テレワークで利用が増えても安定した通信環境を 「THE WiFi」の裏側を聞く(1/2 ページ)

在宅時間が増えたことで、国内の使い放題のWi-Fiルーターサービスが注目を集めている一方で、通信障害や速度低下などのトラブルも相次いだ。そんな中、「THE WiFi」が、2020年8月26日に新プランの提供を開始。1日のデータ通信容量上限を4GB、月間最大124GBに変更した。その背景をスマートモバイルコミュニケーションズ株式会社の鳥越洋輔社長に聞いた。

» 2020年09月09日 10時00分 公開
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 ここ最近、「クラウドSIM」という技術を使った使い放題のモバイルWi-Fiルーターが注目されている。新型コロナウイルス感染症が拡大した影響で在宅時間が増えたこともあり、こうした使い放題のモバイル通信を、光回線やCATVといった固定回線代わりに使いたいと考える人も多いだろう。

 一方で2020年春、クラウドSIMを使った複数のサービスで、通信障害やデータ通信速度低下などのトラブルが起こった。国内での通信容量無制限を前面に出していただけに、不信感を募らせたのも事実だ。

 そんな中、「THE WiFi」が、2020年8月26日に新プランの提供を開始した。これまでのデータ通信容量無制限から一転、1日のデータ通信容量上限を4GB、月間最大124GBに変更した。制限付きの新プランを始めた狙いを、スマートモバイルコミュニケーションズ株式会社の鳥越洋輔社長に聞いた。

THE WiFi 2020年8月26日に新プランの提供を開始した「THE WiFi」
THE WiFi スマートモバイルコミュニケーションズの鳥越洋輔社長。取材はオンラインで実施した

「THE WiFi」とは何か

 THE WiFiは、スマートモバイルコミュニケーションズが2020年3月に提供開始したモバイルWi-Fiルーターサービス。クラウドSIM技術を採用し、NTTドコモ、au、ソフトバンクのLTEエリアに対応。料金は月額3480円(税別、以下同)で、国内ではデータ通信が使い放題だ。また、国内15万カ所以上のWi-Fiスポットを利用できる(同額の「THE WiFiライト」プランはWi-Fiスポットを利用できない)。

 ユーザーの男女比はほぼ半々。年代的に最も多いのは30〜40代の男性だが、そこが突出しているわけではなく、幅広い年代に利用されているという。

 THE WiFiの魅力は、大容量のデータ通信を非常に安価に使えることだ。大手キャリアの大容量および使い放題プランは月額7000円から8000円かかるが、THE WiFiは3000円台。この価格はクラウドSIMを採用したことが大きい。

 通常、1台のルーターには基本的に1枚のSIMカードが入り、それを1人のユーザーが使うという1対1対1の関係だ。それがクラウドSIMになると、1つのルーターと1人のユーザーで複数のSIMをシェアできる。「クラウドSIMは効率性が高いと、数カ月運用して実感しています」と鳥越氏は話す。

速度低下トラブルの原因

 しかし、2020年5月頃からTHE WiFiは通信の混雑による通信速度の低下と、商品出荷遅延が起きてしまった。背景には4月中旬に緊急事態宣言が出されて、外出を控える事態になったことがある。これで「サービス設計時から状況が劇的に変わった」(鳥越氏)という。

 ステイホームが実践され、スマホやPC、タブレットの使用頻度が上がった。また、多くの企業が4月下旬以降、テレワークを導入し始めた。テレワークの導入率が50%を超えたというニュースもあった。

 これまでオフィスで使われていた通信が、自宅のWi-Fiで使われるようになった。もちろん、THE WiFiのユーザーの多くもテレワークでWi-Fiルーターを使う頻度が高まったと鳥越氏は捉えている。

 どれくらい増えたかというと、スマートモバイルコミュニケーションズのMVNO事業「スマモバ」で提供していた通信容量が、2020年2月以前と比較すると、ユーザー数はほぼ変わらないのに5月以降は2倍近く跳ね上がった。通信容量の増大が、当初の想定を大きく上回ってしまったのだ。

 「用意していた通信リソースが、5月中旬はギリギリで推移していき、一部のユーザーに通信速度が低くなる事象が頻発しました。その状態を改善しなくてはいけないので、5月中旬から新規獲得はほぼ停止し、新規出荷も最長1カ月後という状態。ユーザーに不便を強いてしまいました」(鳥越氏)

THE WiFi THE WiFiの速度低下について、2020年7月22日にWebサイトで対応状況を案内している

公平性を担保すべく「1日4GB」の制限を設定

 そこで、鳥越氏は1つの決断をする。

 「通信事業者が一度サービスを提供した以上、安定的かつ恒久的にサービスを維持していかなければなりません。需要が高まったからといって、一部のユーザーの速度低下を起こしてはならない。従来のサービス設計よりも、公平性を担保することを目的として規制を設けることにしました」(鳥越氏)

 2020年8月26日からは、日本時間の午前9時00分00秒〜翌午前8時59分59秒までを1日とし、1日4GBの制限を設けた。

 「制限を設けたのは、通信を抑制するというより、お客さまにより公平性を担保したかったというのが狙いです。以前は月間1TB使う人と月間100GB使う人が同じ価格になってしまう。もちろん無制限でやっていた以上、仕方がないことですが、速度低下などの影響が出てしまった。企業として何とかしないといけないということで、やむを得ず制限を設定させていただきました」(鳥越氏)

 1日4GBは、ビデオ会議を1日4時間行える容量という計算だ。

 「われわれもテレワークを実践していて、多い日で1日4時間くらいビデオ会議があります。一般的な会社員の1カ月の稼働日を20日間と考えると、4GB×20日で80GBあればテレワークには耐える容量です。それに、プラベートで利用する分の40GBをバッファーとして加え、1カ月で約120GBとしました」(鳥越氏)

 1日4GBと聞くと、一見少ないように感じられるが、1カ月最大124GBと考えると大容量だ。また1日制限は、通信しすぎて制限を超えてしまっても翌日にはリセットされるので、低速になってストレスを感じる時間も短い。

 「1カ月単位で容量が決まっていると、上限に達して低速になる期間が長くなりがちです。また、“3日制限”などもあって計算しづらい。1日制限は使い勝手が良く、計算しやすいのがメリットです」(鳥越氏)

 この新料金プランの月額料金は、2020年10月31日(土)までに申し込んだユーザー限定で、月額3480円から契約ができ(通常価格月額4280円から)、THE WiFiプランはWi-Fiスポットも同様に使える。なお、このプランが適用されるのは8月26日から申し込んだユーザーだ。既存ユーザーは従来通り、容量無制限で使える。

SIMの調達強化と帯域増強で通信を安定化

 5月中旬から2カ月ほど、新規契約を停止してリソースの増強に努めてきた。6月に入った頃から速度低下も緩和されてきており、その時点で契約再開も可能だったが、再び通信量が増えて速度が低下する可能性も捨てきれず、さらに1カ月間、余裕を持たせた。

 その間、クラウドSIMの調達を強化する一環で、大手キャリアから借り受けている帯域の増強スケジュールを前倒ししたという。

 スマートモバイルコミュニケーションズは、SIMバンクに装着しているSIMカードだけでなく、MVNOとして帯域を借りてTHE WiFiでも活用している。SIMカードの容量だけでは賄えないというときに、比較的柔軟に対応できる帯域を増やせば、速度安定化が期待できる。「2015年からMVNO事業のスマモバをやってきて、そこで培ったノウハウを生かせる部分だと思っています」(鳥越氏)

 1人あたりのデータ容量も、想定外を想定内に置き換えて設備強化のスケジュールを組んだ。 回線ごと、時間帯別、常時接続率など、さまざまな指標でトラフィックをモニタリングし、リソースの増強判断の根拠としているという。今後のトラフィックについては問題ないそうだ。

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提供:スマートモバイルコミュニケーションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia Mobile 編集部/掲載内容有効期限:2020年9月15日

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