中の人に直撃! これで解決「Simeji」の疑問(2/3 ページ)

» 2014年12月22日 10時00分 公開
[佐野正弘PR/ITmedia]
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情報公開のためのさまざまな取り組み

佐野氏 それでも情報を取っているとなると、何を取ってどう使われているか神経質になるユーザーも一部にはいます。UIDは送られていませんとはいっても、やっぱり送られているのではないかという懸念がどうしても湧いてしまうと思うんです。そのことについて、実際にやっていないということをわかりやすく示すことができるでしょうか。何か考えている方法などはありませんか。

高部氏 一般のユーザーさんにデータの仕様をお見せするのが一番良い方法と思っています。たとえば、クラウド変換を利用すると、こういうデータが流れて、こういうものを返す、こういう形のクエリが流れてデータが返ってくる、そこにIDは含まれません、という手順をお見せするのは1つあるかなと思っています。当然、中身は暗号化されているので見られないんですが。ある一定期間にシステムログが仕様通り送られてくるといった話はできます。

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佐野氏 イベントやミーティングなどを開催して、そういう情報を公開するのは、技術をわかっている人には納得しやすいですね。そういったリアルな場面での技術的な説明の取り組みは何か検討されていますか。

高部氏 自然言語処理に関して、2バイト圏でバイドゥは最先端です。実は、NLPの学会などでの成果の発表なども積極的におこなっており、名だたる企業の方々と当社の研究者などは実は交流を行っていたりするのです。そのつながりの中で、来年以降、自然言語処理の研究をしている大学と一緒に共同研究しながら、その成果をアウトプットしていこうとしています。学術的な分野で、消費者に近い専門家や技術者に、内容や仕様を極力開示していく活動を今年の年末から準備させていただき、来年に始める予定です。その中で、Simejiなど当社のIME製品に関して、実装はこうなっているということをリリースしていくプロジェクトを進めています。ディスクロージャー(情報公開)ですね。企業として、ブラックボックスをある程度わかりやすく公開する試みを検討しています。

佐野氏 言葉で説明しても伝わらない部分がどうしてもありますので、そういった取り組みは重要ですね。我々にとっても歓迎することだと思います。

高部氏 2013年には、誤解を生むような話題も出ましたので、ISO27001(組織が保有する情報に関わるさまざまなリスクを適切に管理していることを示す国際規格)も取得しました。

佐野氏 過去の出来事もあり、コンプライアンスについては色々と指摘もありました。

高部氏 外資系企業なので、日本のマーケットとうまくやっていこうと思った場合に、わかりやすい資格が必要だろうと考えました。欧米の先端企業や端末メーカーもそうですが、日本の特殊なマーケットで成功するのはなかなか難しいことです。でも、GDP2位でスマートフォンと呼ばれる端末が生まれる前からモバイルビジネスが発達した特異なマーケットです。外資系企業として難しいと思うところがあり、ISOを取得したりして、会社として日本の市場をちゃんと理解する要素は大きいと思います。

 そういう観点でも、マーケティング的な意味でも、そこには今後とも注力します。今後は、技術的な情報公開も含め、もう少し消費者視点とかマーケットのオピニオンリーダー視点に立って情報公開していく地道な活動が必要だと思っています。それをやったからといって急に評価が高まるとは思っていませんが、過去の事件をきっかけに、本国と連携して注力する意識になっています。

―― アプリはSimeji6.8.3のときに、試験認証機関「Intertek」による安全性の検証を受けられていますが、新バージョンが出るたびに第三者機関による検証を受けるのでしょうか。

高部氏 今はバックエンドの通信について仕様の変更がないので受けていません。大幅な変更がある際にまたお願いしようと思っています。

―― プライバシーに関する国際的な団体「IAPP(International Association of Privacy Professionals)」に加盟され、「日本スマートフォンセキュリティ協会」にも参加されていますね。

高部氏 IAPPは、これから進行するデジタル化の波の中で、プライバシーに関して各国マーケットに広がる法的な仕組みを考えてゆく団体です。モバイルやクラウドなどのインターネット領域で、プライバシーをどういう方向で扱うかをグローバルでコンセンサスを取ろうとしています。日本スマートフォンセキュリティ協会については、もっとドメスティックなイメージがありますが、そういうところでも情報交換しています。

佐野氏 社内でもいろんな対策をされていると思うのですが。

高部氏 トラブルが起こる前から上場企業として当然のことをやってきましたが、今まで以上にやったのは外に向けたコミュニケーションです。そこに関してはきちんと誠意を持って、今まで以上に時間や手間をかけるようになったと思います。ユーザーに対しては、Simeji買収直後からSNS上も含めてかなりサポートに投資してきましたが、各種問い合わせ窓口に専属スタッフを配置して、今まで以上にわかりやすく説明するようにしています。

佐野氏 サーバーの件、サポートの件も含めて、先行投資がしばらく続くという感じでしょうか。

高部氏 そういう感じだと思います。

ユーザーのニーズに応えながら地道な改善を続ける

佐野氏 こういったことを始められたばかりだと思いますが、反響や成果で見えてきたものはあるでしょうか。

高部氏 反響としてはユーザー数が伸びていること、ご批判の比率がだんだん下がっていることを感じています。ちょっとした誤解から一気にまた懸念が広がることがあるのは当然、ソーシャルメディアなどが発達した今ではありうることですが、いろいろな取り組みを積み重ねていくことで、ユーザーの母体やソーシャルモニタリングの結果をみると、ファンが少しずつ増えてきているかなという実感は得ています。

佐野氏 iOS版が出たときにも、以前ほど反発的な意見が出ていないように感じました。

高部氏 そうですね、顕著ではなくなってきたと思います。商品がいいものであればご支持していただけるようになったかなと。当然、懸念を持たれる方がある一定数おられるのは事実です。そこは真摯に受け止めて、日々是改善の活動を続けていくのが大切だと考えています。

佐野氏 活動を継続することが、信頼を獲得する上で重要ですね。

高部氏 そうですね、継続することが重要だと思います。

―― ユーザーからの評価で、アプリによって変換候補が変わる機能やクラウド変換について、必要ないという声はあるのでしょうか。

高部氏 いらないとおっしゃる方は、実際のユーザーの中からはマジョリティなご意見としてはそこまで多くいただいていないという認識です。実際に使って、Simejiはスゴイとか神アプリだといってくださるユーザーさんは、利便性やバリューを感じていただいているという認識です。当然、そこを含めてマーケティングしているからこそユーザーを増やせているわけですし、マーケティングプロモーションがフィットしているという自負は一応、あります。

―― ユーザーの声を反映して追加された機能で、代表的なものは何ですか。

高部氏 ほとんどがキーピッチの改善ですね。アドレス帳の取り込み機能もそうです。ニーズありきで実装して、評判がよければ改善し、評判が悪ければ取り除くという形でやっています。アドレス帳の取り込み機能はニーズが高く、セキュリティ上、もっと留意したいということで、Android版は外部アプリ化しました。トライアルでは有償でも提供しましたが、やはり無料じゃなきゃ嫌だという声が多かったので無料で提供しています。

photophoto Simejiから別のアプリを呼び出せるマッシュルーム機能。アドレス帳の取り込みアプリをインストールすると、マッシュルーム機能を介して利用できる(写真=左)。キーボードを好みのデザインで彩れるスキン(写真=右)

 毎週1回、ニーズウォンツ分析会議を日本でやるんですが、ユーザーの声を機能に反映させるとしたら、どういう機能になるのか、マネージャー陣を集めて検討しています。SNSで要望がきているけど、それは母体の要望を反映しているのかどうかなどを分析した上で、優先順位を付けて実装していくパターンがほとんどです。

 バイドゥ側からは、どちらかというとビジネスフェーズの話で、スキンの課金などを実験に近い形でやっています。将来的なビジネスを考えてトライアルしたいことを、こちらから提案しています。でも、Simejiは現在、投資フェーズなので、利益はあまり重視していません が、将来を見据えた有料化メニューなどもそれに該当すると思います。

―― ユーザーから要望をもらって開発していくスタイルなんですね。

高部氏 そうです、マーケットイン型の開発をしている感じです。ただ、なんでもかんでも詰め込むとおかしくなるので、何を優先すべきか、全体のパッケージングとして本末転倒にならないかを吟味して実装させていただいています。

「フルアクセス」が不安視されるもiOS版も好評

佐野氏 iOS版を出されたことで、ユーザーの反響はどうでしたか。

高部氏 非常によかったです。Android端末で使われている方は当然、認知していただいていますが、iOS端末でも使いたいというご意見はいただいていました。だからこそ、WWDC 2014でiOS 8が発表されたと同時に、2か月くらいで開発しました。実際、iOS 8の日本語入力に関する情報はなく、β版が出るたびに仕様が変わって大変だったんですが、取り組ませていただいて、期待通りユーザーさんにご支持いただいた。そういう印象です。

photophoto iOS 8以降で利用できるiOS版のSimeji。機能はAndroid版とほぼ同じだが、OSの仕様により、「フルアクセスの許可」など事前の設定が必要なほか、現時点でインライン入力ができないなどの違いがある

佐野氏 そんなにトラブルもなく順調に立ち上がった感じですか。

高部氏 新OSで新仕様なので、立ち上げたときは七転八倒したというところが正直なところです(笑) ただ、ユーザーさんに関わるところで、そこまで顕著なトラブルはなかったという認識です。

―― iOS版もリリース時からクラウド変換に対応していますが、iOSとAndroidで仕様が違う部分はあるのでしょうか。

加藤氏 基本的にはないですね。メカニズムは同じです。ただ、iOSとAndroidで、絵文字などでは出るものと出ないものがあるので、その辺はサーバー側でコントロールしています。

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佐野氏 iOS版で利用する場合、「フルアクセスの許可」のポップアップが出てきます。当然、他のIMEも出ますが、それについてのユーザーさんからの反響はどうでしょう。

高部氏 実際に使っているユーザーさんかどうかはわかりませんが、フルアクセスにするとクレジットカード番号が取られるといった事実と違うことを書かれているブログなども拝見させていただいています。そうしたネット上の情報を見て、ユーザーさんから問い合わせがくるケースもあるんですが、そういう場合はきちんと説明して、どういう目的で使っているかという話、どの機能を使うと、iOSの仕様上、こういうパーミッションが必要になる。ただ、こういう情報は取っていないので安心してください、という説明を個別にさせていただいている状況です。

佐野氏 ユーザーさんは、あのポップアップにどうしても警戒すると思いますので、今後、そこが障壁になってくるかもしれませんね。でも、それ以外の問題は解消されているという認識でいいでしょうか。

高部氏 バグなどはないようにしています。ユーザーさんの誤解という部分でいうと、除々に払拭できているかと思っています。

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提供:バイドゥ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia Mobile 編集部/掲載内容有効期限:2015年1月31日

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