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つくりかた
 [第30回]

まるでSF! 未来のモバイルはこうなる!? ウェアラブルインターネット機器

“持ち運びできるパソコン”といっても,ノートPCやPDAとは全然違う斬新なスタイルのモバイルです。それを使用している姿はまるでSF世界の住人のような……?? 今回は日立製作所のウェアラブルインターネット機器「WIA-100NB」についてのお話です。

【国内記事】 2002年1月31日更新

 こんにちは,「もばいるのつくりかた」の時間です!

 持ち運びできるパソコン,といって普通思い浮かべるのはノートパソコン。似たような機能を持っていて,もっと小さいものになると,PDAや携帯電話がありますね。

 でも今回登場するのは,これらのどんなものとも全然違う,斬新なスタイルのモバイルです。それを使用している姿はまるでSF世界の住人のような……??

 ということで,やって参りましたここ日立製作所! 今回お話しして頂くのは,Net-PDAベンチャーカンパニー 商品企画部 主任技師の海老名修さんです。

 日立製作所は,2月28日よりウェアラブル・インターネット・アプライアンス「WIA-100NB」を国内向けに発売することを発表しました(1月15日の記事参照)。ウェアラブル──つまり「身につける」インターネット機器ということですね。これがかなり独特な形をしていて面白いのですが,どうしてこのような製品が作られることになったのでしょう?

 「そもそも,ウェアラブル・インターネット・アプライアンスの開発は4,5年前に始まりました。その頃,かなりの勢いで普及してきたパソコンが,今後はどのように使われていくのか,という検討をしていたんです」

 そこで,では現在はどんな使い道で使われているのだろうか,という調査を行ってみたところ,オフィスでは表計算やデータベースなどさまざまな形で活用されています。ですが,一般の家庭などでの利用は,メールとブラウザが主のようだ,ということが分かったのだそうです。

 「じゃあ,パソコンの機能の中で,何が必要で何が必要でないのか。携帯電話の普及で,メール機能はそれで充分補えるようになってきていました。じゃあ,あとはブラウザですよね」

 ブラウザに特化したモバイルを作るとしたらどうなるでしょう? たとえば,ネットサーフィンをしている時に私たちがする動作といえば,マウスクリックがほとんどです。キーボードで入力したりする機会はあまり多くありません。では,キーボードを取ってしまったら? というのが発想のきっかけだったそうです。

 「ノートパソコンの大きさを決めているのは,キーボードと画面のサイズなんですよね。で,キーボードをなくしてしまったら,あとは画面です。その頃,眼鏡のように装着する形で見るディスプレイというのがいくつか出てきていたのですが,テレビ解像度でなく,パソコン解像度のものは,その当時で30万円くらいしていました。それじゃとても手が出ませんが,技術の革新でもっと安価なものが出てきそうな予感があったんですね。これで画面の問題も解決です」

 ということで,必要なものだけを残して,私たちが普段パソコンを利用している状況に最適化したら……こんな形になりました!


 ちっちゃいです! 軽いです!

 孫悟空の輪のようなものがヘッド・マウント・ディスプレイで重量は約80グラム。頭に固定し,片目で画面を覗く形で使用します。

 マウスポインタの青く光っている部分を親指でこするように動かすと,画面上のポインティングデバイスがすーっと動きます。クリックはそのまま青い部分をぽちっと押すだけ。

 そして四角いのが本体になりますが,これもかなり小さいです。重量は約310グラムとのこと。

 「これでもちょっと大きくなってしまったんですけれどね。本体の大きさに影響しているのは,やはりバッテリーです。バッテリーを内蔵してしまうのでなくて,取り外せる形にしたので,少し大きくなってしまいました。でもその方が電池切れの時にバッテリーの交換ができたりして便利ですからね。去年の1月にプロトタイプを貸し出して使って頂いて,その反響や結果などを見ながら調整して,現在の形になりました」

 では,さっそく私も験させてもらおうかなっと……えーと??

 「あ,おでこのあたりに輪っかがくるように付けるんです。そう,おでこで支える感じです。四角いディスプレイは左右に動かせますので,片目の前に合うように調節してください」

 ふむふむ,こうかな?……あう,輪っかがおでこから落ちちゃいそうですー。

 「あー,日本人の頭の形というのは変わってきているらしいんですよね。3000人の頭の形の統計を取って,そのデータに基づいて作られているんですが……特に女性は,ちょっと合わせづらい方もいるみたいです」

 くすん。そこで,頭の後ろで留めるストラップをつけてもらって装着してみました。これなら大丈夫のようです。

 次はディスプレイを覗いて,っと。……うーん,画面が見える,けれど……ぼやけてるかなー。

 「ディスプレイの角度を調節してみてください。きちんと見える点がありますので」

 海老名さんに手伝っていただいて調節すると,おおっ! 見えてきました! 右目の前方に画面が出現した感じです。ウィンドウズのデスクトップが見えます。


正しく装着の図。ハンズフリーでほかの作業をしながらインターネットに接続できます。SFガジェットみたいですね

 「今度は見えましたか?……という風に,最初はちょっと調節に戸惑うんですよね。まったく説明なしでは,なかなかちゃんと装着するのが難しいもので……。それが『業務用』と言っている理由なんです」

 もちろん業務用の用途に便利だというのもありますが,導入の際に少々説明を加えないとスムーズに使用するのが難しいため,現在は「業務用」としているのだそうです。

 「この製品のキーワードは『割り切り』です。キーボードなども割り切ってなくして,小さく・安く。この最初の調節も,本当は簡単にぱっと装着できるようにもなるのですけれど,そうすると大きくて重いものになってしまいます。なので,調節は少し面倒でもそこは割り切って,小さくて軽いものを作る方を選びました」

 なるほど。確かに,いろなものを削ぎ落としたようなイメージですね。

 「あれもこれもつけて,パソコンと同じことが全部できるようなものを100万円で! というのとはちょっと指向が違うんですよ。ソフトも特殊なものを使うのではなくて,基本的にWeb形式で何でも見る感じです」

 OSはWindows CEを使用し,また,パソコンのものに近いInternet Explorerが入っているとのこと。なので,使用した感覚も普通のパソコンとほとんど変わりません。

 「たとえば業務用に何かのデータを見るシステムがほしいなら,Web形式でボタンをクリックするだけで必要なデータを表示させる仕組みを作ればいいわけです。それをインターネットを介して見るだけ。ちょっとした入力はソフトウェアキーボードで行うこともできます」

 通信はコンパクトフラッシュのスロットからPHSデータ通信カード,または無線LANカードを利用することができるそうです。ホットスポットでも通信が楽しめるわけで……。うーん,ハンズフリーだし,これを装着して26回のブロードバンドカレーを楽しむというのはどうでしょう??(お客さんが皆これをつけてカレーを食べていたら,未来的でカッコいいだろうなあ。誰かやってくれないかなー)

 「そのほかに,ノートパソコンからコンパクトフラッシュメモリに見たいドキュメントを入れて,そのままWIA-100NBに挿して閲覧することもできます。お互い親和性がありますので,大きいデータもフロッピー感覚でやり取りして見ることができますよ。

 また,キーボードはありませんが,USBポート経由で接続して使うことはできますし,そのほかの周辺機器も使用可能です。ただ,その場合ドライバーソフトが別途必要になりますね。

 あと,ポケットワードが入っていますので,簡単なワードの書類なども見られます」

 ふむふむ。結構色々なことができてしまうんですね。使い方によっては,ほとんどパソコンと変わらないことができそうです。

業務用ではこんな使い道も

 このようにとてもユニークな製品なのですが,現在はどんな使い道が実際に考えられているのでしょう?

 「そうですね,日立の社内では,これのプロトタイプの方をもう既に使い始めています。たとえば,大きな機械の検査をする時に,その機械の前にいる人が制御室の中にいる人とトランシーバーでやりとりをしながら検査をしていたのを,WIAを使って,制御コンピュータの画面を機械の前で直接見られるようにしています。声だけのやり取りで二人が共同作業をするより,一人で早く確実に作業できるようになりました。温度分布や振動の様子などの視覚情報も,制御室の中だけでなく,対象の機械の前で見ることができます。」

 そのほかにも,ユーザーからは超高層ビルの建築現場で使えるのでは,という意見なども出ているとのこと。現場監督さんがビルの中をあちこちまわって,組長さんの話を聞いて「ここはどうなっている,あそこはどうなっている」と話し合って,また1階の事務所までトコトコと戻ってPCで調べて,またトコトコトコと上の階に上がっていて指示をする……なんてやっていたら大変です。これだけで大分時間のロスになります。そこでWIAをつけてまわれば,その場で必要なデータがチェックできて,さらに資材の発注もできてしまったりします。

 また,原子力関係などの施設では,その部屋に持ちこんだものは廃棄処分にしなくてはならない,というような制約があることがあります。たとえば,メンテナンスなどでその部屋に紙の大量のマニュアル持っていって,その度にそれを全部捨てていたら無駄が大きいですよね。そんな場合に,その部屋にWIAを1つ置いておけば,紙でデータを持ち込まずに済みますし,インターネットを介してつねに新しいデータを見ることができます。

 同じように,半導体のクリーンルームに置いておいて,余計な物の出入りを少なくすることも可能ですね。

 「特殊な場所でのデータの閲覧,さらにそれをハンズフリーでできる,というのがこの製品の大きな利点です。そう,作業し『ながら』というのが,もうひとつのキーワードなんですよ」

 ……と,2つ目のキーワードが出てきたところで,字数がつきてしまいましたので今回はここまで。次回はその「ながら」のための工夫や,設計のヒミツに迫ります! 業務用だけでなく,コンシューマ向けへの展開も期待できそうな予感を感じつつ,次回はそのあたりのことも話していただく予定です。

 それではまた来週〜!

[絵本 智,ITmedia]

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