2022年からApp Store外からの決済が可能に コンテンツビジネスに及ぼす影響は?(1/2 ページ)

2022年初頭から、電子書籍や音楽などのコンテンツは、App Store以外からの決済ができるようになる。コンテンツ提供者が自社サイトで決済可能にすることで、どのようなメリットがあるのか。また、どんな決済手段を導入すべきなのか。

» 2022年01月25日 10時00分 公開
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 2021年8月、Appleは米国のアプリ開発者との集団訴訟で和解。また、同年9月には、日本の公正取引委員会との合意により、「リーダー」アプリの開発者は、アプリ内に自社サイトへのリンクを含めることが可能になる予定だ。これによって、電子書籍や音楽などのコンテンツ配信事業者は、iOSアプリ内でAppleが決めた決済方法だけでなく、ユーザーをアプリから自社サイトに誘導し、さまざまな決済方法を使ってコンテンツを販売できることになりそうだ。

App Store Appleが2021年9月に発表したプレスリリース。2022年初頭から、リーダーアプリはApp Store以外で決済できるようになる

 このことが、ユーザーやコンテンツ事業者にどのようなメリットをもたらすのだろうか。幅広い領域の決済事業を展開するSBペイメントサービスの営業本部 副本部長 長田直樹氏に、コンテンツビジネスに与える影響をうかがった。

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2022年初頭から、外部サービスで課金が可能に

 今回の集団訴訟の和解には、以下のようなポイントがある。

 2021年1月から、年間収益が100万ドル以内の小規模事業者に対して、有料アプリの手数料を30%から15%に引き下げる「App Store Small Business Program」が実施されているが、それが今後3年間は維持される。

 また、App Store以外でコンテンツ購入が可能だとメールなどで通知することも許可される。iOSアプリやApp Store以外で行われた購入については、アプリ開発者はAppleに手数料を支払う必要がない。さらに、App Storeでは有料アプリやアプリ内課金で「Tier1」(税込み120円)から「Tier87」(税込み11万9800円)のプライスポイントを設定していたが、これを500以上に増やす。これによって、課金の自由度が上がる。

 2022年初頭から、アプリの開発者は、雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオなどのコンテンツを閲覧するリーダーアプリ内に、自社サイトへのリンクを含めることができるようになった。ただしゲームアプリは対象外となる。

 そもそも、なぜこれまでAppleは外部課金を認めてこなかったのだろうか。SBペイメントサービスの長田氏は、「Appleが提供する決済方法は非常にスマートでセキュリティ性が高く、『カゴ落ち』(カートに入れた商品を購入しないままユーザーが離脱)しない。ユーザー体験の面でもアプリ開発者(コンテンツ配信事業者)の視点でも、非常によくできた仕組み」と高く評価する。

 その一方で問題視されていたのが、高額な決済手数料だ。小規模事業者に対しては30%から15%に低減したが、大手事業者には適用されない。また、「一般的にクレジットカードの手数料は3%から4%程度で、毎月の携帯電話料金と一緒に支払えるキャリア決済の場合は12%程度」(長田氏)と、Appleの手数料はまだ高いという声もある。

長田直樹 SBペイメントサービスの長田直樹氏

 リーダーアプリから自社サイトに遷移し、そこでコンテンツを購入してもらうようにすれば、手数料コストを減らせる可能性があるわけだ。

アプリ外決済によって何が変わるのか

 とはいえ、コトはそう簡単に済ませられない。アプリ内決済には、それなりにメリットがあるからだ。

 ユーザーにとってアプリ内決済は、別のアプリやサイトを経由せず、スピーディーに決済ができる方法だ。決済手段は基本的にApple IDに登録されており、iPhoneやiPadで購入するなら、指紋認証のTouch IDや顔認証のFace IDでサクッと本人認証が済む。非常にスマートで、コンテンツを買いたいと思いたったときにスムーズに購入できる。

App Store アプリ内決済なら、生体認証やパスワード入力だけで簡単に決済ができる

 これは事業者にとっても販売チャンスを逃さないという点でメリットといえる。ただし、高額な決済手数料を支払う必要があるというデメリットの部分もある。

 アプリ外にユーザーを誘導し、自社で用意した決済方法を利用してもらうようにできれば、事業者は前述の通り決済手数料を抑えることができる。決済手段によっては4%未満での導入も可能だ。

 アプリ外でコンテンツを購入することは、ユーザーにとってもメリットがある。クレジットカードやスマホ決済など、自分が普段使っている決済手段を利用できるからだ。配信事業者がサイトを運営しているので、キャンペーンやクーポンなどで多くの還元を得られる場合もある。

 「例えば、あるコミック配信サイトでは毎週金曜日に、PayPay残高でコンテンツを購入すると通常より多くのPayPayボーナスが付与されるキャンペーンが継続して行われています。それを知ってから、私もマンガはそこばかりで買うようになりました。条件によっては半額分くらい戻ってきますから(笑)」(長田氏)

 つまり、コンテンツの価格が、実質的にアプリ内の価格より安くなる可能性が高い。デジタルコンテンツはなるべく安く買いたいというユーザーには、アプリ外購入が大いに魅力的に映るだろう。

 反面、別のサイトを経由する分、決済に至るまでより多くのステップを要することになる。アプリ内のリンクをタップするだけでいいとはいえ、別の場所に移動しなくてはコンテンツを購入できないとなると、面倒と感じる人もいるだろう。さらに、飛んだ先のサイトで、クレジットカード番号の入力や本人確認のためのパスワード入力を求められるとしたら、「いちいち面倒だ」「パスワードを忘れた」という理由で「カゴ落ち」してしまうかもしれない。長田氏も「遷移画面が増えるのは仕方ないこと。外に出る以上、必ずユーザビリティは落ちる」と指摘する。

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