News 2000年10月3日 11:59 PM 更新

家電各社が描く次世代ビデオレコーダーの姿

CEATEC JAPANでは,DVDメディアやHDDを使ったレコーダーが数多く出展されている。そのコンセプトから,各社の戦略が見えてきた。

 昨年のエレクトロニクスショーに続き,CEATEC JAPANでもDVDメディアやHDDを使ったビデオレコーダーが多く出展されている。ただし,昨年と異なるのは,そのいずれもが製品に近い形で展示されていること。また,HDDとDVDメディア,あるいはHDDとテープメディアを組み合わせたハイブリッド録画機の登場も印象的だ。その組み合わせや拡張性の有無から,各メーカーの次世代レコーダーに対する思想や戦略が見えてきた。

 DVD-RW規格をひっさげ,1999年11月に「DVR-1000」を投入したパイオニアは,第2世代となるDVD-RWレコーダーを参考出展している。その特徴は主に2つ。1つは,DVD-Rメディアへの対応とビデオモード録画の搭載だ。これにより,録画済みディスクを従来のDVDプレーヤーでも再生できるようになった。「ビデオモード録画なら,DVD-Videoディスクと同じものができる(著作権信号を検出した場合は録画不可)。出荷のタイミングは,規格化の進み具合によるだろう」(パイオニア)。もう1つは,DV端子(IEEE 1394)の搭載。DVカムコーダーからのダビングだけでなく,逆にDVD-RWからDVテープへのダビングもできる。

 パイオニアは,DVD-RWの泣き所である互換性の問題を解消しようとしている。ライバルのDVD-RAMレコーダーも録画済みディスクを既存のDVD-Videoプレーヤーで再生できないのは同じだが,DVD-RAMにはPCとの互換性という大きなメリットがあった。これに対してパイオニアは,まずビデオモード録画で既存プレーヤーでの再生に対応,さらにPC向けのDVD-RWドライブを提供し,PCとの親和性を高めようとしている。

 やはり参考出展されていた「4.7GバイトDVD-R/RWライター」がそれだ。内蔵型と外付け型を用意しており,既にAplixの「PacketMan」やイージーシステムズジャパンが販売する「CD-DVD Starter」,ソニックソリューションズの「DVDit!」といったライティングソフトが対応することが決まっているという。「年度内には,DVDフォーラムでの規格化も終わるはずだ」(パイオニア)。

 東芝は,DVD-RAMと30GバイトのHDDを組み合わせたレコーダーを展示している。「用途に合わせて使い分け,相互のダビングや編集もできる」という操作性がウリ。日本ビクターが発表したS-VHS&HDDハイブリッドレコーダー「HM-HDS1」(9月28日の記事を参照)と同様のアプローチだ。出荷時期や価格は未定。なお,BSデジタルチューナーやデジタルインタフェースは「コストと(メディアの)容量の問題で搭載していない」(同社)。

 逆にシャープでは,HDDのみを搭載する「ハードディスク メディアレシーバー」を出展した。こちらは,BSデジタルハイビジョンの録画にフォーカスしたもの。フルスペックのBSデジタルチューナーを内蔵し,30GバイトのHDDにBSデジタル放送のストリームをそのまま2.5時間まで録画できる。もちろん,MPEG2エンコーダーも搭載しており,アナログ放送の録画にも対応だ。ただし,出力はD4端子などのアナログインタフェースに限っている。「著作権問題が完全にクリアされていないため,今回は(IEEE 1394の採用を)見送った」(シャープ)。ハードディスク メディアレシーバーの価格は未定。出荷時期は「12月のBSデジタル本放送に間に合うタイミング」(同社)という。

 松下電器産業が参考出展したHDDレコーダーは,拡張性という点でメリットが大きい。同社は,バッファメモリを使ってバッドセクタによる再生ミスをなくす「AV HDD」(1999年12月24日の記事を参照)を米Quantumと共同開発したが,今回出展されたHDDレコーダーは,このAV HDDをIEEE 1394ケーブルで増設することができる。本体にはBSデジタルチューナー接続用と増設HDD用の2つのi.LINK端子を装備。さらに,著作権保護技術として日立製作所や米Intel,ソニー,東芝と共同提案中の「IEEE1394DTCP」(Digital Transmission Content Protection)を採用した。

 松下のHDDレコーダーは,来春発売予定。価格は「20万円から25万円程度」(同社)になる予定だ。

 ソニーは,既に発売中のHDDレコーダー「Clip-On」(6月22日の記事を参照)を出展。そのほか,青色レーザーを使った書き換え式の12センチ光ディスク規格「DVR-Blue」のデモを行っている。転送レートは35Mbpsを確保し,BSデジタルハイビジョンのストリームをそのままディスクに録画することが可能だ。ただし,今回のデモは「まだ学会で披露するレベルのデモ機。製品化の予定は今のところない」(同社)という。なお,DVR-Blueは,既存のDVDメディアとの互換性はない。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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