有機ELかTFTか?──携帯ディスプレイの未来

現状では低温ポリシリコンTFT?

 このような有機ELの現状を見ていくと,携帯など屋外で使用する可能性の高い機器に関しては,現在,低温ポリシリコンTFT液晶が現実的には最有力候補になりそうだ。

 低温ポリシリコンTFTは,TFT素子の材料として従来のアモルファスシリコンの代わりにポリシリコンを使うもの。高価な石英基板を使う高温ポリシリコンに比べ,ガラス基板が利用できる低温で薄膜トランジスタを形成することから低温ポリシリコンと呼ばれる。液晶周辺回路をガラス基板上に一体形成できるため,高精細化にも向く。

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CEATECで東芝が展示した,低温ポリシリコンTFT液晶(左)と従来のアモルファスTFT液晶(右)の構造比較。ガラス上に回路を内蔵できる低温ポリシリコンでは,接続点数を大幅に減らすことが可能。従来は液晶の画素ひとつひとつに外部から回路を接続する必要があったため,小さなサイズの液晶パネルを高精細化しようとすると,接点が足りなくなることが問題だったという。低温ポリシリコンTFTではその問題を解決した。写真の例でいえば,既に右のアモルファスTFT液晶は接点がぎっしりでこれ以上の高精細化が難しいが,左の低温ポリシリコン液晶はまだ余裕がある(拡大画像

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同じく東芝が展示した低温ポリシリコンTFT液晶の位置付け。120dpiを超える画素密度では低温ポリシリコンが要求されてくる(拡大画像

 反射にするか半透過を選択するかは屋内での美しさと屋外での見やすさのバランスということになるだろう。半透過型にしても,反射率は液晶によって相当異なる。「SO503i」に搭載されたTFT液晶のようにほとんど反射しないものもあれば(3月9日の記事参照),シャープの「J-SH07」のTFT液晶のように反射率が高いものもある(2月27日の記事参照)。

 屋外での見やすさという点では,今のところ反射型に勝るものはないだろう。“反射型は画質が悪い”とはもはや一概にいえない。富士通製端末「F503iS」に搭載された東芝製の低温ポリシリコンTFT反射型液晶は,相当美しい(8月14日の記事参照)。東芝によると,半透過型はバックライトが厚いため薄型化には限界があるが,反射型の液晶は薄くできるという。

 有機ELが携帯向けディスプレイとして期待されているのは確かだ。しかし,液晶に比べて有機ELがすべての点で勝っているかというとそんなことはない。携帯電話向けの低温ポリシリコンTFT液晶は,やっと市場投入されてきたばかり。今後しばらくは主役を務めることになりそうだ。

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[斎藤健二,ITmedia]

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