「ほんとにどこまでできるのかな」――。シャープでスマートフォンの商品企画を担当する吉田氏は、IGZOの効果を最初に説明されたとき、若干疑心暗鬼だった、と明かす。
「消費電力の削減は、常に目標としてきました。『もっと長時間使えるように』というご要望は、ご購入者アンケートの上位に、常に挙げられるものです。妥協できる部分ではありません。使用時間の延長は、前からこだわりがあってやっている部分で、妥協できません。特に、買うときはいいものの、買っていただいた後に満足していただくために重要です。ですから、社内にも常に無理を言い続け、努力してもらってきた部分です」
とはいうものの、技術は魔法ではない。画期的な変化はなかなか生まれないものだ。今回の進化がどのくらいのものなのか、少々不安だったのだろう。だが、その不安も杞憂に終わった。
「動作時間のようにベーシックな機能をひっくり返すのは、ものすごく難しいことです。今回はそうした基幹の部分で、競争に勝てるようなものを与えていただきました。ありがたい、と思いましたね。『スマホはバッテリーが持たない』という定評を、解消できるインパクトは大きいと考えました」
しかし、である。203SHは、2012年10月にソフトバンクモバイルから発表された当初は、IGZOでなくS-CGSilicon液晶を使うとアナウンスされていた。
「S-CGSilicon液晶で開発を進めていたのですが、IGZOに対する期待が高まってきました。我々が作っていたのはハイスペック製品。最高級のものを求める以上、IGZOを採用するべきだろう、と判断しました」(吉田氏)
決断のタイミングは11月。簡単なことではない。
「液晶パネルは、単に差し替えて動くものではありません。パネルが変わるので、周辺の制御回路も変わります。IGZOの省電力設計を生かすには、画面を描くためのソフトもIGZO向けに最適化が必要です。そのため、そこも変えました」
前田氏は、IGZOへの変更が非常に困難であったと説明する。一方で、製品化の時期としては、携帯電話の大きな商戦期である2013年3月から延期することは許されない。だが「シャープのフラッグシップスマートフォン」としては、IGZOの採用は必須。吉田氏は、エンジニアを含め社内調整に走り回り、203SHへのIGZO搭載を進めた。ソフトバンクモバイル側もシャープの意気込みを尊重し、203SHは「IGZO搭載スマートフォン」に生まれ変わることになった。狙いはもちろん、利用者の満足度を向上させるためだ。
ディスプレイが変わるということは、商品の特性が大きく変わるということでもある。シャープは203SHに、「映像を快適に見る機能」の搭載を前提に開発を進めていたが、IGZOの採用により、そのプライオリティは上がる。
商品企画担当の岩越氏は次のように話す。
「203SHには、4.9インチの大型ディスプレイが搭載されています。大型画面で映像を楽しんでいただく、という価値を提供したいと考えていました。そこにIGZOが使われることで、その価値はより高まります。お客様が、バッテリーの持ちを気にして使うことをためらう、といったことがないようにしたいんです」
203SHには、ワンセグやYouTubeの映像を、WebやTwitterの画面と同時に見られる「アナザービュー」という機能が搭載されている。映像を見るということは、それだけスマートフォンを長く使うということ。バッテリーが持たない機種にこの種の機能を搭載しても、利用者にはバッテリー消費が気になって使ってもらえない。動画再生中でも消費電力が上がりにくいIGZO搭載だからこそ、長時間使ってもらうことを前提とした機能が価値を持ってくる。
利用者が満足して、ためらいなく使えってもらえるスマートフォン。IGZOの搭載によってシャープが目指したのは、スマートフォンの「本質をジャンプアップさせる」試みだったのだ。
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提供:シャープ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia Mobile 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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