あるezplus開発者の苦悩

「プログラムサイズの制限が50Kバイトと一番大きいezplusなら,アプリをのびのび開発できると思ったのがそもそもの間違いだった……」

【国内記事】 2001年9月7日更新

 iアプリ,Javaアプリ,ezplus。これらはそれぞれNTTドコモ,J-フォン,KDDIの携帯電話に搭載されるJavaアプリケーションの名称である。もちろん名前だけではなくて,Javaの仕様にもそれぞれ違いがある(4月25日の特集参照)。

 開発者にとって気になるのは,どれが一番開発しやすいか,そしてどれが一番よいアプリを開発できるのかという点だろう。そう考えたときぱっと目に付くのは,プログラムサイズの違い。ドコモのiアプリが10Kバイトなのに対し,Javaアプリは30Kバイト,ezplusは50Kバイトだ。一見すると容量が大きいほうがプログラムを無理して切り詰める必要がく,また内容も充実した“リッチな”プログラムを開発できそうではある。

 しかしことはそう簡単ではない。実はこの落とし穴にはまった某ezplus開発チームがあったのである。今日はそんな事例を紹介しよう。

こんなアプリ,売れるに決まっている!?

 その開発チームはあるゲームアプリの企画段階で,以下のような開発コンセプトを考えた。

  1. コミュニケーションとエンターテイメントを両立させたい
  2. 女性向け
  3. 最低でも2カ月遊べるもの

 携帯電話ならではのコミュニケーション機能をつけて,しかも女性などライトユーザー向けに。またゲーム業界の常として,パッと終わるものでなく長く遊んでもらえるゲームにしたいとの考えだ。

 このコンセプトを実現する方法として,企画チームはキャラクター育成ゲームというものを考えた。これならかわいいし,女性にもウケる。まず2の条件は満たしているだろう。

 さらにユーザー間でキャラクターの赤ちゃんを交換し,「自分が今育てているキャラの親は誰か知らない人の育てたキャラ」という関係が成り立つシステムを考案した。自分のキャラに愛着がわくほど,その親やおじいちゃんを知りたくなる。必然的にほかのユーザーと,相互にやりとりが生まれるだろうという読みだ。これで1もクリア。ひいては子々孫々キャラ育ては続くため,3の長期にわたるユーザー獲得もOKだ。

 このゲームは,企画として問題はないように思える。実際,その会社の企画チームは,意気軒昂。「こんなアプリが売れないはずはない」と,鼻息も荒く開発にとりかかった。

 だがここに彼らが1つ見落とした,そして見落としてはならない点があったのだ。

ezplusはHTTP通信ができない!!

 彼らが見落としていた点というのは「ezplusではHTTP通信ができない」ということ。つまりアプリ起動中に足りないデータをネットワークから取ってくることができない(ちなみに携帯電話同士で通信することは可能)ということだ。

 これは,考えようによっては“全アプリがスタンドアロン状態”ということで,一度アプリを端末に落としてしまえば通信圏外でも自由にアプリを利用できるという利点はある。しかし広く外のネットワークにつながらないということは,さまざまな問題をもたらすのだ。

 1つは,プログラムをかなりきつめに絞り込まなければならなくなったということだ。これがiアプリやJ-フォンのJavaアプリなら,随時ネットワークに接続して,必要なデータをその都度取得させる仕組みにしておけばいい。当然,最低限のデータだけ端末にインストールし,後のデータはネットワーク上に置いておくということになる。

 しかしezplusでは50Kバイトにすべてを詰め込み,その中だけで完結してしまわなければいけないので,どうしてもゲーム全体としてのプログラムサイズは制限される。なんと“50K”のほうが“10K”より,ゲームの総合的な容量が小さかったというわけだ。実際開発サイドでは容量を食うキャラクターの画像などを削減したい意向が強く,せっかくのキャラクターゲームだというのに,かわいい画像が大幅に切り詰められることになってしまった。これでは女性ユーザーの心をくすぐることは難しい。

 そしてもう1点,忘れてはならないのがこのゲームが「キャラクターの交換」を想定していた点だ。Cメールを利用して端末同士の通信は可能だとはいえ,ネットワークにつながらず,一度端末内にインストールしたらそれっきりのゲームが,ほかの端末とコミュニケーションをとることはなかなか難しい。これによって一気に開発は困難を極め,同時にユーザーに2カ月にわたって遊んでもらうための仕組みも,その存在自体危うくなってしまったのだ。

第2フェーズ待ち?

 だがここで1つ救いがあった。KDDIはezplusについて第2フェーズへの移行(6月25日の記事参照)を明言しており,そこではHTTP通信がサポートされるというのだ。

 これによって広がりのあるコミュニケーションが実現され,プログラムの縛りもある程度ゆるくなることが予想される。企画者たちは胸をなでおろすとともに,ezplusの第2フェーズへの移行を現在心待ちにしているのだという。

 実はこの話は,都内で行われた某発表会で語られたもの。本来完成したゲームを説明するはずだったが開発が間に合わず,このような現場のこぼれ話を聞くことになった。

 Java搭載でより進化しつつある携帯電話ゲーム。しかしその開発にあたっては,各キャリアの違いをよく知っている必要がある。プログラムサイズも小さく,簡単に作れてしまうのではないかとも思えるJavaアプリゲームだが,実はさまざまな苦労がつきまとうということを示す好例といえるだろう。

[杉浦正武,ITmedia]

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