両立の決め手が見えた!──音楽とケータイは仲がいいのか悪いのか?(3)

音楽を聴くのと携帯を使うの。ヘッドフォンや音楽配信端末を試してはみたものの,これ! という解決法は見つからなかった。今回は,オーディオプレーヤーと携帯を合体させたあの製品を見てみる。

【国内記事】 2001年6月29日更新

 前回「PicwalkSH712m」を触って分かったこと。確かに音楽配信は期待されているコンテンツサービスだが,肝心の端末の使い勝手は全くの実験段階である。特にこの連載がテーマとしている「携帯とポータブルオーディオを生活の中で両立させる」という観点からすると,まだその試みは始まったばかりといってもいい。

 サービスがユーザーを幸せにしてくれるわけではない。やっぱり大事なのはハードウエア。今回はソニーのメモリオーディオ一体型携帯電話を取り上げてみよう。

 NTTドコモからは「SO502WM」,auからは「C404S」という2機種が発売されている。両者の基本となる設計は同じで,PDC方式のiモード端末とcdmaOne方式のEZweb端末に作り分けてある。

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auの「C404S」(左)とNTTドコモの「SO502WM」

 この2機種,実はこの連載のテーマを決めた時から注目していたのだが,取り上げるのが遅くなったのは多少先入観があったためだ。オーディオ付きの端末には端末ごと買い替えなければいけないという敷居の高さがあり,その割には音楽配信には対応していない。この点が中途半端に見え,過渡期の製品のイメージが強かったのだ。

 たいていのユーザーが1〜2年で端末を代えるとはいえ,筐体も大きく重量も重く,オーディオ部分を切り離すこともできない端末を持ち続けるのには決意がいる。それならPicwalkのように,いっそ音楽のダウンロードぐらいできたほうが嬉しい。

 だが音楽配信の実状が分かった今,ユーザーの生活を変えるのは,端末の使い勝手だということが見えてきた。先入観なしに使ってみるにはいいタイミングだということで,テストにはC404Sを取り上げてみた。

これは携帯&音楽ライフのダークホース!?

 使ってみて,すぐにその完成度の高さに驚かされた。

 まずリモコン付きヘッドホンマイクが付属し,リモコンにはオーディオも電話も必要な機能がきちんと乗っているのがいい。再生,早送りなどの操作系はもちろん,聞いている最中に電話が入った時のために発信・通話終了ボタンもあるのだ。

 オーディオを使っている人には当たり前すぎる話だが,「Picwalk SH712m」ではまだ実現していないし(6月19日の記事参照),市販のヘッドホンマイクではノイズが入ってしまう(6月5日の記事参照)。

 これを使えば,ずっとヘッドホンをしていても電話が来たら着信ボタンを押し,そのまま話をすることができる。電話の音は左右から流れてくるから聞きやすいし,オーディオは一時停止になって待機してくれるから,後で続きを聞くのも容易だ。ちなみにマイクはリモコンの一番上部に付いているので,ユーザーは電話が来たらリモコンのボタンを押し,それをそのまま握って話をするというスタイルになる。

 好みはあるかもしれないが,まったくのハンズフリーだとついつい声が大きくなるし,周りから見ると1人でしゃべりだす怪しい奴になってしまうので,リモコンユニットを持ってしゃべるほうが個人的には気が楽だ。

 メディアはソニー得意の64Mバイトのメモリースティックが付属している。音楽ソースはPCから移してもいいが,端末には光入力端子が付いており,デジタルまたはアナログで録音できる。一見,音楽配信のほうが手間がかからないような気がするが,使える機会やソースの多様さを考えると,MDの録音機などと同等の機能を持っているこちらのほうがゼッタイに便利。

 録音は本体を操作して行うことができる。コーデックはATRAC3(用語)。音質としてはMP3とほぼ同等と考えていい。シンクロ録音などMDレコーダーでおなじみの機能も備えている。使い勝手としては曲名を表示するエリアが狭くて文字数があまり見られないのだけが残念だが,ほかはメモリーオーディオとして十二分だった。

 使ってみるととってもラクチンなことがよく分かる。なにせ今までは再生中に電話がかかってくると,

  1. 再生を止める。
  2. ヘッドホンを片方はずす。
  3. 着信ボタンを押す。
  4. 受話器を耳に当てて会話する。
だったのが,
  1. 着信ボタンを押す
 だけになるのである。1の時点でリモコンを持っているので,もうそのまま会話に入れる。電話というものはいつ切れるか分からないので気が急く。そういう状況でこのアクションの簡単さは心理的な負担を相当減らしてくれる。これは実際に使ってみないと分からない快適さだ。結局,携帯とオーディオの両立のためには,この機能こそが必要不可欠な核だったのだ。

オーディオ内蔵携帯の評価は低すぎる

 それにしても,この携帯はちょっと過小評価されていると思えてきた。使ってみれば相当に便利であることが分かる。自分の先入観に照らして考えると,敬遠される理由は,

  1. 値段が高い
  2. 重量が重い
  3. MP3対応でない
 の3点に絞ることができると思う。

 1だが,本当にこれらの端末の値段は高いのだろうか。調べてみるとauのC404Sが2万3000円(kakaku.com),NTTの502WMも2万3000円だ(都内ドコモショップ店頭)。確かに一世代前の機種で,しかも人気機種でないことを考えると高い。

 だが,携帯として見ずに,携帯+オーディオ+メモリースティックと考えるとどうだろう? 現在64Mバイトマジックゲート対応メモリースティックの価格は約1万2800円で,メモリーオーディオは1万円では買えない。メモリーオーディオと携帯を別々に持ったところで,このC404Sのようなシームレスな環境は望むべくもないのだから,むしろお買い得だと言えるだろう。

 2の重量だが,これも店頭でほかの携帯と見比べられて損をしている。携帯電話にオーディオをプラスして120グラムなのに……。メモリーオーディオと一緒に持ち歩くのとほぼ同等,配線や使い勝手も考え合わせればむしろ楽だと思うのだが。

 3は,ヘビーなPCユーザーMP3で既にライブラリを作ってしまっている人には確かに厳しいかもしれない。これはライフスタイルしだいだろう。メモリースティックは高いので,何枚も差し替えるのは現実的ではない。

 C404Sにもっともなじむのは,PCでのオーディオにさほど入れ込まず,普段CDを購入している人たちだ。CDプレーヤーからC404Sにつなぎ,その都度聞きたい曲をエンコードして持ち歩けばいい。この使い方ならメモリースティックというデバイスを気にすることなく音楽を持ち歩ける。PCは全く必要ない。メディアが入っていることを意識せず,これが1つの部品だという感覚で使える人ならこれほど便利なものもないだろう。そして世の中としてはこちらのほうが多数派のはずだ。

新たな“ラジカセ”になる可能性も?

 残念ながら,C404S,502iWMともに販売には苦戦しているようだ。だがこの端末は,今後新たな複合商品が成立する可能性を示している。ユーザーは一部のカテゴリーの人たちに限られるが,生活上のストレスを解消する「ソリューション」であるのは間違いない。

 ラジカセのような大ヒットを飛ばすには,両者の機能が密接に関連すること=音楽配信が満足なサービスになることが欠かせない。しかし,その前にインタフェースが統一されているだけでも,「携帯を気にしながら外で音楽を聞く」ストレスを低減してくれるかは,ぜひ多くの人に知ってもらいたい。液晶パネルの小ささ,電池容量などの課題をはねのけ,CDプレーヤーやMDプレーヤーをライバルに据えたプロモーションを行うことでブレイクスルーを果たす後継機種の登場に期待しよう。

 次回はオーディオ側の試みを紹介しつつ,ケータイと音楽を両立させる条件をまとめてみたい。

[清瀬栄介,ITmedia]

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