News 2000年7月27日 11:05 PM 更新

東芝に聞いたBluetoothの現状と未来

 東芝は7月27日,報道関係者向けにBluetoothの現状と将来の展望を語った。会場には,先日発表されたPCカード型のBluetoothモジュールやモデムステーション(7月25日の記事を参照)に加え,国内では初披露となる「Bluetooth内蔵DynaBook」や液晶プロジェクターも展示。さらに,東芝社内のBluetooth担当者が,同社の方針を説明した。

 東芝は,7月15日に世界初となるBluetooth対応製品を発表したが,東芝デジタルメディアネットワーク社Bluetooth事業推進室の日比健二氏によると,今年第4四半期以降,Bluetoothの対応製品のバリエーションが一気に増えるという。具体的には,同社も製品化を予定しているBluetooth内蔵型のノートPC(下の写真を参照)のほか,携帯電話,ハンドヘルドPC,ケーブルモデムやADSLのスプリッタと一体化したアクセスポイントなどだ。また,PCの周辺機器でもデジタルカメラやプリンタといった製品が予定されているという。ただし,周辺機器に関しては,それぞれのプロファイルを決定する作業が残されており,「データの標準化を図り,2000年末までにはスペックを決定したい。製品化は来年以降になるだろう」(日比氏)とした。

 さらに,東芝はBluetooth上で動画を扱うため,MPEG4による動画伝送を提案しており,現在Bluetooth SIG(Special Interest Group)のAV Working Groupで検討中だ。これは,Bluetoothの次期バージョン(2.0)に向けたもので,実現すればワイヤレスの監視カメラ,携帯電話同士のビデオ会議といった用途に利用できる。スケジュールでは,2000年第3四半期中にプロファイルが完成し,最初の製品が2001年第1四半期にも登場することになっている。なお,Bluetooth2.0では,1つのマスターがほかの「Piconet」(Bluetoothネットワークの単位)のスレーブになる「Scatternet」なども盛り込まれ,より複雑なアプリケーションも動作できるようになる。

Bluetoothの将来と当面の課題

 同社の予測によると,2000年中に全世界で390万台のモバイル端末(携帯電話,PDAなど)がBluetoothを搭載するほか,ノートPCやデスクトップPCでも,それぞれ70万台,40万台規模の市場ができるという。これが,2005年には,モバイル端末で9億3300万台,PCもノート/デスクトップが各6000万台にまで膨れあがる見通しだ。

 さらに,将来的にはその用途がさらに拡大し,PCや関連の周辺機器といった枠を超えて,ユーザーの利便性を向上させる。例えば,Bluetooth搭載の携帯電話が,電子財布や新しい情報サービスの端末に変身するという。「電子財布なら,盗難や紛失時の対策が容易なほか,駅の改札なども非接触で通ることができる。また,携帯電話で情報コンビニから音楽をダウンロードしたり,電車内の吊り広告を見て気になった情報をその場でダウンロードしたり,といったことも可能になるだろう」(日比氏)。

 もっとも,その前に各通信仕様の策定やデバイスのコストダウンといったステップが残されている。日比氏によれば,現在東芝で生産しているBluetoothチップは3チップ構成だが,製造コスト削減と需要に見合う生産量を確保するため,これを2チップ化,さらには1チップ化する必要があるという。また,同社が計画しているSDカード型のBluetoothモジュールを製造するには,「3チップでは苦しい」(同社)のが現実。各社がBluetoothという新しい市場でシェアを獲得しようと躍起になっている現状(6月13日の記事を参照)で,仮に他社が先行して低コストなチップを出荷し始めた場合は,そちらを採用することもあり得るだろう。今回,具体的な製造ロードマップは示せなかった東芝だが,「年内にはよりシュリンクさせたチップの生産を始めたい」という胸の内を明らかにした。

8月に発売されるPCカードとモデムベースステーションの実演。最大1MbpsでWebブラウズが可能だ

新製品にバンドルされる会議ソフト「SPANworks 2000」の実演デモ。中央のPCがマスターとなり,左右のPCにプレゼン資料を送信中だ。写真では,中央のPCと左のPCがリアルタイムチャットを行っている

日本初披露のBluetoothデータプロジェクター。PCの画面をワイヤレスで映し出す

背面にPCカードスロットがあり,ここにBluetoothカードが挿入されている

Bluetoothを内蔵したノートPCのプロトタイプ。TECRA 8100がベースだ。これは,今年6月に初めてTELECから技術基準適合証明を受けた「日本初のBluetooth製品」でもある。東芝では,2000年末にはBluetooth内蔵ノートを製品化する予定だ

Bluetooth内蔵ノートの上面。白い部分がアンテナになっている

関連記事
Bluetoothがあればこんなに便利
いよいよ離陸するBluetooth,東芝が製品第1弾を発表
加熱するBluetooth市場――早期シェア確保でしのぎを削る各社

[芹澤隆徳,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.