2004年、パケット通信の速度が初めて「メガ」を超えたFOMAハイスピードが導入され、デザイナーとのコラボレーション端末が多数登場した2006年、国内で初めてAndroidスマートフォンが発売された2009年、次世代通信サービス「Xi」がスタートした2010年などは、ドコモの今につながる重要なマイルストーンだ。そこにはドコモがこれまで積み重ねてきた革新と地道な努力がちりばめられている。

後編(2002〜2012)を読む



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※掲載の内容は2012年7月24日現在の情報です。



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